EP14 死神の鎌
この村は広かった。全力で走っても、そう簡単には端っこにたどり着かせてはくれない。
さっきの話を聞いて、今日覚えた『悪意感知』のスキルを用いて、相手の気配を探る。
「後ろからビンビンキテる……敵意はないけど、殺意はある……本当に正しいことだと思って行動しているってことなんだ」
足が吊りそうになりながらも、なんとかあぜ道を走り続け、細い森の中の小道にたどり着いた。
「……他の人は……」
「みんな散り散りに逃げたよ。一つの場所に集まっていたら、みんなまとめて即死スキルの餌食になっちゃうから」
この細道に逃げてきたのも私達だけらしい。いや、もっと先に逃げている人が居るかも知れないが、少なくともここからはもう見渡せないので、追いかけるだけ無駄だろう。
「……もしかして、もう村には戻れない?」
「……彼らが居る限りは、戻るのは危険すぎる……だから、どこか別の場所に、遠くに逃げないと」
後方の悪意感知は、まだ反応したままだ。殺意を持って近づいてくるやつが居ることはほぼ確実、
そして瞬きにも満たない時間で、その悪意を持った敵の気配は、一気にこちらに近づいてきた。
推定距離・5m
「ッッ!!?」
次の瞬間、目の前に現れたのは赤い何かが先端に着いた、金属光沢を放つ、鋭い刃だった。
その刃は、剣のようなものではなかった。大きな柄に、片刃のそれが固定されていて、形は正しく、死神の大鎌のような形をしていた。
そしてそれを持つのは、黒いフードを被った何者か。当の私は、リーブルさんと自分の身を守ろうと、その大鎌を、生身の手のひらで受け止めていた。
「いったい……でも危なかったー……あれ、なにこれ……
からだが……?」
呼吸が止まった。自分の心拍の音もどんどん遠のいてゆく。
ああ、そういえば言っていたな。
死解教団が扱うスキル、『死神』。
スキル効果を付与した武器で、ダメージを加えた相手を確実に絶命させる。解放度によって死ぬまでのタイムリミットが変わり、解放率が10%ならば、完全な絶命まで一分、100%になれば攻撃を加えてから5秒ほどで絶命する。
私は、完全に死んだ。攻撃を食らってから大体30秒後のことだった。
◇◇◇
『人って、死ぬとどうなるんだろうね?』
『さあね、来世があったとして、私達にそれを観測する手段はないよ』
『意外とあったりするんじゃない?前世の記憶を持つ人って、結構居るらしいよ』
誰の声だろう、これは。
片方は私の声、記憶を復元する過程で、何度も聞いた私の声。
もう一人は、わからない。誰と話した言葉だったか、全くわからない。
私がこの記憶を体験できたトリガー、それはおそらく『死』という言葉と、『死』の体験。おおよそ普通の人間であれば体験なんて不可能な、意識の完全に立ち消える直前の現象だ。
私は、『死』を、この体で知った。そして、『死』というものを、私は完全に理解した。
◇◇◇
スキル発動・『デスキャンセル』
記憶の1%を代償に、生命活動を再開。




