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【第1章完】転生魔女と天才聖女 ~居場所をなくした私たち二人が、最強の相棒となって幸せを見つけにいく物語  作者: 汐柳伊織


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0.幼い二人が掴み取った幸せな『未来』

 わたしたちは今、旅の途中で立ち寄った比較的大きな宿で、羽を休めている。


 決して立派とは言えなかったけれど、淡いランプの光に照らされたその一室は、旅を続けるわたしたちにとってはとても居心地がよく、安心して寝泊まりできる素敵な場所だった。


 借りた部屋も広く、ちょっと人様には見せられない、負のオーラと強烈な威圧感を放っているうちの子たちも、これだけあれば、外に出してあげられるしね。


 わたしはそう思いながらも、木製の粗末な椅子に座ったまま、背後を振り返った。


 ふたつあるベッド以外の床すべてを覆い尽くすほどに大きい、真っ黒な毛玉と銀色の毛玉のふたり。


 巨大な彼らは、そうとしか表現できないような姿形をしていた。


 床の上で丸まって寝ている姿は、ホント、クッションにしか思えない。


 これが世界を滅ぼす厄災級の化け物とか言われてもね。


 それなりの時間一緒に過ごしているけど、いまだに実感がわかなかった――まぁ、あんなことがなければ、の話だけれど……。


 わたしはこれまでの旅で何度も目にしてきた凶悪な姿を思い出し、身体(からだ)をぶるっと震わせた。


 襲いかかってきた残念なお兄さんとか賊とか、神殿関係者とか。


 全部片っ端から吹っ飛ばしちゃうんだもの。


 ホントやばすぎる……。


 だけれど――このふたりはおそらく、これからもきっと、変わらずわたしたちのことを守ってくれるのだろう。


 立ち塞がる厄介な敵や、追いかけてくるあいつらからも。


 でもね――お願いだから、その辺焼け野原にだけはしないでよね!


 わたしは軽くお祈りしながらも、気持ちを新たに、再び机に向き直った。


 そして、そこに置かれていた無地の本とにらめっこする。


 ――旅の記録。


 せっかく見知らぬ世界を見て回っているのだし、記録として残しておいた方がいい思い出になるかなって、そう思ったから。


 だからこうして、本当に今更だけれど、書いてみようかなと、そう思い立ったのだ。


 だけれど――こういうのって、何から書き始めていいのかわからないのよね。


「う~ん……でも、そうね」


 まずはやっぱり、彼女と出会ったあの日のことから書くのが一番いいかな。


「ふふ」


「ん? アネット、何してるですか?」


 悲しくも思い出深いあの日の出来事が懐かしすぎて、ついつい笑ってしまったわたしに、いきなり後ろから声がかけられた。


 ――リア。


 白銀の髪がとても綺麗で愛らしい、十歳の女の子。


 ここまで一緒に旅をしてきたかけがえのない存在。


「あ、うん。旅の記録――というと大げさかな? そうね、日記を書こうと思っていたの」


「ふ~ん? 日記? よくわからないですが、アネットは凄いのです。お利口さんなのです!」


 椅子に座っていたわたしの右頬にそっと顔を寄せるようにして、後ろから本を(のぞ)き込んできた彼女が、にこっと笑った。


 そして、わたしの頭をいい子いい子し始める。


 ……本当にもう。相変わらずなんだから。


 わたしより彼女の方が年上だから仕方がないけれど、わたしの中身は五歳じゃなくて大人だから、あまり子供扱いしないでほしいのよね。


 でも……悪い気はしなかった。


 だって、彼女といると、本当に楽しいから――うん、そう。いつもそうだった。


 右も左もわからない状態で、()()()から飛び出してくることしかできなかったけれど、それでも(くじ)けずにやってこれたのは、彼女がいてくれたから。


『治癒の要』として大勢の人たちを救ってきた心優しい彼女がいたから、がんばってこれた。


 いつも明るくて、元気で、愛らしくて。


 ホント、そんな彼女を自ら手放したあの人たちは、正真正銘の愚か者だと思う。


 こんなにもいい子なのにね。


 しかもその結果、自ら滅びの道を辿るとかどうかしている。因果応報としか思えない。


 でも――


 そんな、どうしようもなく酷いところだったけれど、あそこでの日々があったから、今のわたしたちがあるのもまた事実。


 唯一味方してくれた()()()と出会えたのもあの場所だった。


 だから――うん。そうだね。

 あそこが正真正銘、わたしたちの原点。


 そして、そこへと至る道しるべとなったのが――切なくも笑えてくる、()()()の出来事だった。




「あなた、綺麗な魔力してる」


 あの日、そう語りかけてきた彼女のことを、今でも鮮明に覚えている。


 鈴の音が鳴り響く人混みの中、駆け寄ってきた真っ白な少女。


 あのときのわたしはただただ困惑するばかりだったけれど――それでも、あの瞬間から、世界がほんの少しだけ(ひら)けていったような気がする。



 ――あれがすべての始まり。あの出会いがあったからこそ、わたしは今ここにいる。



 ふふ。リア、一緒にがんばって大神殿まで行こうね。そうしたらきっと、道が開けるから。


 わたしは改めて、何も書かれていない(ページ)を見つめた。


 魔法の羽ペンを手に持つ。


 そして――


 今はもう会えないあの人から教えてもらったこの世界の文字を、一生懸命思い出しながら、ペンを走らせた。


 のちの運命を左右することになる、すべての始まりとなったあの日の出来事を、脳裏に思い描きながら。


数ある作品の中から本作を手に取っていただき、誠にありがとうございます。

本作は、二人の少女が絆を深めながら、いろいろな意味で最強の二人へと成り上がっていく物語です。

気に入っていただけましたら幸いです。


また、励みとなりますので、「面白い、続きが気になる」と思っていただけましたら、ぜひ『★★★★★』や『ブクマ』などで応援していただけると嬉しいです。

そんなわけでして、今後とも、応援、ご愛読のほど、よろしくお願いいたします(ぺこり

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