表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北斗七星  作者: くま
2/2

ドゥーベ

僕には、生まれつき父親がいなかった。母は僕が八歳のときに事故で亡くなった。父の顔を見たこともない。写真すら残っていなかった。僕の顔は母に似ていたから、父の顔は想像することもできなかった。母が亡くなってからは、母方の祖父母に預けられた。今思えば、父方の家族に引き取られなかったのは少し不自然にも感じる。

ずっと育ててくれた母が亡くなった時は二日間泣き続けた。けれど、子どもにはその悲しみさえ、長くは続かなかった。刺激的な日々に紛れて、いつの間にか心は切り替わっていた。母を十分に追悼できなかった自分に苛立つこともあるが、母はきっと、僕が立ち止まることより、前に進むことを望んでいると思うようにしている。

学校生活は、案外すんなりと続けられた。僕の「一般的じゃない」人生をバカにする人は、思ったほど多くなかった。むしろ興味を持ってくれる人が多く、そのまま仲良くなることが殆どだった。勝手ながら、それは僕の才能のおかげだと思っている。とはいえ、大親友と呼べるような存在もいなかった。放課後は、コンビニで新作の駄菓子やアイスといったジャンクフードを買い食いするのが日課だった。

祖父母はとても優しく、僕を何不自由なく育ててくれた。裕福とは言えないが、貧しさを感じたこともない。祖父は定年退職後、家庭菜園に勤しみ、毎朝庭で野菜の世話をしている。祖母は傘寿を迎えたとは思えないほど、現代技術に明るい。スマホもパソコンも器用に使いこなし、詐欺に引っかかる心配なんて以ての外だ。

そんな穏やかな日々を、僕は過ごしていた。

学校から帰ってきた、ある金曜日のことだった。

「おい、悠月。手紙が来てるぞ。」

祖父はよく、僕と従兄弟の名前を間違える。そう言った時は、僕は揶揄う様にわざと無視をする。

「悠月じゃないよ、颯太だよ。手紙にも名前、ちゃんと書いてあるでしょ。」

祖母がすかさず訂正した。

「ああ、そうだったな。」

「それにしても、何の手紙だろうね? もう二年生なんだし、塾の案内とかかもね。」

祖母はいつも頭の回転が速い。

「まあ、後で開けるよ。」

僕は怠惰な性格なので、面倒なことは全て後回し。そのまま自分の部屋に戻って、いつも通りコンビニへ行こうかと考えた。が、ふと手紙に違和感を感じた。封筒に書かれていた僕の名前が英語だった。普段なら気にも留めないようなことだったが、今回は妙に気になった。怠惰な僕でも、流石に中身が気になった。

封を開けると、中には紙が一枚だけ。そこには、時間と住所しか書かれていなかった。

「時間と住所だけって、不親切すぎるだろ。」

とりあえずスマホで住所を調べてみた。どうやら、そこには古本屋のような店があるらしい。指定された時間は、明日の正午。

僕は直感で誰かに相談してはいけないことに感じた。丁度予定もないし、僕は一人でそこに行ってみることにした。

翌朝、僕は支度をした。とはいっても、祖母が作ってくれた朝ごはんのお茶漬けを食べて着替えただけだ。

「今日は、どこか行くのかい?」

突然、祖母がそう声をかけてきた。

「なんで?」

何か気づかれたかと思い、つい聞き返してしまった。

「なんだか、久しぶりに活き活きしてない?」

祖母の勘の鋭さには、いつも驚かされる。たしかに僕は、内心、少しワクワクしていた。

「友達と遊びに行ってくる。」

咄嗟に誤魔化した。

「あら、そう。いいじゃないの。いってらっしゃい。」

祖母はにこやかに送り出してくれた。僕は玄関を出て、例の古本屋へ向かった。歩きながら、ふと誰かに見られているような気がして、何度か振り返る。実際、誰の姿もなかったが、それでも妙な気配を感じていた。単に僕が神経質になっていただけかもしれない。

指定された場所は、郊外にある古びた書店だった。特に目立つわけでもなく、店内には少し黄ばんだ本がずらりと並んでいる。中に入ると、奥のカウンターに座っていた老人がこちらをじっと見つめている。僕がその老人の前まで歩いていくと、老人は低く、静かな声で尋ねた。

「何か探し物かね?」

僕は少し躊躇いながらも、手紙を差し出す。それに一目通した老人は、何も言わずに立ち上がり、店の奥へと向かった。そして、その扉を開けると、地下へと続く階段が現れた。

思わず息を呑む。だが、不思議と怖さよりも好奇心が勝っていた。

「降りろ。」

そう促され、僕はゆっくりと階段を降りていった。

降ると、そこには広い地下通路が広がっていた。

無機質なコンクリートの壁に、薄暗い照明が等間隔で埋め込まれている。

「いや、怪しすぎでしょ。」

思わず独り言が漏れる。それでも足は止まらなかった。

ここで死んでも、誰にも気づかれないかもしれない。そんな不気味さが、この場所にはある。

しばらく進むと、頑丈そうな金属の扉が現れた。無駄な装飾は一切なく、ただ鋼鉄の重厚な質感だけが、圧倒的な存在感を放っていた。

そして、その扉の前には、一人の女性が立っていた。

「藤原颯太君だよね。」

落ち着いた声。女性はそう言うと、扉の方を向いた。端正な顔立ち。肩まで伸びた黒髪。年齢は二十代半ばくらいだろうか。無駄のない動きが、どこか玄人の様な空気を漂わせていた。

「宮本葵よ。」

彼女は簡潔に名乗ると、脇にあるパネルに指をかざした。高い電子音が鳴り、扉が自動ドアのように静かに開いていく。その先に広がっていたのは、広々とした部屋だった。天井は比較的高く、壁際には大型のモニターがひとつ、その下に端末の様な物が整然と並んでいる。中央には長い会議用テーブル。その周囲には、個性豊かな人物が3人ほど、思い思いの姿勢で座っていた。一人は椅子を二つ並べて寝そべり、一人は椅子に逆向きに座っている。

そして、意外なことにバーのようなカウンターテーブルもあり、そこには酒瓶がずらりと並んでいた。コーラもある。なんだか妙に安心した。

無機質で近未来的な空間。だが、ただの会議室とは違う。ここに集まる人々は、明らかに「普通」ではない雰囲気を持っていた。と同時に、どこか温かさもあった。

もっとヤクザみたいな集団を想像してた。拍子抜けするような、でも少し安心するような、不思議な気分だった。そう呑気に部屋を観察していると、バーカウンターに座っていた一人の男性が、こちらへ視線を向ける。

「颯太君だよね?」

男性が僕に尋ねてきた。ここで正直に「はいそうです」、と答えるべきなのか少し迷った。

「そうだよ。指定した時間に来たし。」

さっきの女性、宮本葵が代わりに答えてくれた。

「もしかしたらそうじゃないかも知れないだろ?もし違ってたらどうするんだよ。」

男性が言う。

「じゃあ、この子がそうじゃなくても、『そうです』って言ったら、あなたは信じるわけ?」

宮本さんが反論すると、僕の前で軽い口論が起きた。その様子に、僕は戸惑いながらもただ黙って見守る。

「ごめん、颯太君。何か身分証、持ってたら見せてくれない?できれば顔つきのやつでお願いしたいんだけど。」

その男性の言葉に、僕は少し驚いた。

「いや、急に知らない地下室に連れていかれて、顔つきの身分証明書見せろって言われても、怪しすぎて見せるわけないでしょ。」

宮本さんが、僕が思っていることをそのまま言ってくれた。全く、その通りだ。だが、今ここで抗っても無駄だと感じた。僕一人では、この場所にいる全員を相手にできるわけがない。潔く、言われるままに動くしかない。無言で、財布の中からマイナンバーカードを取り出した。

「意外と素直だな。」

男性はそう言って受け取り、何かに思いを巡らせていた。

「にしても、君、全然お父さんに似てないね。」

その一言に、僕は驚愕した。父の話なんて、生涯聞くことも、話すこともないと思っていた。

「僕の父のことですか?」

一応確認した。

「ん?もちろん君の父だよ。それ以外に誰が君に似るってんだよ。」

男性が自信たっぷりに答えた。どうやら、この人達は僕の父について知っているらしい。

「なんで、僕の父を知ってるんですか?」

思わず尋ねる。

「君の父は元アルカイドだからね。」

その言葉を聞き、僕の頭は完全に混乱した。アルカイドなどと言われても、全く訳が分からない。ふと、手紙に「ポラリス」と書いてあったことを思い出した。きっと何かの組織だろう。だが、なぜその組織に、僕の父が関わってるのか。

ますます訳が分からなくなってきた。

「ごめんね、色々と急でよく分からないよね。安心して、一個ずつ説明するよ。せっかく俺達に君の情報をくれたんだ、ここはフェアにいこう。」

見透かしたように男性が言ってきた。

「まず、俺らはポラリスっていう世界中で活動する1000人ちょいの集団なんだ。んでどういう集団かというと、他の政治団体とかよりもずっと権力を持つ民間集団って感じ。だから政府関係者は一人もいない。」

半ば信じ難い話だった。そんな集団がこの世界に本当に存在するのかと、疑念が浮かんでいた。

「はは、まあ信じられないよな。信じなくても構わない。君には知る権利はあるけど、義務はないから。」

正直、信じられなかった。が、一旦信じないと話が進まないので、頭の中で「そういうものだ」と無理やり納得して話を聞いた。

「世の中には、法で裁けない悪人がいっぱいいるんだ。まあ、日本はそういう人比較的少ないけど。んで、そいつらを裁くのが俺達の仕事。手段は問わない。手段は問わないからこそ、選ばれた人しかなれない。秘密の集団なんだよね、そんな話を世間が知ったら、皆が不平等だって騒ぐだろ?んで、その集団のトップ7人が、北斗七星って呼ばれる。だっせえよな。でも俺らはもう慣れた。で、俺はそのうちのメグレズ。」

僕は黙って聞いている。少しだけ、違和感を感じる部分もあったが、彼の話は現実味があった。

「北斗七星のメンバーの中には攻撃的な奴もいる。でも俺は、そういう争いだとか喧嘩だとかが嫌いなんだよね。大嫌い。だから、俺は会話で物事を解決したいと思ってる。とても日本人らしいだろ?まぁ、そう簡単にはいかないケースが大体だけどね。」

信じ難いと思っていたけれど、何故か彼の話はどこか腑に落ちてしまった。

「どう、少しは信じてくれたかな?」

「一先ず信用はしましたけど、さすがに急すぎて、まだ納得は難しいです。」

「まあ、そうだよな。そこで、急で悪いが君をここに呼んだ理由は他でもない、この組織に加わってほしいんだ。もちろん、今すぐとは言わない。まあいつか、考えがまとまったらでいいよ。」

僕は素直にその提案を受け入れることにした。

「わかりました。」

「ありがとう。君なりの考えが固まったら、またここにおいで。いつでも待ってるよ。」

「はい。」

僕はそのまま出口に向おうとした。

「あ、そうだ、君の情報は絶対に漏らさないし、何をしても危害を加えることはないけど、うちの情報も絶対に漏らさないでね。その時は、まあ察してよ。そんなのお互い、望んでることじゃないでしょ?」

急に怖いことを言われて、少し怯えた。でも、確かにその通りに思えた。

「わかりました。では。」

「そういえば、俺の名前を教えてなかったね。星野凛。できれば下の名前で呼んでほしいけど、まぁ、好きに呼んで。」

僕は小さく頷きながら、帰ろうとした。

「私が外まで案内します。」

「いいよ、行かなくて。子供じゃないんだから。」

宮本さんに対して、星野さんが軽く返す。宮本さんは星野さんを軽く睨んでから、僕に優しい声で言った。

「待ってるからね。」

僕は軽く頷いてから、その場を後にした。



ドアが閉まると、ミヤが話し始めた。

「本当に大丈夫なの?まだ中学生の子供だよ?」

「ミヤは心配性だな。藤原のガキだぞ。なんとかなるよ。それに何より俺がいる。」

「あなたいつもそんなんだよね。ほんと呆れるわ。」

「まあ俺だし。」

「まあだからこそ安心できるんだけどね。」

「だといいけど。」



僕は家に帰り、そのまま自室に向かう途中で、祖母に声をかけられた。

「随分早いわね。本当に行ったの?」

「行ったよ、行きました。別に早くないよ、普通だよ。」

「あ、そう。」

そっけない返事が返ってきた。そのやり取りに、少し日常を感じてほっとした。その日は、普段通りに残りの時間を過ごした。

翌朝もいつも通りの時間に目が覚めた。カーテンの隙間から差し込む朝の光、廊下の向こうから聞こえる祖母の足音。何も変わらない朝のはずなのに、妙に静かに感じた。食卓には温かい味噌汁と焼き魚が並んでいた。祖父が新聞を広げ、祖母が湯呑みを手にしている。いつも通りの光景。

「颯太、ちゃんと食べなさいよ。」

祖母の声に頷きながら、箸を動かす。

昨日のことを思い出す。ポラリスの空気、あの場にいた人達。ほんの数十分だったのに、家に帰ってくると、全てが随分前の出来事のように感じた。

またその次の日、学校へ向かう途中、道の両側に並ぶ家々や電柱、すれ違う人々を眺める。でも、どこか景色がぼやけて見える気がする。昨日までと何も変わらないはずなのに、何故か少し違和感を感じた。教室に入ると、いつもの友人達が他愛のない話をしていた。「昨日さ、ゲームの新作出たの知ってる?」そんな会話が飛び交い、クラスはいつも通りのざわめきに包まれている。

「颯太、おはよう。」

クラスメイトの秋本栞に声をかけられ、反射的に「おはよう」と返す。でも、何か言葉がうまく馴染まない。昨日まで当たり前だったこの空気が、ほんの少しだけ遠く感じる。授業が始まる。ノートに文字を書き込む手が止まりそうになる。黒板の文字を追っているはずなのに、心は別の場所にある気がした。時計の針がゆっくりと進むのを眺めていた。あの場の空気がどこか心に残り続けていた。目の前で誰かが笑う。その声を聞きながら、自分も笑顔を作る。でも、心の奥には、何かぽっかりと穴が空いたような感覚があった。

そしてまた次の日には、同じような日常が続いた。あの日以来、常に違和感と隣り合わせ。そのままちょうど1週間が過ぎた。

「このままでいいのかな。自分にできることあんのかな。」

そう思いながら、心の中で突っかかっていた思いに一つの答えが出た。そもそもこの案内が僕に来たには、何か理由があるはずだ。関係があるとしたら、それは僕の父だ。それ以外に考えられない。父は僕に何か伝えたかったのだろうか。僕はそれを知りたいと思った。

そして、僕はまた来た土曜の朝、あの古本屋に向かった。

この先、何が自分に起こるのだろうか、そんなことを考えていたら、目的地に到着した。前に案内してくれた老人が、相変わらず同じ場所に座って煙草を吸っているのが見えた。

「久しぶりだね。何か用かい?」

「気持ちが定まったらまた来いと言われたので」

「そうか、じゃあ、気持ちは定まったんだな。」

僕は静かに頷いた。

「さあさあ、入った入った。」

一歩踏み入れると、前と同じように階段が続いており、コンクリートの壁が無機質に並んでいた。通路の先に進むと、宮本さんが待っていた。

「なんで僕が来るときにいつも外で待ってるんですか?」

「気になる?気になるよね。」

少し楽しそうに言ってから、ドアを開けようとする。

「君が来ると思ったからだよ。なんてね、冗談。」

宮本さんが揶揄うように言う。

「玄関のおじちゃんはもうちの人だから。あの人に教えてもらってるの。」

ドアが開いた。中に入ると、星野さんの姿は見当たらない。

「凛なら今、仕事行ってるよ。多分、そろそろ帰ってくる。」

急に来たからといって、必ずしも彼がいるわけではない。来るまでの時間をどう過ごそうか迷っていると、宮本さんがふと話しかけてきた。

「結局、どうすることにしたの?」

僕は少し黙ったまま、宮本さんの顔を見た。心の中で答えを出すまで、時間がかかった。これまでの自分の生活があまりにも普通すぎて、今のこの状況が非現実的に思えて仕方がなかった。だけど、あの手紙を受け取った時から、何かが変わり始めたような気がしている。

「まだ、決めかねてるけど、、、」

言葉を選びながら答える。

「でも、父が関わっていたっていうのは気になります。何かしら、僕にも伝えたかったことがあるんじゃないかと思うんです。」

宮本さんは静かに僕の言葉を聞いて、しばらくしてから、少し柔らかい表情で頷いた。

「そうだね。君の父親が関わっていたのは確かだよ。それに、君がここに来た理由も、それに関係してる。だけど、これから君がどうするかは君の自由だ。私達が強制するわけじゃない。君が自分の意思で答えを出さなきゃ。」

その言葉は、どこか安心感を与えてくれるようだった。自分がまだ迷っていることを認めるのは少し恥ずかしかったけど、今の自分にはそれが必要だった。

「もし、入ることを決めたなら、君にしてもらうことがある。」

宮本さんが真剣な顔で言った。

「でもまあ、焦らなくても大丈夫。君が納得できるまで、ゆっくり考えていいよ。」

その時、奥のドアが開き、星野凛が部屋に戻ってきた。普段より少し疲れたような表情をしているが、僕を見るとすぐに微笑んだ。

「お帰り、凛。」

宮本さんが軽く挨拶をすると、星野さんは軽く笑いながらソファに腰掛けた。

「お疲れ様。さあ、颯太君、話を続けよう。」

星野さんは、僕に向かって優しく言った。僕は少し緊張しながらも、彼の言葉に耳を傾ける。

「さっき、ミヤが言ったように、君には選ぶ権利がある。そこで少し君の父親の話をしよう。君の父親がどんな存在だったのか知りたいだろ。」

彼はゆっくりと言葉を紡ぐ。

「君の父親は、僕達にとって非常に大きな存在だった。今の日本のポラリスの基盤を作った人物でもある。その分、謎も多い。俺達ですら、彼のことを完全には理解できてないんだ。」

その言葉に、僕は驚きとともに、さらに強い興味を抱いた。父がどんな人物だったのか、その知られざる一面を知りたくなった。

「君も彼の希望を受け継ぐことになるだろう。もちろん、君が望むのであればだが。」

星野さんは少しだけ表情を引き締め、言葉を続けた。その言葉は、僕の心に深く響いた。父が残したものが、どんな意味を持つのか。それがまだはっきりとはわからなかったが、今はその答えを知りたいという気持ちが強くなっていた。

「分かりました。」

僕は深く息を吸ってから、決意を固めた。

「もっと知りたい。父が関わっていたことについて。もう少し、話を聞かせてください。」

星野さんと宮本さんはお互いに一瞬目を合わせ、星野さんは静かに頷いた。

「じゃあ、入るってことでいいのね?」

星野さんは少し笑みを浮かべながら、そう言った。

「よろしくお願いします。」

それが僕の決意だった。

「じゃあ、早速ついてきな。良い経験になると思うよ。」

「凛、流石に速すぎるよ。」

宮本さんが口を挟んだ。

「大丈夫大丈夫、任せろって。」

星野さんは自信に満ちた表情で答えた。

「はぁ、ほんとに呆れたわね。」

宮本さんは軽くため息をつきながら言った。そして、僕に向けて手を差し出し、何かを渡す。

「颯太君、これ持っておきな。」

宮本さんから手渡されたのは、金属製のライターだった。

「僕、たばことか吸わないんですけど、、、」

「まあ御守りみたいなものだよ。」

宮本さんは愛想笑いのような笑みを浮かべて僕たちを送った。

「行くぞ。」

星野さんの一言で、僕はそのまま彼についていった。車に乗り込んで、目的地に向かう道中、心の中で様々な思いが駆け巡る。今から向かう場所がどんなところなのか、少しだけ怖さも感じながら、ただ黙って座っていた。車がゆっくりと走り、着いた先には廃ビルが並んだ薄暗い地区だった。周囲には殆ど人影もなく、静寂だけが支配している。

「そこだよ、あの二階に事務所があるだろ。」

星野さんが指差す先には、周囲の建物に比べて、ひときわ明かりが灯っているビルが見えた。どこか不気味で、入りたくないような気がしたが、僕は星野さんについてった。

「ついておいで。」

そう言って、星野さんは先にビルの中に足を踏み入れた。僕はその後を追うしかなかった。

階段を上がると、事務所の入り口が目の前に現れた。星野さんは少し立ち止まり、深く息を吸い込んでから、僕に向かって一言だけ言った。

「見てて。」

そして、彼はドアを開けて中に入った。中にいる人達の目が一斉に彼に注がれた瞬間、星野さんは静かに口を開いた。

「メグレズだ。久しぶりだな、久我。元気してそうで何よりだよ。」

その一言で、周りの空気がピンと張り詰めるのがわかった。たった一言で、その場にいる全員が動きを止め、警戒を解いた。その威圧感、そしてメグレズという名前の持つ力に、改めてこの世界の秩序が感じられた。

「ディッパー様がうちに何か用か。」

中央の椅子に座った男が、冷たい視線を向けながら尋ねた。どうやら、この男がここでのリーダーらしい。長年この業界で生きてきたような雰囲気を持っていて、その目は鋭かった。

「少し話がしたい。」

星野さんが冷静に言った言葉が、部屋の中に響いた。全員がその一言を待っているようだった。

「話を聞く前に確認しておく。これは『ポラリス』としての話か?」

「そうだ。メグレズとして、正式な立場で話してる。」

座っていた男性は眉をひそめ、椅子の背もたれにゆったりと身体を預けた。星野さんは一歩前に出て、静かに言葉を紡いだ。

「久我、お前の命を狙っている組織がある。ここ数ヶ月、裏で不穏な動きがあった。俺達もずっと調査してたが、どうやら標的はお前だ。」

「俺か。」

その場の空気が一気に張り詰めた。周囲の構成員達も、一瞬息を呑むように動きを止めた。

「根拠はあるのか?」

久我さんの声が低くなる。その態度には冷静さがあった。

「ある。内部情報までは掴み切れていないが、武装と資金力を持つ少数精鋭の集団だ。お前の組織を内部から崩そうとしてる。そうなる前に、俺達と手を組め。」

「なるほどな。脅して、協力を取りつけようってわけか。」

久我さんは冷静に、冗談半分の様な話しぶりだ。

「俺がそんな真似をするような奴だと思うか?俺は守ると言ってるだろ。別に代わりに何かを要求してるわけではないぞ。まあ、強いていうなら君達とは仲の良い関係を築きたい。そんだけだよ。」

彼らの会話は終始冷静だった。焦りも威圧もない。ただ事実を述べているだけなのに、言葉に妙な重みがあった。久我さんはしばらく沈黙してから、ため息をついた。

「君らの情報がどこまで信用できるか、今のところ判断よね、正直。」

「まあだろうね、だから直接話をしようと思ってる。場所を変えて、少し静かなところで。」

「場所を変える?まさかこのガキも連れてくるつもりか?」

久我さんが僕の方をちらりと見た。

「もちろん。こいつは俺の後任候補だ。少しずつ見せていくつもりだ。」

後任候補という言葉に少し驚いた。きっと冗談だろう、星野さんはそういう性格だ。久我さんは目を細めたまま、しばらく星野さんを見つめていたが、やがて肩をすくめるように立ち上がった。

「まぁいい。少しくらいなら付き合ってやる。話の続きを聞こう。」

簡単に信じてくれたことに強い違和感を覚えながらも、久我さんの素直な態度に驚いた。

「お、案外素直なんだな。んじゃまあ、ついてきてくれ。」

星野さんは軽く笑って、その事務所を後にした。僕も後を追うように続き、久我さんも無言のままついてきた。

そして、車での移動中。車内は少しだけ静まり返っていたが、星野さんが時折助手席から振り返って軽く話題を投げる。それに久我さんが時折ぶっきらぼうに返す。星野さんは会話のつもりのようだが、久我さんはまるで牽制のような話しぶりだった。

やがて車は、路地裏の一角にある落ち着いた雰囲気のバーの前で停まった。控えめなネオンが灯る看板。重厚な木製の扉。

「ここ、俺の行きつけ。静かで話しやすいんだよね。」

「洒落たとこ選ぶな。」

「俺も酒くらい飲むよ。何せ疲れる仕事だからね。」

扉を開けると、店内はクラシックなジャズが静かに流れていた。落ち着いた照明に、年季の入ったバーカウンター。カウンターの奥では、マスターらしき男性が軽く会釈した。

「いらっしゃい。お連れ様かい、珍しいね。」

「いつもの。あと二人分もね。」

「あ、僕は、」

「君は未成年だよね。何がいい?ソフドリなら大体何でもあるよ。」

マスターが僕に直接聞いてきた。

こういうところに来るのは滅多になかった。戸惑っていると、星野さんが言った。

「こいつはトニックでいいよ。」

「それってお酒入ってますか?」

僕は流石にお酒を飲むほどのワルになりたい訳じゃない。

「入ってないですよ。飲んだことないなら一度飲んでみますか?」

バーテンダーの人が言ってきたので小さく頷いた。

3人は奥のソファ席に腰を下ろした。グラスに琥珀色の液体が注がれ、静かに置かれる。

「なんだこれ。」

久我さんは戸惑いながら言った。そこには僕も見たことがないようなお酒が置かれていた。グラスの上にはレモンスライスと白い塊がおかれていた。

「二コラシカ。口の中で作るカクテルだよ。お洒落でしょ?」

この世は僕がまだ知らないことばかりだ。

「じゃ、乾杯ってことで。」

「何に?」

久我さんが眉を上げる。

「まあ、色々。」

星野さんはいつも軽口ばかりだ。

「俺はまだ協力するとは言ってねえよ。まあいい、グダグダするのもあれだ。早く話してくれ。」

グラスが軽くぶつかる音が響く。乾いた音とは裏腹に、どこか重たい空気が場に漂っていた。

星野はグラスを一口傾けたあと、静かに口を開いた。

「俺達が協力したいって言ってるのはな、別に力を貸してほしいからじゃない。俺は争いが嫌いなんだ。争いが起きてからじゃ遅い。だから、その前に無駄な抗争は避けておきたい。」

久我さんは無言で星野を見つめる。その視線に星野は微かに笑みを浮かべる。

「つまり、お前は平和主義者ってことか?」

「そう思ってくれても構わないよ。ただ、それだけじゃない。」

「じゃあ何だ?」

「俺は、ある人の願いを叶えたい。そいつが生きてた頃に、ずっと言ってた言葉があるんだ。」

星野はグラスを置き、真剣な眼差しで久我さんを見る。

「みんなが幸せであってほしい。ただそれだけだよ。」

「随分と漠然とした願いだな。」

「そうだな。でも、そいつにとって幸せってのは、誰かを傷つけなきゃ生きていけない人間達を、そんな生き方から救うことだった。暴力に頼らない道をつくることだった。俺は、その想いを継いでる。」

久我さんは少しだけ目を細めた。何かを思い返しているような表情だった。

「その「ある人」って、誰なんだ?」

星野は一瞬黙った後、静かに言った。

「前アルカイド。」

その名が出た瞬間、久我さんの表情が一変した。

「なに?」

「そして」

星野は隣に座る僕へ視線を向ける。

「こいつは前アルカイドの息子だ。」

グラスを持っていた久我さんの手がわずかに揺れる。

「は?こいつが?」

久我さんは僕を改めてじっと見つめた。その視線には驚きと困惑、そしてどこか懐かしさのようなものが混じっていた。

「マジか、、、」

「俺も最初は信じられなかったよ。でも、確かにアルカイドの血を継いでる。あいつの目をしてる。」

久我さんはもう一度、ゆっくりとグラスを置いた。そして深く、長いため息をついた。

「お前、よくこんな大物をここまで連れてきたな。」

「こいつ本人の意志だよ。俺達はただ背中を押しただけだ。」

久我は一口、グラスの中身を口に運ぶと、しばらく黙ったまま視線をグラスの底に落とした。

「アルカイドの話、確かに聞いたことはある。だが、詳しくは知らん。周りが凄い奴がいたって噂する程度だ。」

彼の口調はあくまで淡々としていたが、どこか言葉を選んでいるようにも感じた。

「ただ、一度だけ遠くから見たことがある。まだ俺が今の立場につく前、別の任務で現場にいた時だ。あいつは誰とも違う空気を纏ってた。静かなんだけど、妙に目を引く。何をしたのかは知らんが、部屋にいた連中が一気に黙ったんだ。まるで時間が止まったみたいに。」

久我は言葉を切ると、グラスの中身を見つめながら小さく息をついた。

「その時、あれが『本物』ってやつなんだろうなと思ったよ。」

「だからこそ、信じられんってのもある。そもそもアルカイドに息子がいることも、そのアルカイドの息子が、こんなふうに目の前にいることも。俺はまだ、お前らの話をすべて鵜呑みにしてるわけじゃない。でも話を聞く価値くらいはあると思ってる。」

星野は頷きながら久我さんの話を聞いていた。

「ならまず、君達の中で共有しておいてよ。これからどうするべきかってことを。俺達は敵じゃない。争う必要なんて、本来ないんだ。どちらかが手を出せば、それだけで誰かが犠牲になる。そういうのを、宙は一番嫌ってた。だから、俺はそれを止めたい。」

久我さんは目を細めた。

「部下達に話してみる。すぐどうこうとはいかねぇが、最低限の理解はさせるつもりだ。」

「ありがとう、それだけでも十分だ。」

「ただ一つ言っておく。俺は、信頼には慎重な人間だ。アルカイドの息子だろうが、結局は行動で示すしかない。」

「当然。だからこそ、俺達も覚悟を持って動く。」

静かに交わされた言葉の中に、確かな始まりの気配があった。

「んじゃ、俺は先に帰るぞ。」

久我さんが椅子から立ち上がった。星野さんは軽く頷いた。

「考える時間はまだある。焦らず、でも忘れんなよ?まあ、考えが固まったらここに連絡してくれ。」

「わかった。」

久我さんはそう言って、店のドアを開けて出ていった。扉が閉まる音が響くと、店内はふたたび穏やかな空気に戻る。

僕も少し背中を伸ばして息をつく。気づけばグラスの中の氷は殆ど溶けていた。

「ふぅー、まあ、あれでも一応はリーダーだしね。あれでも頑張ってる方だよ、彼なりにはね。」

星野さんが冗談めかして笑う。僕はぎこちなく笑い、グラスを口元へ運ぶ。

「でも、ああいう場面で一番効果あるのはね」

星野さんが少し悪戯っぽくこちらを見た。

「アルカイドの息子ですって一言、あれ、使えるよ?みんな言うこと聞くぞ?」

「いや、それはちょっと」

思わず苦笑してしまう。そんな名前だけで周りの態度が変わるなんて、あまりにも実感が湧かない。

「冗談半分、本気半分ってとこかな。でも実際、影響力はあるよ。君の父さんの名前は、それだけ重みがあるってこと。」

「なんか、まだ自分には似合わない感じがします。」

「それでいいんだよ。君がその名前に呑まれる必要はない。けど、時には旗印が必要な場面もあるからさ。覚えておいて損はないよ。今日の俺を見て分かったでしょ。」

星野さんはそう言って、またグラスを傾けた。

「さて、そろそろ帰ろうか。今日はよく頑張ったね。」

僕は小さく頷いた。確かに、少しだけ前に進んだ気がしていた。

外の空気はひんやりとしていた。街は静まり返っていた。

僕と星野さんは並んで歩き、駐車場に停めてあった車に乗り込んだ。

エンジンがかかると、ダッシュボードのランプが静かに灯る。星野さんは片手でハンドルを回し、車を滑らせるように路地へ出た。しばらく無言のまま夜の道を走っていた。街灯の明かりが、時折フロントガラスをかすめて過ぎていく。

「星野さん、」

「ん?」

助手席の僕は、ふと浮かんだ言葉を口にした。

「さっき、こいつは俺の後任候補だとか言って、あれ、本気なんですか?」

星野さんは笑った。少し肩を揺らすようにして、前を見たまま答えた。

「あー、あれか。あれはまあ、冗談半分、本気半分。」

「またそれ。」

「でも、そういうのって大体そうなんだよ。冗談っぽく言っといた方が、身構えなくて済む。まあ、でも本気で考えてるのは事実だよ。」

「僕じゃ、何もできませんよ。」

「そう思うなら、やれるようになればいい。誰だって最初は何もできないから始まる。いや、そうでもないか。案外才能が8割だったりするのかな。」

その口調は、いつもの軽さに少しだけ優しさが混じっていた。

「まあでも、君はアルカイドの息子だ。もちろん、それだけじゃ何の価値もない。でも俺の目には、ちゃんと君自身に伸びしろがあるように見えてるよ。」

「そんな風に言われると、ちょっとだけプレッシャーですね。」

「それが狙い。」

星野さんがニヤッと笑った。

「でもさ、たぶん君の父さんなら、もっと無茶なことを言ってたと思うよ。颯太なら全部やれるくらいはね。」

「そんなこと、本当に言うんですかね?」

「さあ?言ってたかもしれないし、言ってなかったかもしれない。でも、俺の記憶の中のあの人なら、そう言っててもおかしくはないね。」

窓の外を流れる街並みを見ながら、僕は黙った。父の姿はやっぱりまだ遠い。でも、少しずつ見えてきている気がした。

「ま、とにかく焦らなくていい。でも、止まるなよ。後任候補なんだからさ。」

その言葉は、車内にふっと優しい熱を残した。やがて車は僕の家の近くへ差し掛かる。星野さんはブレーキを踏みながら言った。

「送ってきたついでに、次の予定の相談もしたいんだけど、」

「明日も来ますよ。暇なんで。」

僕はドアを開け、夜の風を胸いっぱいに吸い込んだ。

「んじゃまた明日ね、アルカイドジュニア。」

「その呼び方やめてください。」

笑いながら手を振る星野さんの車が、夜の道に溶けていった。

家に帰ると、玄関の灯りがほんのりと僕を迎えた。

入ると、静かな室内に広がるいつもの匂い。祖父母がいることを感じさせる、懐かしい温もり。

「お帰り、颯太。」

祖母が台所から顔を出し、温かな笑顔で迎えてくれた。

「おう、お帰り。遅くなったな。」

その声に答えると、祖父は新聞を広げたまま、ちょっとだけ顔を上げて言った。

「うん、ちょっと遅くなっただけだから。」

僕は軽く答えて、靴を脱ぎながらカバンをソファの上に放り投げた。

「今日はどうだった?」

祖母がテーブルを拭きながら、ちらっと僕を見た。

「どうって普通だよ。いつも通り。」

「そっか。忙しいのかい?」

祖父が新聞をめくりながら、ぼそりと聞いてきた。

「そりゃ学生だしね。」

その問いに、わざと軽く答えた。でも、なんとなく胸の奥で何かがざわつく。それは、今日あった出来事のせいだろうか。星野さんとの話、久我さんとのやり取り、そして僕がこれから進んでいくべき道。どれも今までの自分にはなかったものだ。まるで、少しずつ僕の周りの景色が変わっていくような感覚があった。

色んな考えが頭をめぐっていた。あのバーでの会話。星野さんが言っていた「後任候補」という言葉。そして、僕の父のこと。自分がいまどこに立っているのか、何をすべきなのかその答えがまだ見えないまま、次の一歩を踏み出さなければならない気がしていた。

「じゃあ、今日はお休み。」

祖母が声をかけてきたので、僕は軽く頷いた。

「うん、ありがとう。」

僕は自分の部屋に向かう途中、ふと立ち止まった。

テレビの音が遠くに聞こえている中、家の中は静かだった。祖父母がいる、この普通の夜の空気に、ほんの少しだけ違和感を感じた。でも、それが僕の人生の中で一番安らげる時間でもあるのだと、すぐに気づく。それでも、目の前の現実に向き合うために、僕は明日また一歩踏み出さなければならない。

部屋に戻ると、ベッドに横になりながら、天井を見つめた。

今日のことを思い返すと、胸の奥に重たい感情が渦巻く。

「俺、どうしていけばいいんだろう。」

そう呟きながら、目を閉じた。

明日がどんな日になるのか、まだ分からないけれど、確かにひとつ、強く思ったことがあった。

父についてもっと知りたいというその思いは、もっと深く知りたい、理解したいという気持ちに変わっていった。

目を閉じると、少しだけ安心した気持ちとともに、深い眠りに落ちていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ