龍黒種
「絶対♪〜〜絶好調♪〜〜革命的に~♪」
「♪Hatena~アンテナ〜♪なんでも~♪できる〜♪」
「心の♪〜音色で♪〜〜〜!イチコロさぁあああ!♪〜」
懐かしいな…。あのアニソン。
長い間待って転生したのに。何も出来なかった。
魔法も剣技も冒険だって。
「なんでも〜♪できる〜♪」
自然と涙が溢れてきた。
隠れろと言われたのに。足でまとい…確かにそうだったな。
ローエン爺、あの高さから落ちて無事だっただろうか。
村人はどうしてるだろうか…。
そういや、俺、死んだのかな?
『小僧』
低くくぐもった声が響く。
『小僧、起きたのなら返事をしろ』
「俺は死んだのか?」
『殺してはいない。』
痛む体を、奥歯を噛み締めこらえ、起き上がり、辺りを見渡してみる。
そこはゴツゴツとした黒い岩場に囲まれている。空がやけに近く感じる場所だった。
声の主を探すべく辺りを見渡すが見当たらない。
「誰だ?何処に居るんだ?」
『小僧の下だ』
下を向く…。次の瞬間思いっきり飛びのきたかった。だが、出来なかった。体が痛すぎて。
「お前は、黒龍種か…」
『黒龍種?我はその様な名前では無い』
「違うのか?」
『我の名はクロト』
「黒龍種では無いのか?」
『小僧は、人間と言う名前なのか?』
「違うわ!」
『そうであろう!』
フンっと得意気に鼻を鳴らす。
「黒龍種で名前がクロトで合ってる?」
『否!我は龍黒種なるぞ!』
「龍黒種なのか…。何で、ハーケン村を襲ったんだ?」
『我は襲ってなどいない。』
「いや凄い勢いでタックルされたぞ?」
『その様な事はしておらん』
どういう事だ?村を襲って無いだと?
「襲ったつもりは無いという事か…」
『うむ』
「では、あの雄叫びは?」
『小僧、ワシの話をまず聞いてくれるか?』
「話を聞くぐらいなら…」
どうせ、食われるんだ…。最後に話ぐらい聞いても良いか…。
少し投げやりではあるが、クロトの話を聞くことにした。
『我ら龍黒種は、プレイヤーに従属する為に産まれた。信頼関係を築き助け助けられして生きて居た。名前も貰った。常に一緒だった。その頃は龍黒種の仲間も多く居た。名をつけてくれた者はある日急に我の元に来なくなった。
「クロト?貴方の進化アイテムを探しに行くの!ダンジョンの中で狭いから一緒には行けないから、待ってて?」
『我は進化なぞせずとも良い、我を置いて出かけるな。』
「そんな事言わないで?進化したクロトを見てみたいの!お願いだから待ってて?」
キラキラした瞳でプレイヤーに言われては大人しく待ってるしか出来なかった。
だが、帰って来ることは無かった。』
「今でも待ってるのか?」
プレイヤーはもう居ないのに…。
その言葉は呑み込んだ。
『待って居た長い間ずっとな。そのうちに我は眠りについてしまったのだ。久方ぶりに目を醒ましても、帰って来なかった。だから探しに出た。そのうちに我は悟ったのだプレイヤーも龍黒種も居なくなったと…。星の異変にもな…。プレイヤーだけでなく、魔物以外見なくなった。絶望の闇に沈みそうになった時エメラルドグリーンの森の近くで魔物以外を見つけた。我は懐かしかったのだ。喜びのあまり咆哮し、近くに行こうとしただけだったのだった。矢は飛んでくるは、雷が落ちるは、氷の塊もぶつけられたしな…止めてくれと叫びながら近づいたら…勢い余って小僧を突き飛ばして居た…血を吐いた小僧を見て焦った我は、多くのものを払い飛ばし小僧を連れて飛び去って居た…。我を忘れるとはまさにこの事だな。すまなかった。一眠りしてる間にすごく大きくなっている事に気が付かなかったのだ。』
「…。て事は?俺を食べない?」
『ガハハははは!小僧!どんな冗談だ?我は草や木の実しか食べん!龍黒種の餌なるものが最も美味いがな!』
安堵と共に、一気に体から力が抜けた。
「所で、黒龍種と龍黒種は、違うのか?」