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【第1章完】転生魔女と天才聖女 ~居場所をなくした私たち二人が、最強の相棒となって幸せを見つけにいく物語  作者: 汐柳伊織


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14.身に覚えのない告発。嗤う女

(ヤメナサイ)


 ゾクッ。


 突然、身の毛のよだつ殺気が、足もとから頭頂へと突き抜けていった。


 恐ろしく冷徹で、それでいて地獄の番人が地の底から這いずり出てきたかのような錯覚すら想起させられる、怖気や悪寒を伴う声色――クロニャンの刺すような声だった。


(まったく。さっき言ったわよね?)


 どうやらわたしは、正気を失いかけてしまうくらい、怒りに我を忘れていたらしい。


 危うくクロニャンを召喚してしまうところだった。


 けれど、それでもやっぱり憤りは収まらない。


 だって――リアが乱暴されたのよ!?


(ねぇ、クロニャン。魔法って、魔術以外に精霊魔法とか鉱石魔法っていう系統魔法があるってジョアンナが教えてくれたけれど、今すぐそれ教えて。そっちだったらうまく使えるかもしれないから)


 これ以上、我慢できない。


(だからやめなさいって。たとえうまく使えたとしても、勉強したてで未熟な腕しか持っていないあなたじゃ、勝ち目なんかないわよ。それにほら。少し頭冷やして周りをよく見てみなさいよ)


 普段わたしは慎重な方だから、決して自ら厄介事に首を突っ込むようなことはしないけれど、さすがに堪忍袋の緒が切れそうだった。


 こんな理不尽が許されていいはずがない。


 何も悪いことしてないのに一方的に言いがかりつけられて、嫌な目に遭わされるとか。


 わたしはもう慣れちゃってるから別にいいけど、これじゃリアがあんまりにもかわいそすぎるよ。


 わたしは軽く深呼吸した。


 クロニャンに水をさされたせいか、相変わらず気持ちの整理がつかなかったけれど、それでも冷静になれた。


 指摘されたとおり、改めて周囲の様子を観察した。


 すでにそこには大勢の人だかりができていた。


 理由はよくわからないけれど、もめていた当事者のリアとエヴリンだけでなく、何人もの神官たちがいて、ざわめいている。


 さっきわたしをわざと突き飛ばした取り巻きたちもいる。


 他にも、普段から平民出の侍女官を見下している、貴族出身の男性神官たちまでいた。


 そんな人たちが野次馬のように、次から次へと集まってきている。


 このままじゃ、リアがどうなってしまうかわからない。


 なんとかして助けに入らないと。


 わたしはあの子の侍女官なんだから!


「あ、あの! いったいどうされたのですか?」


 わたしはもう一度深呼吸してから、勇気を出して声をかけた。


 一斉に大勢の目がこちらを向く。


 いまだに起き上がれないリアのもとへと駆け寄っていくわたしを見る好奇の目は、そのどれもが、地を抉り取るような鋭い眼差しだった。


「大丈夫ですか? オル=レーリア様」


 背中に左腕を回して支えてあげる。


「うん。平気。いつものこと。だから大丈夫」


 頬を歪めながらも笑って返してくれる。けれど――


 いつものことって……!

 いつもこんなことされてるってこと!? いつどこで!?


 わたしは反射的に、しゃがんだままエヴリンへ視線を向けていた。


 たぶん今、わたし、軽く睨んでしまっていると思う。


 だけれど、わたしたちを見下ろしている赤毛の彼女はまったく意に介さなかった。


 それどころか、揶揄するように笑いながら、舌なめずりまでしている。


「あらぁ? ちょうどいいところに来たわね、小さなこそ泥さん?」


「こそ泥……?」


 わたしは彼女が何を言っているのかまったく理解できなかった――と、そんなところへ。


「おいっ。これはなんの騒ぎだ!」


 大勢の神官たちを引き連れたひとりの中年男性が現れた。

 げ……。


 一番会いたくなかった最上級に厄介な人。

 神殿長ガークス・エル・ヨハンセン。


 上級貴族にしてこの神殿で最も偉く、エヴリンなんか足もとにも及ばないくらいの貴族至上主義の権化。


「これはこれは、神殿長様ではございませんか。本当にちょうどいいところに。これで役者がすべて揃いましたね」


「役者だと?」


 わたしたちのすぐ側まで来て立ち止まった神殿長は、深い皺の刻まれた顔を歪ませた。


「えぇ。そうです。なぜならこれより、唯一絶対の地母神である女神アイシス様に誓って、このわたくしが、嘘偽りのない告発をするからですわ! ――オル=レーリアっ、それからそこの(いや)()アネット! あなたたちが神殿の秘宝である大聖杯を盗み出したことは、もはや明白。即刻この者らを処罰することをご提案いたしますわ!」


 愉悦の笑みを満面に湛えながら、両手を広げて天に祈りを捧げるように叫ぶエヴリン。


 わたしは、自分たちの身に何が起こっているのか理解できず、茫然とすることしかできなかった。

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