EP16 河岸の二人
「今日は助けてくれて、ありがとう」
「大丈夫です」
真っ暗な夜の闇の中、私たちは焚き火を焚いて夜を待っていた。
彼らは、一度逃げた人を、しつこく追いかけ回すようなことはしないらしい。殺そうとしてくるとは言っても、あくまで強制ではないからだ。
「……私は、また住処を失ったのかー……」
「私も今日から放浪生活だよ~……タイミングが悪すぎるし……」
村人たちは、皆バラバラに逃げたので、生きていたとしても合流は難しいだろう。
ただ、あくまでそれは陸上での話だ。河の上ならもしかしたら合流できるかもしれない。
「もしかしたら、河を下っていく人たちと合流できるかもしれないし、ここで待ちましょう」
「そうだね、もう、今日は疲れたし……」
落ち葉などを集めて、多少寝やすくした地面に転がって、私とリーブルさんは空を見た。
満点の星空だ。
「……星って、一体何なんでしょうね」
「わからない、だけど、いつかはそれもわかる日が来るんじゃないかな」
私の前世の記憶に、今のところ星に関する記憶はない。
きっと、時が進んで、私の記憶がもとに戻っていけば、きっと私は何かを知っているはずだ。
私が今生きているのは、名前も知らない誰かさんがくれたスキルのおかげだ。
なら、私はそれを最大限に活かす。私が何者で、この世界で私はどのように生きていけばいいのか、きっと、わかる。
「……教えてね、もう一人の私」
◇◇◇
小鳥のさえずりが聞こえる。ここはすっかり朝になっていた。
河のせせらぎも耳に入って、昨日の緊張感が、まるで一時の悪夢だったかのように思えてきた。
「……さて、と」
私は、昨日近くに置いておいた丸太に、石を削って作ったナイフを突きつけて、側面をガリガリ削り始める。
お察しの通り、これは二人でこの河を下るための舟だ。
昨日も二人がかりで削っていたので、多少は削られているが、まだまだ先は長そうだ。
「丸木舟は、縄文時代の人も使っていた、シンプルな舟だからね、スキルも使いながらうまい具合に削っていけば……」
「ん……おはよう……早いね」
しばらくしてから、リーブルさんも目を覚ました。
「というか、昨日の夜から何も食べてないし、何かを食べようよ」
「何かって……何をですか?」
この河ならば、魚も探せばいるだろうが、漁師でもない私たちが魚を獲れるかと言われると、できなくはない程度に収まりそうだ。
「魚は頑張って獲ってみましょうか……」
「じゃあ、私がこっちを彫ってるよ」
だけど、この河も見た目よりかなり深い。食用の魚がいるかすらもわからない。
「……見えた!スキル!」
私は、『電撃』を使って広範囲に電流を流し、跳ね上がってきた魚を手で掴んだ。
我ながらナイスプレーだったと思う。とりあえず二匹は獲れたので、焚き火で焼いて食べることにする。
「これって、食べられますか?」
「まぁ、焼けばイケるんじゃない?」
◇◇◇
さっきの魚を食べ終わって、また二人で作業をした。舟の船体はもちろん、オールも手作りした。
そして、
「完成!」
「やぁっと出来たぁ!これで明日は河を下ればいいんですかね」
「そうだね~!でも……私はもう疲れたから、寝ます……」
そう言って、リーブルさんは落ち葉ベッドの上に寝っ転がって、まだ夕暮れ時なのに、いびきをたてて寝てしまった。
「私も寝るかぁ……明日は大変になりそうだし」




