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EP19 本の虫

「じゃあ、フィリアちゃん。宿を見つけに……あれ?」


「……図書館司書」


私は、求人広告の一つを見つめて呟いた。さっきの腕がなさそうな人の話はいつの間にかどうでも良くなってきた。


「天職だ」


「あぁ……まぁそうね」


リーブルさんはそう笑って、私の肩をもった。


「司書になれれば、図書館の本が読み放題じゃないですか」


「確かにそうだけど、図書館という設備自体本を読み放題にするためにあるんだけどね」


私は、宿探しをすっぽかして、この村の図書館に向かった。


お金の全てはリーブルさんが持っているのだ。手続きも彼女がしてくれるだろう。


「ちょっと待ってぇ!今から行くの!?」


「え、まだ夕方じゃないですか」


「逆に夕方だから先に宿を見つけないと!野宿になるよ!」


「お金はリーブルさんが全部持っているじゃないですか。適当に二人部屋探してください」


「むぅぅぅ……」


一応リーブルさんは私より年上なのだが、子供のように不貞腐れて、私の手を掴んでズルズル引きずった。


「ちょっ……」


「さっさと行くよー」


「させるか」


「ぎゃあぁぁぁ!?電撃!?こんなしょうもないことでスキルを使わないでよ!」


私は全力ダッシュで図書館まで向かう。まぁ、この仕事を申し込んでちょこっと本を読んでくるだけだ。すぐに終わる……と思いたい。


◇◇◇




「じゃあ、明日からお願いしますね」


「はーい」


この仕事の採用面接は、かなりあっさりと終了した。これでお金稼ぎの目処がたった。


「毎日お金くれるんですよね」


「そうだね。働いた時間分だけ」


司書の仕事は蔵書の管理や貸し出し手続きを行ったりするらしい。つまり、普段なら素通りしてしまうような場所にある本も、私の目に触れやすくなるため、広く見識を得ることができるようになる。


(思わぬところから記憶に繋がった知識が出てくるかもしれないし、効率が良くなりそう)


私は、そう考えながら近くにあった論説文を手にとる。


今更だが、私はこれまでに文字を習ったことがないのに、何故か文字を読むことができる。


『賢者の記憶』の効果だろうか。文字に関する最低限の知識は無意識に残っているらしい。


「あなたは本が好きなの?随分と難しそうな本を抱えてるけど」


「はい、そうですかね」


司書の人がそう聞いてきた。


「そうなのね。本って、やっぱり堅苦しいイメージがあるからか、あまりあなたみたいな人はいないのよね」


「へぇ、学校があるくらいなのに?」


「来るには来るわ。だけどわざわざその年で、司書の仕事をしたいって人はいないのよ」


私は、それは結構当たり前だと思った。多分他の人から見れば司書の仕事なんて、退屈以外の何でも無いのだ。


まぁ、私みたいな本の虫を除けばの話だが。


だけど、私の知識欲は最近からのものだ。スキルのことに気が付かなければ、私は多分こんなに本を読んではいない。


半分義務みたいなものだ。自分で決めた自分だけの義務、そういうのを習慣っていうんだろうけど。


「じゃあ、これを借ります」


「はい、期限は一週間ね」


期限と聞いて、私はハッとした。まあ簡単な話、あの村で借りてきた本の返却を忘れていたことを思い出した。


今から返しに行こうとなると、今度は河を遡らなくてはならない。


河を遡るのは、下るのより難しいのはほぼ当たり前のことだ。


「いたー!!早く帰るよ!宿とれたから!」


リーブルさんの声が響く。私は踵を返して、図書館をあとにする。

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