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見たら祝われる絵

作者: 華城渚

「見たら祝われる絵って知ってる?」


「......なんて?」

思わず私は聞き返してしまった。


今日は数年ぶりに友達を会う約束をしていた。

昔から仲は良かったがお互い忙しく、会う機会がなかった。

通話は何度もしているが面と向かって話すのは久しぶりなため、少し緊張していたがよくわからない話題を振られその緊張もどこかへ飛んでしまった。


数秒の沈黙。

喫茶店で流れる音楽と紅茶の風味が心地よく感じる。


「だ か ら、見たら祝われる絵だよ!」


「何度言われても理解できないよ。ていうか祝われるの?呪われるんじゃなくて?」


「そうそう!それが不思議だよねぇ~......その絵を見た人は涙を流しながら祝われるらしいんだよ。」


「え、気持ちわる。それって絵が変わってそうなるってことでしょ?結局呪われてる絵って事じゃん。」


「私もよくわかってないんだけど、なんか面白そうじゃない?」


「そうかな......それよりも数年ぶりに会ったんだからもっと別の話題のほうがよくない? 最近どうとかさ。」


「え~、それは何度も通話で話してるからいいじゃん。 それでその絵がこれなんだけど。」

そう言って友達はスマホの画面をこちらに向けてきた。


「ちょ、ちょっと待ってよ!見たらよくないんじゃないの?!」


「ああ、写真なら大丈夫だから安心して?」


「そうなの?」

恐る恐る私は友達が見せてきた画面を見た。



ただ家族が描かれているように見える。

父、母、娘の三人家族。

別に不自然なところは何もない。むしろ不自然なほど何もない。


「ただ家族が描かれてるだけじゃん。」


「そう!だから実際に見てどう祝われるのか体験してみない?」


「やだ。 写真が普通なものほどろくでもないことが絶対起こるんだから。」


「大丈夫だって。 ほらっ行くよ!」

そう言って友達は足早に会計を済ませて店を出る。


「はいはい、わかったよ。」

私も残っていた紅茶を飲み干し、会計を済ませた。


彼女はいつも即行動、即決断する。

学生時代はそれによく振り回されたものだ。

まぁそのおかげで飽きることはなかったが。



近くでタクシーを捕まえ、彼女が運転手に住所を伝える。

その住所は私も聞き覚えがあった。




「久しぶりに来たね。」


「うん......でも本当にここにあるの?」

着いた場所は小学校だ。

もう廃校となってしまったが、私が昔通っていた学校だ。


「そうだよ。私に着いてきて。」

彼女は迷うことなく歩いていく。


「うん......」

廃校に足を踏み入れるのはどうかと思ったが、ここまで来て帰るわけにもいかず、彼女に着いていくことにした。



「「......」」



お互い話すことなく進んでいく。

いやな静寂だ。

まだ昼頃で暖かいはずなのに、寒気がするような気がする。




「着いた。ここだよ。」

彼女はドアを開け中に入る。

中はいろいろな物が散乱している。

教科書や先生が使うような授業道具が埃をかぶり床を埋めていた。


「ここは物置部屋として使われていたんだよね。昔はみんなで集まって遊んでたなぁ......」

そう言って彼女は真ん中にあるものに近づいていく。


「そうだったね......それで......」


「そう、これが見たら祝われる絵だよ。」


それは白い布のようなものがかかっていた。

大きさはA3サイズくらいだろうか。イーゼルに乗せられている。


「それじゃあ、準備はいい?」


「う、うん......いいよ。」



彼女は白い布を取った。



「......写真で見た通りだ......ね......」

私は言葉を失った。

目の前にある絵ではなく、その隣にいる彼女を見て......



彼女の目と口は黒く染まっており、人ではない何かに見えたからだ。



「ミチャッタネ」



彼女?はケタケタと笑いながら私に異質な笑顔を向け、拍手をしていた。







皆さんは「見たら祝われる絵」をご存じでしょうか。

その絵は何の変哲もないただの家族の絵です。

その絵には父、母、姉妹が描かれています。


一度あなたも見てませんか?


もちろん




イワッテアゲマスヨ?


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