EP17(phaseⅠ lost memory最終話)平穏を目指して
「いける?」
「うん、大丈夫……」
私たちは、完成させた舟を、河の上にそっと浮かべる。
幸い、河の流れはそんなに早くないので、乗り込むだけの隙はありそうだ。
「……ゆっくり、ゆっくり……よっと」
「安定してるねぇ。これなら二人とも乗れそう!」
私たちは、二人でオールを持って舟を漕ぎ、先の見えない長い河を直進する。
河の水が、船底と側面にあたり、ザブザブと音をたてる。
「この辺はまだ楽ですね」
「私も下流のことは分からないけどね。獲った魚も、干しておいたから、しばらくは保存もきくよ」
リーブルさんは持ってきたカバンから、昨日一日中干し続けた干物の魚を取り出した。
下流の都市はどこのあたりにあるかはわからない。だが、そこそこの数を持っていたので、多少長くても問題ないだろう。
「……リーブルさんは、これからどうしたいんですか?」
「……わかんない、行くあてもないし、目的もない。私はずっとあそこで過ごしていくつもりだったから、心の準備もまだできていないよ」
リーブルさんは、そう言って水面を見た。私だって、まだ心の準備は整っていない。もっと言えば、ついこないだまでどこかの街で、リナと暮らしていたはずなのだ。最近はずっと展開がジェットコースターだ。ジェットコースターがなんだかは知らないが。
「私は、どこかで平穏に暮らしたいんです。誰かに邪魔されることもない平凡な日常を」
「……うん、私も」
だけど、私にはそれがとんでもなく難しいことは、薄々と分かっていた。
知らない誰かの定めた運命、的なものから逃れられる手段さえあれば、私はきっとどこかで一人の村娘として過ごせるはずなのだ。
だけど、私にはそんな手段はない。誰かが考えたシナリオに背いたら、どうなるかはもう身をもって知っている。
「……でも、私にはそれは出来ません」
「何で?別にあなたは一人じゃない。あなたにできなくても、私がいれば、一緒に出来るかもしれないじゃん」
だけど、話しても理解してもらえるかはわからない。だって、これは私にしかわからない、私を縛る何かの話なのだ。話しても妄想と言って突っぱねられる未来しか見えない。
「フィリアちゃんが考えてること当ててあげる。私には信じてもらえないって思ってるんでしょ」
「……何で、わかるんですか」
「だってさ、言っていたじゃん。知らないはずなのに知っていることがあるって。そんなこと、私だって経験したことあるもん。だけど、やっぱり自分にしかわからないから言いにくいのかなぁって」
「信じられるんですか?」
「うん、それだけなら、多分」
曖昧な返事だけど、私は少し安心した。
「じゃあ、ずっとついてきてくれるんですか?」
「フィリアちゃんがいいなら、もちろん!」
リーブルさんはそう言って笑った。私は、再びオールを漕いで、河を進んだ。
これが、私の記憶を取り戻す、長い旅の始まりだ!
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この作品は結構見切り発車な感じなので、甘めに見てくださいお願いします。
同時並行で投稿している作品があるので、そちらも読んで見てもらえるだけでもいいので、よろしくおねがいします。
設定はこっちの方がしっかりしている……と思います。




