ペアルック
【初心者の試練】を攻略し、ユニコーンのパトリシアと出会い、ラブリーハーツ城へと帰って来たのは先程の事。
その足ですぐ様、シリアス王子にダンジョン内部の報告へと向かったのだった。
「早速本題に入るわね?【初心者の試練】だけど、最下層の黒龍種は討伐したわ!」
これには驚いたらしく、シリアス王子は席を半ば立ち、身を乗り出してミュラーの話を聞いていた。
「黒龍種を討伐って…。いや、初心者ダンジョンに住んでる事がそもそもの異常か…。」
座り直し頭を抱える。
「ええ、そうね」
「プレイヤーが去って後、黒龍種は勿論ダンジョンのボスとされる大物の討伐を成し得る事は無かった筈だ。」
「そうね?」
「ボスの討伐が出来ないからダンジョンへ向かう者も居なくなり、自分達の住んでる所が安全であれば、その他の地域を気にする者も…」
「ええ、居なくなったわね。」
「防御魂が出来る前から、更にはプレイヤーが居た頃から既に、他種族同士の関係も希薄になっていたのも理由か…。」
暫し腕を組み熟考する。そんな仕草ですらイケメンは違うんだから、羨ましい限りだ。
思わずジト目になって、シリアス王子を見やる。
そんな俺と目があった王子、前回同様に俺の事を上から下までジックリ観察する。
「後で、風呂に入ると良い。」
綺麗好き…なんだろうか?
「とりあえず、黒龍種討伐にダンジョンの報告も感謝する。」
そう言うとシリアス王子は席を立った。
「ミュラー、君は一緒に来てくれ。話がある。」
「わかったわ。」
そう言うと、二人連れ立って部屋を後にした。
二人きりで話とかなんだよ。だいたいミルフィール様はどうしたんだよ。とか、モヤモヤしたのだった。
◆
「今回は、御自分で入れますね?大丈夫ですね?」
勢いよく頭を振る。
「では、着替えだけ御用意しておきます。」
察しの通り、俺は今、浴室に来ている。
今回はネルソン夫人の手を煩わせることなく、1人で入浴中だ。
ダンジョン内では気が付かなかった、小さな傷が痛んだが、久しぶりの入浴は、体の芯から温まる。
湯船に浸かると、ホッと溜め息が漏れる。
そう言えば、訓練所はどうなったんだろう?
ダンジョンへと旅立つ前は未だ修復中だったんだよな。
入浴が終わったら、一度見に行ってみるか。
一度思いつくと、善は急げと言わんばかりに、サッサと風呂から出て、ネルソン夫人が支度してくれた、服に袖を通す。
今回は、深紅のコートだ。一言断っておくが、直にコートでは無いぞ?
海賊の船長を彷彿とさせるデザインである。とても軽く動きやすい。
やはり値段は気になるが…。
考えないようにして、ネルソン夫人に礼を言うと、訓練所へと足を向けた。
訓練所に着くと、前に設備の説明をしてくれた彼が居たのですんなりと、内部へと通してくれた。
「今回は壊さないでくださいね?大掛かりな魔法は禁止ですよ?」
キツく言われたのだった。
訓練所内部へ入る。
中央にある筈の大穴からは湯気が立ちこめ、ほんのり硫黄の香りが漂って、中にはお湯が満ち溢れていた。
温泉?そんな言葉が頭を掠めた。
先程の彼に事の詳細を聞くと、穴が大き過ぎて、埋めるにしても無理があったため、降下訓練や浮遊訓練に利用するか…とか議会で話し合っていた間に、最初は少量だったが、そのうち大量の湯が湧き出て今に至る。
因みに温泉として利用するには深すぎるらしい。それでも何かに利用したい議会の面々は、温泉水(仮)の成分について詳しく分析している。
何だか、申し訳ないです。
気掛かりだった、訓練所の現状を把握する事ができたので、離宮に戻る事にした。
そんな俺に近づいてくる人影があった。
バスティアーノ宰相だった。
「シャイン様、シリアス殿下が、お話があるとお待ちです。一緒に来て頂けますかな?」
断る理由もなく、俺はバスティアーノ宰相の後に続いた。
案内された先はシリアス王子の個人に充てられた応接室のようだ。
ミュラーも居るのかと思っていたのだが、どうやらシリアス王子一人らしい。
王子は一人がけ用のソファーに座り俺が来るのを待っていたようだった。
俺にも着席するようにと、促されたので、言われるままに腰をおろした。
暫しの沈黙が訪れる。
何の教養も知識も無く。平民平凡そのものの俺は、そもそもなんで一対一で呼ばれたのかも分からず。
視線が泳ぐ。
ソファーがフカフカだなとか、壁の時計が高級そうだとか、暖炉があったり、出された紅茶は飲んだ方が良いのかとか考えていた。
一分が十分に感じる長さである。
不意にシリアス王子の服装が気になった。
俺が色は濃紺だが、デザインは今着ている服と同じ…?
傍から見るとペアルックかっ!
っと、突っ込みが入りそうなぐらい酷似している。
そりゃそうか、ネルソン夫人が支度してくるたのだから、お城の服だよな…。
だが、王子とおそろいとか、恐れ多すぎて…。思わず身震いしてしまう。
それにしても、綺麗な金髪だよな…緩くウェーブしていて、襟足が方にかかる程度に伸ばされている。
男性にしては細い方だと思うが、ナヨナヨした感じは無いな。童話の中の王子様…だよな。一人納得する。
フゥーッ。と長く息を吐き出し、シリアス王子が話し始めた。
「まずは、呼び付けてすまなかった。」
「いえいえ、とんでもない事でございます?」
少し声が裏返った。更に言い回しも変だよな…。
「そう言って貰えると助かるよ。」
と、苦笑する。
「単刀直入に問うが、君はプレイヤーについてどう思う?」
【読者の皆さまへ】
この小説を読んで
「面白い!」
「続きが気になる!」
と思われたら、↓の☆☆☆☆☆ボタンを★★★★★に変えて応援していただけますと嬉しいです!
よろしくお願いします!




