EP24 リーブル
私は困っている。これからの生活のことでも、こないだ始めた農家の手伝いの仕事のことでもない。
最近ずっと本ばっかり読んでいるフィリアちゃんのことだ。
「行くよ!!買い物っ!!身体を動かせ身体を!!」
「嫌だぁー!動きたくない!!」
この街に来てから早くも一週間、仕事の時を除いてついにフィリアちゃんが外に出なくなった。
本を読むことは別にいいが、そのおかげで私は毎日ハードスケジュールだ。
ついに私は堪忍袋の緒が切れた。出会ってそこそこ間もない人にこんなに強く言ったのは初めてだ。
「なら、今日のご飯は抜きにするよっ!!」
「卑怯なぁっ!!」
床にへばりついてなかなか動かない。最近ずっとこの調子で、三十代独身無職の息子を世話している気分だ。
正確に言えば無職ではなくて、しっかりお金も稼いできてくれるけど、それはもちろん私も同じで、汚れた服を洗ったりするのは全部私に丸投げだ。
というわけで、少しだけでも手伝ってもらわないと私が過労死する。いや、過労死は言い過ぎかもしれないが、それを差し引いても毎日が無気力な感じになりかねない。
◇◇◇
「はぁ……何で私が……」
「買い物も最近私ばっかり行ってるじゃん。少しは手伝ってもらわないと」
「まぁ、ね……食事は屋台で食べればいいし、今日もまた消耗する日用品を買いに行くんでしょ」
そう言って、フィリアちゃんは露骨に嫌そうな顔をする。なぜそんなに外に出たくないのか分からない。
日用品と言っても幅が広く、タオルや衣服、あとは毎日もちろん水は飲まなくてはならないので、飲料水を買いに行ったり……飲料水は、川の水をそのまま飲むのは色々と怖いので、数少ない井戸から水を汲み上げて、それを売ってるような方式なのだが、数少ない、と言っている通り、みんな揃って井戸に水を汲みに行こうとすれば、大混雑になるのは目に見えていた。
だからこそ、仲介役として誰かが一気に水を汲んで、それを小分けにして色んなところに売るのだ。そうすれば、一箇所に人が集中して混雑することはない。なにせ色々な場所で売っているのだから、どこかに人が居ても。もう一箇所に行けばいいだけの話だ。
今になってそれらを買いに行っているのは、ただ単にお金が貯まるのを待っていただけだ。
「これくらいなら一人でも行けるんじゃ……」
「あーあー、聞こえない!とにかく運動してって話だよっ!」
まずはこのぐうたら気質をどうにかしないといけないらしい。この過酷な世界でどうすれば庶民にそんな気質が身につくのかすごく気になるが、人の心は考えていても分かるものじゃないので、とりあえず考えるのはやめておく。
「じゃあパパっと終わらせちゃおうか。終われば帰れるんでしょう!」
◇◇◇
とある雑貨屋の中で、私はリーブルさんに尋ねた。
「リーブルさんは戦争に行ったことがあるの?」
「え?どうしていきなり?」
「この町、この間徴兵があったみたいだから」
図書館で仕事をしている時、先にいた司書のお姉さんに聞いた話で、この万獣帝国の国境線に近い町は、ついこの間に徴兵が行われたらしい。
河を降ったと言っても、大して離れちゃいないだろう。あの村だって東側だろう。
「まあ、あったよ。私が1歳とかの頃だけど。まあ1歳だから、当然行ったことないけど」
「ふーん、お父さんとかお母さんは?」
「10歳未満の子供がいる親は、行かなくていいことになっているのよ。だから両親も行っていないよ。まあ、どちらも3年後くらいに病気で死んじゃったけど」
病気……そう言えば、これまで病気に危機感を持ったことってあんまりなかった気がする。なぜだか知らんがなんとかなると考えていたようだ。
「どんな病気?」
「そりゃ、体中にブツブツができて、それがどんどん酷くなっていって、熱も凄く出て大変なことになるの!」
なるほど、私は記憶の中からその病気を探す。最近になると、一つの知識から付随する知識を同時に引き出せるようになったので、知識量はかなり増えているはずだ。
「……天然痘……じゃないかな?」
「テンネントウ?なにそれ」
「いや……それが思い浮かんだからつい」
私は記憶の中から引っ張り出した天然痘という言葉に疑問を覚えた。
今更ですが、この先の展開が、未だに定まっていないので、一旦こちらは休載させていただきます。また時が来たら再開する予定です。




