22.涙を拭いて ~最後に特大の花火を打ち上げよう~
――しばらくして。
だいぶ気持ちが落ち着いてきた頃、わたしたちは涙を拭いて、誰からともなく笑い合った。
「えへ……なんだか恥ずかしい。今は泣いている場合じゃないのに」
ジョアンナもリアも、みんな目の周りとかが赤くなっている。
きっと、わたしも相当酷いことになっているんだろうな。
ホント、こっぱずかしい。
「そうですね。アネットの言うとおりです。気をしっかり持って前に進んでいかなければ、あっという間に理不尽に押し潰されてしまいますから」
さすがジョアンナ。
今までわたしたちの先生みたいな立場だっただけのことはある。
もうすでに、頭を完全に切り替えているみたいで、表情をキリッとさせている――目が赤いけど。
「ジョアンナ」
リアが少しだけ泣き疲れたような表情で声を発した。
「どうかしましたか?」
「ジョアンナは、これからどうするの? リアたちいなくなったあと、どうなっちゃう?」
少しだけ、そう訴える顔には不安げな色が見てとれた。
「わたくしのことは気にする必要はありません。今までどおり、神官として生きていくだけですから」
「でも、あんな人たちと一緒にいたら、どうなっちゃうかわからない」
「大丈夫です。わたくしにも、一応後ろ盾はいますから」
そう言って、彼女はにっこり笑った。
そっか。さっき言ってたご実家とか、その伝手とかかな。
「それにです、リア。先程も申しましたが、生きていれば、必ずまた会えます。ですので、どうかお気をつけて。もし万が一危険だと思ったら、あなたたちにとって最強の味方であるヴィーやクロニャンに相談したり、呼び出して助けてもらったりするのですよ?」
ジョアンナはリアを安心させようと、優しく微笑んだ。
「うん……わかった。リア、がんばる。だからジョアンナも、がんばって。いつか必ず、また、会いに来るから」
「えぇ。きっとですよ」
ふたりはそう言いながら、お互いに両手をぎゅっと握りしめ、楽しそうに笑った。
……でも、クロニャンたちか……。
ジョアンナはああ言ってるけど、本当に呼び出しちゃって大丈夫なのかな?
ヴィーもそうだけど、確か人前で召喚しちゃいけないって言ってたような?
あの子たちの能力知られたら、利用しようとする人たちがいるかもしれないからって。
本当に大丈夫なの?
見た目だってあんなにも凶――
「あ……」
わたしはそこまで考え、あることに気がつき思わず声を上げてしまった。
ジョアンナとリアがきょとんとする。
けれど、わたしの中に生まれたその閃きがとっても素敵なことのように感じられて、どんどんわき上がってくる興奮を抑えきれなくなってしまった。
「ふっふっふっ」
「なんかアネット、怖い」
「リア! ちょっと耳貸して……!」
「ん?」
わたしは飛びつくようにリアの耳へと顔を近づけて、思いついた秘策を伝授した。
「お~~……アネット、頭がいい。それはとっても、素晴らしい考えなのです!」
「でしょう!?」
わたしたちはきょとんと不思議そうにしているジョアンナを前に、くすくす笑い合った。
ホント、我ながら、なんて楽しい企みを思いついてしまったのか。
あいつらのことだ。
きっと、出発前に嫌みを言いに来るに決まっている。
エヴリンたち陰険女も、あれだけ騒ぎを起こしておきながら、なぜか半日の謹慎だけですんじゃったみたいだし。
だからきっと来るはず。だったらそのときに――
「そうと決まったら、善は急げなのです。早速、嫌がらせ計画の策、練るのです。やってやるのです。復讐なのです!」
わたしたちはそのあとも、ひたすらひそひそ話をしながら、ニシシと笑い合った。
これはジョアンナにも内緒。
知られると絶対に止められるし、もしかしたら迷惑がかかるかもしれないから。
知らぬが仏ってこともあるしね。
わたしたちの企みを勝手に読み取ったクロニャンとヴィーが、何か文句を言ってきそうな気配があったけれど、無視した。
「リア! これはわたしたちにできる最初で最後の反攻よっ。わたしたちは決して負けたから追い出されるわけじゃない。自ら望んで出ていくのよ。最後に勝つのはわたしたちよ!」
「そうなのです。一泡、吹かせてやるのです!」
そんなことを叫びながらも、興奮したように小躍りするわたしたちだった。
しかし、さすがにちょっと騒ぎすぎたみたい。
「あなたたち、いったい何をするつもりですか?」
眉間に皺を寄せて、胡乱げに見つめてくる彼女だったけれど、わたしたちは顔を見合わせ、ただただ「内緒」と、にっこり笑うのみ。
そんなわたしたちに、どうやらすべてを悟ったらしいジョアンナが、「まさかっ……」と、見る見るうちに顔を青ざめさせていった。




