俺と松川さん、とカスミさん……て誰？

プロローグ

　わたしはカスミ。

　歴史を変えるために、すべてを差し出すそうって女。

　すべてを、ね。

　命は死んで終わりじゃない。

　死んで始まることもある。

　は！　そんなの普通わかんないよね、命のことなんて。

　生きるってことも。

　人の世はう(・)た(・)か(・)た(・)って、誰かが言ってた。う(・)た(・)か(・)た(・)っていうのは、水面(みなも)に浮かぶ泡っていう意味。心もとなくて、ちょっとしたことでパチンって消えちゃうってこと。ほんと、そうだ。

　そんな不確かなものに、人は一喜一憂する。

　悩む。

　呻(うめ)く。

　それでもって、生きようって足掻(あが)いて、そのせいでかえって死を早めるの。

　でも。

　それがみっともないなんて、誰が言える？

　頑張ることがみっともないっていうんだったら、なんのために生きんのかわかんないじゃない。

　あとさ、すべてを差し出すって意味、わかる？

　進んですべてを失うってことの理由。

　それはね、愛だよ、愛。

　あ、笑わないでよ、本気なんだから。

　笑わないでさ、ちゃんと見てよ、ね。