(1)
教会の反撃は、予想より早く来た。
ブライアン村から王都に戻って三日後、互助組合のマルタから緊急の連絡が入った。
「教会が動いた。薬価会議で、『無許可栽培の取り締まり』が議題に上がっている」
私は隠れ家の地下室で、報告を聞いた。
「具体的には?」
「すべての薬草栽培に、教会の許可を必須とする法案だ」
――来たわね。
私は予想していた反撃だが、これほど早いとは思わなかった。
「議会での採決は?」
「三日後。王族と大貴族が参加する」
「時間がない」
私は立ち上がった。
「対抗策は?」
エルヴィンが尋ねる。
「まず、事実を広める。ブライアン村の成功例を、できるだけ多くの人に知ってもらう」
私は計画を口にしながら、紙に書き出していった。
「次に、冒険者ギルドと商人組合に働きかける。彼らは教会の独占に不満を持っているはず」
「議会に出席している貴族たちは?」
「難しいわね」
私は顔をしかめた。
「大貴族の多くは、教会と利害関係がある。薬の独占で利益を得ている」
「では、どうする?」
私は少し考えてから、決断した。
「直接、証拠を見せる」
「証拠?」
「教会の不正の証拠」
私は静かに言った。
「教会は、薬価を不当に吊り上げている。その証拠を、議会に提出する」
「そんな証拠、どこにある?」
「教会の文書庫」
私は地図を広げた。教会の見取り図だ。
「ここに、すべての取引記録が保管されている」
「まさか――侵入するつもりか?」
エルヴィンが驚いた顔をした。
「他に方法がある?」
私は真剣な目で彼を見た。
「時間がないの。三日後の議会までに、証拠を集めなければならない」
エルヴィンは長いため息をついた。
「わかった。だが、慎重にな」




