EP15 救出と脱出
「はっ、はっ……死ぬ、殺されるっ……!」
私は、森の小道を全力で走っていた。鬱蒼とした木々の根に引っかからないように注意しながら、それでいて止まらないようにずっと走り続けていた。
後ろから迫るのは、黒フードの謎の者、男か女か、人かどうかもわからない。
「ごめんっ!フィリアちゃん!……私じゃ助けられない……」
即死スキルは、一発でももらってしまえば、無力化するなら完全に絶命するまでの僅かな時間で、その傷口を塞ぐ必要がある。
回復系統のスキルを使ってだが、もちろん私はそんな物持っていない。
つまり、私にはなすすべなし、ただ自分が死なないように逃げるしかないということだ。
(……あっ……)
足に何かが突っかかるような感覚がした。
次の瞬間、私の体は思いっきり地面に叩きつけられ、その衝撃のせいか、恐怖からか、しばらく立ち上がることもできなかった。
「やめて……もう……」
「!!!??」
私の首筋にまで迫っていた、ギラギラと禍々しく輝いていた鎌は、私の首を飛ばす、その直前で刃が半分ほどどこかに飛んだ。
そして、それは私の向こう側に飛んでいって、地面に突き刺さった。
「さてと、生きていたからいいものを……一回私の命を奪ったんだ、落とし前はつけてもらうよ」
◇◇◇
「んぁ……って、さっき私死んでなかった!?」
私は、森の小道のど真ん中で目を覚ました。死んでから生き返るのだから、もっと不思議な感覚なのかと思ったが、普通に眠りから覚めるような感覚だ。
私の傷口は塞がっているが、私の血と思わしき赤い液体は、その場にぶちまけられたままだ。
「今のが『デスキャンセル』……絶対なにかの代償があるよね、これ」
今の所何かを失ったような感覚はない。見えないところの何かを失っているかも知れないが、結局わからないものを失っても、その程度のことだった訳なのだ。
「……足跡がある、向こうに逃げたね。早くしないと」
私は、木の根に引っかからないように注意しながら走る。全力で逃げたのだろう、乱雑な足跡が地面に残されている。
「見えた、まだ結構近かったね」
目の前に居たのは、今まさに振り下ろされそうな大鎌を持ったフードの人と、少しだけ見えるリーブルさんの姿だ。
私は狙いを大鎌の先端に絞り、そして唱える。
「スキル発動・『空撃』」
ぼん、と私の指先の空気が爆ぜ、直線状にあった大鎌の先端は、甲高い音を立てて弾けた。
「よし、成功」
始めて使ったときは、制御できずに大惨事になったが、今ならこの程度の制御はお手の物だ。
「さてと、生きていたからいいものを……一回私の命を奪ったんだ、落とし前はつけてもらうよ」
私がそう言うと、フードの人は、こちらに振り返った。
「ずっと黙っているとわからないんだけど、名前くらい聞いてもいいかな?」
「……亥、徐亥だ」
名前は、ジョカイ、というらしい。なかなか独特な名前だが、もしかして、遠くのどこかが出身地なのだろうか?
だけど、相手の素性が何であろうと、私のやることは変わらない。
「スキル発動・『電撃』」
私は、手のひらの中で発動した電撃を、そのままジョカイに向けて放った。
「っ!!」
あちらも、とっさに防御スキルを使ったようだが、こちらのほうがスキル熟練度は高かった。
そのまま電撃は防壁を貫通し、ジョカイの体に命中した。
「フィリアちゃん……」
「痺れて動けない間に逃げましょう。即死スキル相手にまともに戦っても無駄です」
私はリーブルさんの手を取って、森の小道を再び直進した。
先に進むに連れて、どんどん獣道のようになっていき、もはや道と言えなくなる場所まで進んでいった。
まっすぐ、まっすぐ、進んだ先には……
「河だ……」
ゆっくりと流れ続ける、森の中の大きな河、私達は逃げ切ることができたのだ。
「はあ、はあ……フィリアちゃん……ここからどうするの?」
「……わからないです。とりあえず、船を作って河を下りましょう。電撃はかなり強く加えたので、小一時間は追撃もできないでしょう」
村に流れ着いて数日、私はまた、住処を失った。次の目的地はこの河の下流だ。




