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 隠れ家に戻ってから、私は一晩中眠れなかった。


 日記を何度も読み返した。母の言葉。父の名前。そして、自分の出生の秘密。


「どうする?」


 エルヴィンが尋ねた。


「公開するか? この事実を」


「いいえ」


 私は即答した。


「今は、まだ」


「なぜ?」


「タイミングが悪い」


 私は冷静に分析しようとした。感情を抑え、理性で考える。


「今この事実を公開すれば、私は『聖女の遺児』として祭り上げられる。でも、それは私が望む形じゃない」


「何を望む?」


「制度の改革」


 私は静かに答えた。


「母は、個人として人々を救おうとして殺された。だから私は、制度で救う」


 エルヴィンは黙って頷いた。


「ただ――」


 私は日記を撫でた。


「いつか、必ず公開する。母の名誉を回復し、この国の闇を明らかにする」


「その時が来るまで、秘密にするのか」


「ええ。今は、議会対策に集中しましょう」


 私は立ち上がり、収集した薬価の不正資料を整理し始めた。


 母の真実は、心の奥に閉まっておく。


 今は、戦う時だ。

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