オープニング
「Hatena星は、神の使いとして精霊族。精霊族の使いとしてエルフ、ドワーフ、獣人。そしてどの種族よりも弱いが数が多い人間。緑豊かな森や山々そこから、絶景と呼ぶに相応しい澄んだ水を怒涛の如く放出する滝。流れる川は清らかで花々は咲き乱れ。下流から繋がる海も碧く輝いていた。どこを切り取っても絶景だった。
そんな景色も沢山のプレイヤーが自由に暮らしていく中で次第に変化していった。
当初は森の獣を狩ったり、作物を作ったり、商いに没頭する者。お城を築く者。多岐に渡り楽しまれて居たのは昔の話。
何時の頃からか、ダンジョンが産まれ、様々なプレイヤーがパーティを組み協力し挑んでいった。やがて協力し合って居た種族達も皆、自分の種族こそが優れていると主張をはじめ。
蔑み争い戦い傷つき。美しかった景色も次第に変化していった。荒廃し海は濁り、豊かだった川も花々も枯れ果てた。
ある日突然、星からプレイヤーが一斉に消えた。
各種族の僅かな【同帰者】をのこして。
そこからは更に地獄と言っても良いだろう。
ダンジョンは放置され溢れ出した魔物が我が物顔で闊歩する。
【同帰者】達は危機感を持ち互いに歩み寄り子孫を細々と残していった。
プレイヤーが居なくなる事で城も街も衰退した。【同帰者】の子孫が戦える者を纏めるも、魔物の勢いご衰えることは無かった。
見かねた神の使いである精霊族の長が、強固な防御魂で城や街を各々覆い星の大地と隔離していった。」
「スヤー…すぴー…」
ドゴンッ!
「ハッ?敵襲か?」
キョロキョロする俺。
「敵襲なもんかバカモンが!」
「何だ…ローエン爺か、人が寝てるのに脅かすなよな」
杖で小突かれた頭を、大袈裟に擦りながら言う。
「座学も大切な事じゃて、何度言わせるんじゃ」
「そんな事言ったってさぁ…つまんないし退屈なんだよ!」
呆れ顔のローエン爺にジト目で見つめられる。
「それより、魔法とか剣技とかもっとワクワクするような事教えてくれよ!」
「なぁにを言うか、職業の啓示もまだの青二才が!」
「そんな事言ったってさぁ、いつまでたっても姿見の聖女見つからないんだろ?」
「まだその時じゃないんじゃろうて。」
「そんな事言わずにさぁ…頼むよ!」
手を合わせて上目遣いにお願いしてみる。
ドゴンッ!
「よさんか!気色悪い!つまらん知恵ばっかりつけおって…こんな事では何時まで経っても……」
やばい始まった!
こうなると小言が長くなる。座学よりも退屈になってしまう。
俺は忍び足でローエン爺と距離をとり…。
今だ!
全速力で走り出す。
ここは俺が産まれた【プレイヤーの寝所】からほど近い所にある、ハーケン村である。イメージとしては最初の村とか、始まりの村とかそんな感じ。
さっき居た、ローエン爺って言うのは俺の家庭教師兼護衛である。
転生して16年。まさか赤ん坊からのやり直しになるとは思って無かったけどな。
魔法も剣技もさっき言った姿見の聖女様にあって啓示の儀式をやらなきゃ使えないらしい。
その聖女様が行方不明って言うんだから笑えない。
まぁ、行方不明って言うのともちょっと違うのか。
長い座学で言ってたように、防御魂で隔離されてるからなのか、他所の城や街に入れないらしい。
俺の産まれた【プレイヤーの寝所】とハーケン村は防御魂が無い。正確には俺が産まれる時に消滅したらしい。
更に驚く事に白い空間に長く居すぎたせいで…プレイヤーが居なくなった後の世界らしい。て事はサービス終了したんだと俺は解釈した。
そういや、不思議な事に俺が産まれて16年ってのはさっきも言ったが、その間この村に魔物は出てないんだよなぁ。
転生してからも色々のんびりで、あの空間での日課の体づくりやら妄想やらは継続中だ。強くなってる実感は皆無なんだけどな。
もちろん、魔法も使おうと念じてみたけど…察しの通り何もなし。
…っと。
考えながら歩いてたら【プレイヤーの寝所】まで来ていた。
大きな虹色の湖の真ん中にエメラルドグリーンの大樹がある。その大樹の根元に神事の台座があり、その上に鏡が有るのだが、虹色の輝きを放っているだけで何も映らない。
「姿見の聖女
が居ないとやっぱりダメか…。」
独りごちる。
グルぉぉおおおお!!!
静寂を破るような、雄叫びが響き渡った。
ビリビリと空気を揺らし、湖面は波打ち木々はざわめきはじめたのだった。
【読者の皆さまへ】
この小説を読んで
「面白い!」
「続きが気になる!」
と思われたら、↓の☆☆☆☆☆ボタンを★★★★★に変えて応援していただけますと嬉しいです!
よろしくお願いします!