EP3 長過ぎる道中
さて、故郷を離れて初めての夜が来た。
さっき奴隷商人らしき人からパンを手渡されて食べた。
昨日食べたものより少し大きかったです。
それより、もっと気になるのが、
「長い……どこまで行くの……」
「教えてやろうか?」
さっきの奴隷商人が荷台のドアを開けた。今度は、私のいる場所に荷物を置きに来たらしい。
「教えてくれるの?」
「デメリットは別にないしな。お前を連れて行くのはこの国の都、フランダムだ。流石に名前は聞いたことあるだろう。あと、お前、自分では気づいていないらしいが、かなりポテンシャルがいいだろ」
結構年季の入ったような顔を触りながら、奴隷商人の男はそう言った。
「そうなんですか」
「興味なさそうだな。フランダムは学問の街とも言われているくらい、技術や知識が発達している。お前みたいなヒョロガリでも、頭さえ良ければ成り上がれる構造の社会だ」
「……かと言っても、私にそんなことできるわけないですよ」
「だろうな、平民からならまだしもだが」
男は荷物を私の目の前に置いて、そのまま扉を閉めてしまう。到着までは、あと数日かかるらしい。
さて、どうやって暇を潰そうか。
◇◇◇
あれから3日経った。相変わらず車は海沿いを走り、一向に景色の変わる気配がない。
フランダムは海上都市だと聞いたことがある。もう少しならば、そろそろ見えてくるはずだ。
「見えないってことは……まだまだってことか~……ずっと座りっぱなしで足が痺れてきた……」
出発直後と違って、荷台の物の数も増えてきたせいで、ただでさえ狭かった行動範囲が更に狭まった。
足が痺れて動く気力もなくなってくる。だけど、何故か隅っこが落ち着いてくるのだ、圧迫感でいろいろと吹っ切れたのかもしれない。
「……もう考えるのもだるくなってきた」
私は全身から力を抜いて、壁にもたれかかった。
横になるスペースも無いので、寝るならこんな体勢のまま寝なければならないのだ。
(奴隷でも何でもいいから、ついたらすぐに寝っ転がりたい……)
私は目を閉じた。まだ夕方だけど、食事が一日一回な分、体力は温存しておきたいのだ。
◇◇◇
『■■、海■■■ん、■■■っ■■■■思う?』
『……多元■■■■かが■■■なら、■■と■が■■■■界もあ■■■ね』
『■■■かって■■る?』
『■■■■■、こ■■界■■■■てはほ■■■いかも。積み上げ■■た■■■、全■■■くり■■■■■うな■■■■か■』
◇◇◇
「おい!ついたぞ!起きろ!」
首輪のリードを強く引っ張られた。
夢の世界に入り込んで、奇妙な言葉を聞いた私は、窒息しかけたような感覚によって、現実に引き戻された。
「……最悪の目覚め……」
「なら一声かけたらすぐ起きろ。まる四日かけてやっとたどり着いたんだ、こっちも疲れてんの」
私は後ろ手に手枷を着けられたあと、そのまま外に連行された。久しぶりの青空だ。
私は、周囲を見渡した。
だけど、確かにかなり街が発達はしているようだが、都と聞いていた割には人気がない。点々といる人たちがこっちに視線を向けているのは分かった。
「それで、私をどこに売っぱらうつもりですか」
「ここだ。フランダムには一つしかない、奴隷商の店だ」
都に一つ、ということは、こじつけて考えれば貴族あたりがよく使うような店ということだ。
悪徳代官のような奴に目をつけられなければ、結構安泰な気もする。
「あ、来たか……それで、今日はこいつを買い取ってくれと……あらかじめ情報は伝えられているが、嘘ついてないよな」
中から、店主と思わしき男が出てきた。別に若いというわけではなさそうだ。
「疑うんなら、確認してみればいいだろ。違かったらわざわざここまで連れてこないっての」
店主の男は、私の顔を少し見つめた。自分のプライベートを探られるような嫌な視線だ。
ちなみに比喩ではなく、本当に何か不快な感じがする。
「……まさか、本当だとは思っていなかったです」
「何度か来たことあるんだから流石に信用してくれよ〜」
「何なの気になる」
「今はあなたには関係ありません。ついてきてください」
さっき話していたことの意味がちっともわからない。当事者なんだから教えてくれてもいいじゃないか。
彼は、私を連れてきた男に、よくわからないがすごい額のお金を手渡した。私はされるがままに店内に連れ込まれていく。
「汚いな……とりあえず洗うか」
「仮にも純粋な乙女なのに、何てことを言うの!」




