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転生魔女と天才聖女 ~居場所をなくした私たち二人が、最強の相棒となって幸せを見つけにいく物語  作者: 汐柳伊織


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36.残念な冒険者さん――「ていうか、何しにきたの?」

 翌朝六時頃。


 昨日の野営地のときもそうだったけれど、リアは今日もすんなり起きてくれた。


 神殿ではあれだけいつもお寝坊さんだったのに、なんでだろう?


 もしかして、次の日が楽しみすぎて、早く起きちゃう系?


 そんなことを思いながらも初めての冒険に向けて、しっかり準備を終えたわたしたちは、宿のおっちゃんが用意してくれたハムエッグサンドと野菜スープを食べ終えてから、外に出た。


「はい、これお昼ご飯ね。がんばってくるんだよ」


「はい。何から何まで本当にありがとうございます」


「ありがと~」


 わたしとリアは、ぺこりと頭を下げてお礼を言った。


 いろいろ迷ったあげく、一応おばちゃんにはギルドのお仕事をするとだけ伝えておいた。


 本当は心配させたくなかったから言いたくなかったのだけれど、こんなにもよくしてくれているこの人たちにこれ以上、嘘はつきたくないかなって、そう思ったから。


 だから今日の朝、魔術師協会や冒険者ギルドにも登録したことを話しておいた。


 結構驚かれたし、物凄く心配されたけれど、それでも最後には納得してくれて笑顔で送り出してくれた。


 本当にいい人たち。


「それじゃ行こっか、リア」


「うん」


 忘れ物がないかどうかもう一度、リュックや杖を確認してから北門に向かう。


 ルアン魔鉱石と呼ばれる石が取れるのは、村の西にある森の中だという話だった。


 そこに行くには北と南しかない村の門の、北側から行くのが手っ取り早いとのこと。


 そのため、わたしたちは北に向かって歩いていたのだけれど、ちょうど冒険者ギルドの横を通りすぎた頃だった。


「おいっ、お前らちょっと待ったぁっ」


 突然、左手の大樹の向こう側から、男の人の叫び声が聞こえてきた。


 わたしとリアはびっくりして立ち止まると、思わず顔を見合わせしまった。


 そうこうするうちに、手を振りながらこちらへと近寄ってきた、ひょろっとした感じの男の人がすぐ側で立ち止まった。


「あ~……あっぶね、危うく間に合わなくなるところだったぜ」


 そう言って、ぜぇはぁ荒い息を整えている、見た目ごろつきみたいな人。


 なんか、どこかで見たことがあるような?


 そういえば昨日の夕方、魔術師協会に行こうとしていたときに、何人かでたむろしていた人いたけれど、こっち見てた人に似ている。


 よく見ると、茶色の革鎧みたいなのを着ていて、腰に巻いた革ベルトには、衛兵がよく使っているような長い剣が()げられている。


 いわゆる冒険者と呼ばれている人たちと特徴がよく似ている。


 短髪黒髪で目つきも鋭く、いかにもその筋の危ない人という印象を受けた。


「あ……」


 なんか嫌な気配がしたから少し警戒していたのだけれど、そんなとき、リアが声を漏らした。


「あー……この人、ヴィーに吹っ飛ばされた人」


「へ?」


 なんだかぽかんとしながら呟いたリアが、徐々にいたずらっぽい笑みを浮かべ始める。


 それを見て、わたしもようやく思い出した。


「あ~~! そうだったっ。この人、ザルツーク出てすぐのところで襲ってきた変態!」


「ぅおぉ~~いっ。誰が変態だ、誰がっ」


「だってそうじゃないっ。街道歩いていたら、いきなり襲いかかってきたし!」


「あれは襲いかかったんじゃねぇっ。からかおうとして近寄っただけじゃねぇかっ」


「からかう? 嘘言わないでください。あのとき、ヒャッハ~とか言いながら、いやらしい顔して近寄ってきたじゃありませんか!」


「誰がいやらしいだっ。お前らみたいな、ちんちくりんにそんな気起こすかよ! ――ていうか、そもそもひゃっはーとか言うかよっ。そこまで頭悪くねぇぞ!」


 顔を真っ赤にしながら少し苛立ったように弁明してくる変な人。


 わたしは万が一に備えて、手に持っていた杖を身構えた。


 人に向けちゃいけませんって言われたし、わたしの魔術は威力がおかしいみたいだから攻撃魔術は使わないけれど、それでもこれで殴ったらきっと、痛いはず――て、そういえば、地面からつる生やして相手をがんじがらめにする土魔法があったっけ。


 呪文覚えてないけど。


 そんなことを考えながら、相手の出方を窺っていると、


「お、おいっ。だからちょっと待てって。誤解なんだってば。あれは単にギルドの任務中に嬢ちゃんたち見かけたから、少し驚かせてやろうと思っただけじゃねぇか。ただの冗談だったんだって。もし気分悪くしたなら謝るよ。このとお~り。ホント、すまなかった!」


 そう言って頭を下げてきたけれど……嘘くさい。


 まったく信用できない。


 絶対に何か裏があるに決まっている。


 わたしたちが信用したところを捕まえて、どこかの変な貴族に売り飛ばすに違いない。


 だってこの人、クロニャンたちのこと見てるもの。


 お金になると考えていてもおかしくはない。


 まったく相手にせず睨みながら、脳裏に呪文を思い浮かべていたわたしと、思い出し笑いしてにんまりしていたリアを見て何を思ったのか、


「え……?」


 いきなり懐からお財布を取り出して、中身も確認せずに、そのままわたしたちに差し出してきた。


「頼む! どうかこのとおりだっ。有り金全部やる。だから俺を嬢ちゃんたちの冒険に連れてってくれっ」


「……は?」


 わたしはこのお兄さんが何を言っているのかまったく理解できず、リアとふたりして顔を見合わせてしまった。






 この村の人たちは結構早い時間から活動しているみたいで、すでに大勢の人たちが家から出て、仕事を始めている。


 そんな中で起こった珍事。


 わたしたちだけでなく、遠くから様子を窺っていた村人や旅人まで、みんな怪訝な色を浮かべてこちらを見ていた。


「あの、あなたの言っている意味がよく理解できないのですけれど」


 胡乱(うろん)げに様子を窺っていると、お兄さんが焦ったように苦笑する。


「い、いやまぁ、そりゃそうだよな。だけどよ、少し小耳に挟んだんだよ。嬢ちゃんたちがあの、誰もやりたがらない採集の依頼を引き受けたってな」


 ひたすら引きつった笑みを浮かべている怪しすぎる男の人を、わたしは油断なく目を細めながら見つめて、「で?」と、先を促す。


 わたしが聞く気になったと思ったのだろう。


 少し顔色が元に戻った。


「そ、それでさ。実は嬢ちゃんたちが請けた仕事の場所がちょうど俺の仕事場とも重なっててさ。だけど知ってるかどうかわからんが、あそこはそんじょそこらの冒険者じゃ、まったく手も足も出ない、かなり凶悪な魔物がゴロゴロしてる魔の巣窟なんだよ。だからあんたたちの腕を見込んで頼むっ。なんとか同行させちゃくれないか?」


 なんだか最初に感じたあくどい印象とは打って変わって、妙に切羽詰まった顔をしながら拝み倒されてしまった、手にお財布持ったまま。


 その様子からすると、嘘は言っていないような気もするのだけれど、つい先日あんなことがあったばかりだから、いまいち信用できないのよね。


 確かにイセリアさんもかなり危ない森って言ってたから、その点に関しては信じてあげてもいいし、協力し合うのはいいことなのかもしれない。だけれど、


「お兄さん、恥ずかしくないんですか?」


「へ……?」


「だって、わたしたち、吹いたら飛んでいっちゃうくらい、か弱くて小さな女の子ですよ? それなのに、大の大人が助けを求めてくるだなんて」


 この前の仕返しとばかりにじと~っと軽蔑の眼差しを向けていると、


「お前らのどこがか弱いんだよっ。メチャクチャ凶暴な使い魔連れてるじゃねぇか! あんときマジ死ぬかと思ったんだからなっ」


「それは自業自得というものではありませんか?」


 冗談だったとか言っているけれど、勝手に襲ってきたのは事実だしね。


 なおも抗議してくるお兄さんに言い返すと、酷く憤慨したような、それでいて悔しそうな表情を浮かべたものの。


「と、とにかく、このとおりだっ。人助けだと思って、俺も連れていってくれっ。嬢ちゃんたちだったらあんな森、余裕で切り抜けられるはずだ。そうすりゃ俺もギルドの昇格試験クリアできるんだよっ」


「ん? 昇格試験? お兄さん、試験のために森に行きたかったんですか?」


「あ、ああ、そうだ。ランク上げるためにはどうしても試験を受けなきゃいけないからな。俺の場合は現在のアイアン一等級からシルバー三等級にランクアップさせるための試験だが、その内容が、あの森での魔物討伐なんだよ」


「……なるほど」


 そういえば、そんな制度もあるって言ってたっけ。


 一番上のレジェンドと、一番下のカッパーは等級ないみたいだけれど。


 他のプラチナとかゴールドとか、シルバー、アイアンにはそれぞれ等級が三つあって、一定期間ごとに出される課題をクリアしないと、上に行けないらしい。


 この人、それに挑もうとしているのか。


「ふ~ん」


 そっか。試験か。大変そう。


 こういうのも、一期一会の醍醐味かもしれないし、手伝ってあげた方がいいのかな?


 出会い方は最悪だったけれど、なんか、思ってたより悪人ぽくなさそうだし――まぁ、ちょっと粗野で、あまり同情できそうにはない人だけど。


 でも……う~ん、どうしようかな。


 わたしは迷った末に、リアと相談しようと口を開きかけたのだけれど――そんなときだった。


「ガーランドっ、あんたまたずるしようとしてるでしょ!?」


 突然けたたましい金切り声が辺りに響き渡った。


「げっ、イセリア……!」


 お兄さんが愕然とそちらを振り向く。


 頭から湯気が出そうなくらい、物凄い剣幕でどしどし近寄ってきたのは――冒険者ギルドの扉を蹴り飛ばす勢いで現れたイセリアさんだった。


「おらっ、あんたはこっちきなっ。二度とアネットたちに近づくんじゃないよ!?」


「なんでだよっ――て、いててててっ……耳を引っ張るなっ――てか、よせ、待ってくれっ。話せばわかる! 見逃してくれっ」


「だまらっしゃいっ。よりによって駆け出しのアネットたちに寄生するとか。あんた仮にもアイアン一等級だろうがっ。あの討伐試験はあんたひとりでやらなきゃダメなんだよ!」


 逃げようとしたお兄さん――ガーランドさんの頭に手刀を叩き込んだあと、耳をつかんでギルドへと引きずり込んでいってしまった。


 そしてバタンと扉が閉まり、再び静寂が戻ってくる。


 まさしくあっという間の出来事だった。


「な、なんだったのかしら……今の……」


 ひとり呆気にとられていると。


「かっこいい。リアもあれやりたい――ふんっ」


 そう言って、例によってイセリアさんの真似をして、右手を振り下ろすリアだった。


本エピソードをもちまして「エーシェン村編(新天地でのひととき)」が終わり、次話以降、「初めてのお仕事編」に突入していきます。

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