寄り道
「そう言えば、メダ川に水が戻ったならユニコーンが、見られるかもしれないわね?」
ミュラーのその一言から、ユニコーンを一目見ようと、寄り道が決行される事になった。
ユニコーンは綺麗な水と、身も心も清らかな乙女の前に姿を現すという。
身も心も清らかだと、自負するミュラーは絶対現れると信じている。
俺からすれば眉唾ものだ。
他の仲間も半呆れ気味ではあるが、堅苦しい事より楽しい事が好きな獣人族なので止める者もいない。
ティアが居れば別だったかもしれないが。
彼女達は無事に故郷に着いただろうか?
数日前に別れた仲間に思いを馳せる。
バシャッ!バシャバシャ!
水の戻った川が嬉しいのか水辺ではしゃぐ、ロイとキャロ。
黒龍種との戦いとの落差で、より一層楽しげに見える。
不意に隣にレイがきた。
「雷魔法。見事だった。その後の歌も中々だったぞ。」
ニコリともせずに褒めるレイ。コレが彼の通常運転だ。
「なに?歌?聴いていたのか?」
頭を掻きむしり、狼狽える俺。
「あぁ、洞窟に反響してとてもよく聴こえた。俺にも、あの歌を是非とも伝授してもらいたいものだ。」
反響していた事もだか、至極真面目に言われると…冗談かそうじゃないかの判断も難しい。
「いや、あの…あの歌は…ゴニョニョ…。」
「無理にとは言わないが、時間があったらよろく頼む。」
ついには頭まで下げられて、俺は涙目になりながら話を濁したのだった。
「ああ!そう言えば、レイの剣技はとても見事だったな!」
強引に話題を変えようと試みる。
「ああ、魔獣を前に双剣を構えるだろ?そうすると、体が勝手に動くんだ。双剣マスターの成せる技なのかは分からないが。」
「鍛錬や訓練も無しにか?」
それには首を振った。
「いや、基本的な形や戦術的な事は父から兄弟皆教わってる。素振りは今も毎日やってるしな。」
「成程、職業スキルだけでは無いんだな。」
「一朝一夕で出来るなら、苦労は無いさ。」
さも当たり前だと言わんばかりだ。
「踏み込む足ひとつとっても、間合いが大切だったり、攻撃対象と離れすぎても近づきすぎてもダメだと言われたな。相手の動きにも注意を払って、なるべく相手の土俵には立たない事。
要は怪我するなと。最終的には生きて帰るのが大切だと。」
遠い目をする先には父親とのやり取りを思い出しているのだろう。
「ユニコーン、見つけたかしら?」
ミュラーがやってきた。
探してすら無かった、俺とレイは肩を竦める。
「真面目にやってよね?」
こうしてみると、ミュラーも年相応に見える。
膨れっ面のミュラーを眺めながらも、レイは冷静だった。
「乙女の前にしか姿を現さないのでは?」
「あ、それは俺も思ってた!」
「そんな事ないはずよ!良いから探してね?」
会った当初よりコロコロと表情を変える様は、綺麗と言うより可愛と思う。
男の性なのか、可愛くお願いされたら断れる訳もなく…。
俺は勿論、レイまでもユニコーンを探し始めたのだった。
想像してみる。
ユニコーン…俺の中なイメージでは、真っ白な体躯に角が1本生えてるんだよな?鬣もきっと白だろう。
水色の目がキラキラしていて…。
そうまさに今目の前にいる。
ん?目の前に…。
「居たーーー!」
咄嗟に大きな声をあげる俺。
「まぁ、失礼ね!」
喋った…。
「あら?よく見たら中々の♂じゃない?アタシが遊んであげても良いわ?」
ユニコーンってこんなタイプなのか?
困惑気味な俺の元に仲間達が集まってきた。
「まあ?こんなに大勢で!失礼しちゃうわね!」
そう言うユニコーンの声は何処か、低く。性別不明と言えるだろう。
「何て美しいのかしら!」
声を弾ませるミュラー。
外見だけを見れば、全身真っ白で水色の瞳が可愛らしい。美しいと言っても良いだろう。
「ユニコーンちゃん、コッチにおいで〜!」
普段のミュラーからは想像出来ないぐらいの高い声で呼を出し、両手を広げユニコーンが近寄って来るのを待っている。
「ユニコーンちゃんですって?失礼ね、アタシはパトリシアよ?♀に用事は無いんですからね!」
そう言い、鼻息を荒くした。
「そうね?そこの黒い服の坊やと、白い髪が美しい2人になら触らせても良いわ!」
遠慮したい。
「可愛くないわね!ユニコーンは乙女に懐くんでしょ?」
半ギレ状態のミュラー。
「そんな事、誰が決めたのかしらぁ?アタシは♂が良いの!清らかな♂がね!」
言い切るユニコーンの言葉に…。
清らかな♂が何を意味するのかは分からないながらも、恥ずかしく情けなくなった男3人は、団結して、ラブリーハーツ城を目指す事にした。
「俺達はユニコーンと話してない。見てすらいない!」
と、呪文のように繰り返しながら。
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