俺は知らない
「君は、プレイヤーについてどう思う?」
そう問われた俺の口の中はカラカラに渇いていた。
何故なら俺は、
種族 プレイヤー だからだ。
「どう、とは?」
そう絞り出したけれど、問の答えにはなっていない事は明白である。
目を細め獲物を狩るかの様な鋭い視線を放ってくるシリアス王子にたじろいだ。
「先程の報告の時にも言ったが、黒龍種やダンジョンのボスはプレイヤーにしか、討伐出来ない。コレは理解してくれてるね?」
「はい。」
「では、何故、今回、黒龍種を討伐する事ができたのか?それについてはどう考える?」
「それは…。」
口篭る。
俺の種族について…いや、俺がプレイヤーだと言うことを、話しても良いのか…?
「ミュラーのような【同帰者】についても、君は心当たりが有るんじゃないか?」
「……。」
「沈黙は、肯定ととらえるよ?構わないね?」
「俺…、私は何も分かりません!理解してないのです!」
「知らない?理解していないとはどう言う事だ?」
困惑しているのか、俺から視線を逸らし、顎に手をやり考え始めた。
俺はカラカラの喉を潤すため、少し冷めた紅茶を一口飲み込んだ。
「ミュラーのような記憶保持…いや、不老不死ではないのか?だが、【同帰者】だと言っていたはず。」
次第に眉間のシワが濃くなり、眼光は鋭さをます。
「本当に俺は何も知らないんです…。」
すいません…と、頭を下げる。
………。
「ぷ…クククッ…失礼。アハハッ…。」
「?」
笑われるような事をしているつもりは無いんだが…。
肩を揺らして笑っている。堪えようとすればするほどに込み上げて来るようだ。
困惑を隠す事もせず、笑う様を凝視したのだった。
ひとしきり笑い、喉が渇いたのか紅茶を煽り、空になると自らカップに注ぐ。それが終わり落ち着くと、座り直したのだった。
「君を試す様な事をして、申し訳ない。ミュラーから先程話を聞いたから、全部知ってるんだ。」
気を悪くしないでくれ。と、そう言いながら苦笑する。
「全部と、おっしゃいますと?」
「君のステータスについてだね。ああ、その事についてミュラーを責めないでやってくれ。俺に話したのもその方が良いと判断したからだろう。」
「そうですか…。」
「ああ、それで何だが、君はこの世界についてどれくらい知ってる?」
「ほとんど何も知らないと、思います。」
成程納得と言うように、頷いている。
何の納得なのか気にならなくは無いが…。知っている事が有るなら教えて欲しいと素直にそう思った。
「では、まず、前提として言うけど…。俺やミルフィール、バスティアーノは、この世界が元々ゲームと呼ばれる物だと言うことを理解している。つまり、俺たちは作られた存在だと言うことも。」
淡々と語るその声は抑揚がなく、落ち着いていた。
「最初は多分意思なんて無かったんだと思う。この城を創った誰かの、思い通りに動く完璧な王子様として。「ご苦労であった」「大儀であった」とか…「ダンジョンへ派遣せよ」だとか、決められた台詞を話すだけ。そこには考える事だったり…そう、俺の意思は無かったんだよ。そうして、ある日を境に急にプレイヤーが消えたんだ。初めは戸惑ったよ?考える事もなく、自分の言葉で話す必要も無かったのだから…当然だよね。」
長くなるから、楽にしてよ。と、シリアス王子も姿勢を寛いだものへと変える。
【同帰者】頼みで、魔獣を凌いで居たが、プレイヤーが居なくなる前に、各地で勃発していた、種族間争いの爪痕で荒廃している大地や枯渇する水問題だらけだったんだ。
そんな時、魔族の王に力を借りに行ったんだ。
長くプレイヤー達が魔族を虐げていた過去もあってか、話し合いに赴いたつもりが、侵略に来たと勘違いされ、攻撃を受けたんだ。
そうなれば、こちら側も反撃するしかなくなってさ…。結果として、ミュラーとの婚約をもって、魔族との争い事態は終息したんだよね。
そうして、魔族の王は残された魔族と共に大陸の端に去り、残った我々は、防御魂に守られる事になった。
精霊の長が防御魂で覆ったと言われているが、其れは間違えで、魔族の王が、ミュラーの為に創ったんだ。
彼女が【同帰者】だと、知っていたんだと思う。
それからは、溢れる魔獣との戦いは無くなった。倒せないボスを倒す為にダンジョンへ挑む必要もね。
けれど、俺たち創られた魂は、防御魂の中でずっと繰り返されるんだ。
かつてプレイヤー達が降り立つ切っ掛けとなる、君も経験しただろう?姿見の聖女による啓示の儀式だよ。
その日をずっと繰り返すんだ。何年も。世界中から啓示の儀式を受けに来た、【同帰者】の子孫達をも防御魂の中に閉じ込めてね。
それでも、誰も気が付かないんだ…。
同じ日の繰り返しを。
俺は最初からずっと、気が付いていた、いや忘れられないように仕向けられていたと言っても良いのかもしれない。ミュラーも俺と同様に忘れられないようになっていた。
そんな時、何時もと違う行動をしてみようと、与えられた役割とは違う行動をしたんだ。
バスティアーノに執拗に話しかけ、日々に少しの変化をもたらすように。そのうちにバスティアーノも繰り返しに気が付いたんだ。歓喜した瞬間だった。
その事をミュラーに話したら、彼女も泣いて喜んだんだ。婚約していた俺たちだったが、同じ悩みを持つ友人か、兄妹かと言うような感情でしか無かった。何より彼女は防御魂から出たがっていたしね。
そこからの彼女は、「妾も、頑張りますわ!」と、謎の頑張りで、彼女の侍女であった、ミルフィールにも繰り返しの中に生きていると、認識させることに成功したんだ。
繰り返しを認識した我々だが、プレイヤー無き今、魔獣の事もあって、防御魂をどうこうする事は出来なかった。
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