RPGの勇者ならば!
何度目かの攻防…否攻撃を弾かれ床に倒れる仲間達。
震える仲間。
何時も澄まし顔のレイの口から血が吹き出る。
打ち付けた体を庇うようにうずくまるロイ。
何時も凛として、優しく…いや冷静な言葉をかけてくれるミュラーも倒れ動かない。
トラウマと戦い震えるキャロ。
かすり傷1つ負っていない青い鱗を持つ黒龍種。
全てが余所事のように、ただ立っているだけの俺。
こんな時…RPGの勇者なら、先陣を斬り仲間達を庇うだとか…。
敵の弱点をつく攻撃を繰り出したりとか…。
勇者だけの為に準備された剣だとか、鎧だとか…。
ソレから…必殺技とかもあったりして…。
そう言うの駆使して、物語の主人公になっていくんだ。
ボッチだった俺には持っていない、かけがえのない仲間と共に。
所詮、楽器も使えない吟遊詩人。
いざって時に動けないアリンコ以下のメンタル。
結局、動き出した物語の脇役にすらなれていない俺。
このまま、仲間を置いて逃げる?
いや…逃げきれないよな。俺だし。
暗く沈む思考に静寂が落ちる。
立ち上がり抵抗する仲間を、楽しげに待っている黒龍種。
俺の事は眼中に無いのか、此方に気取られる感じもなかった。
「シャイーーン!!!」
何処にそんな大きな声を出す余力が残っていたのかと言うほどの大きな声が響く。
「しっかりしなさい!!!」
さっきまで動かなくなっていた、ミュラーが声の限り叫んだ。
その叫びに、俺は我に返った。
俺は何をやっていたんだ!
RPGの勇者では無いのは当たり前じゃないか!
脇役にすらなれないのも当たり前だ!
ミュラーの声に弾けるように、魔法を放つ。
《暴風》
まず、風を巻き起こし最大級な竜巻を連想し練り上げる。
《ドラゴンブレス》
竜巻旋風目掛けて炎を最大級に放つ。
炎の嵐を、黒龍種にぶつける。追い討ちとばかりに…
《水洗トイレ》
滝の水とも違う、俺の放つ濁流が黒龍種を呑み込む。
だか、呑み込まれたように見えただけで、黒龍種はビクともしない。
炎の嵐で多少焦げたようにみえたが、ダメージと言える程のこともなかった。
グルぉぉぉぉ!!!
嘶く、黒龍種。効かぬと言わんばかりに高らかな咆哮。
俺は悔しさに唇を噛む。
頭に不意に電気鰻が浮かぶ。水に、電気…。
青い鱗から連想するのは、水属性か氷か色で判断して良いかは賭けになるが…。
だが!水にはだいたい雷だ!!!
想像する。雷雲から発せられる眩い稲光を。ドォーン。バリバリバリバリと走る雷の音を。
体を巡る魔力が放てると、掌に集まったのを感じた。
闇雲に放ったとしても、鱗に阻まれるである事が予想される。
ならば!
「間抜けな!黒龍種!弱虫黒龍種!」
陳腐な悪口で言葉も通じるとは思えないが、黒龍種に暴言を吐きかける。
大きな声に、此方に向かい進み出る黒龍種。
暴言が通じたかは定かでは無いがここまでは、狙い通り。
「悔しかったら、俺を呑み込んでみろよ!!!」
更に挑発する。
その様子に他の仲間は固唾を飲んで見守っている。
馬鹿な俺を信じてくれてるはずだ!
1歩また1歩とジリジリと俺の方に近づいく。
そうして、大きく口を開き俺を丸呑みせんとばかりに突進してきた。
チャンスだ!!!
《超閃大雷》
黒龍種の口目掛けて、撃ち込んだ。
グオオオオオオオオオオ!!!
俺の放った雷は、黒龍種の口から全身へと駆け巡る。
のたうち回る黒龍種によって、ダンジョンが大きく揺れる。
体の内部から雷で焼かれ、所々鱗が剥がれ落ちる。
その時を待っていたと言わんばかりに、レイが起き上がり、剥がれ落ちた鱗の隙間から剣を突き刺す。
何ヶ所も的確に引き抜いては突き刺す。
黒龍種から血飛沫があがり。内部の雷も終息した頃、黒龍種は完全に動きを止めた。
念の為にと、レイは黒龍種の首を切り落とした。
ロイはお宝の山だと喜んだ。
何でも、龍の角や牙、鱗に至るまで武器、鎧、アクセサリーに加工でき、その効果は他の素材を使用した物を圧倒する程だという。
震えていたキャロはミュラーに寄り添っていた。
俺は新たな魔法の手応えに満足していた。
◆
「なぁ、ここの水があったら、メダ川に水と言うか、この辺りの、荒廃した土地も潤うんじゃないのか?」
そう発言したロイに、頷く面々。
「問題はどうやって外に流すかよね?」
上流にダンジョンがあるだろ…上流まで登るのに山道になっていた、とすると?
穴を開ける方角さえ合えば…。
おそらくコッチだよな…。
俺はブツブツ言いながら湖の中に入る。
そうして。
「皆先に戻っててくれ!」
そう言い、皆が戻り始めたのを確認した俺は、湖のメダ川の方向であろう壁に向かった。
《絶対♪〜〜絶好調♪〜〜革命的に~♪
♪Hatena~アンテナ〜♪なんでも~♪できる〜♪
心の♪〜音色で♪〜〜〜!イチコロさぁあああ!♪〜》
アニソンを口ずさむ。
体に力が溢れてきたのを確認した。
訓練所の時と同じく、握る拳か輝いている。
そうして訓練所の時より集まる魔力を増やし……。
ドッカーン!!!
壁目掛けて、拳を叩き込んだのだった。
地鳴りと共に崩壊する壁。風呂の栓を抜いたかのように外へ向かって流れ出る水。
俺はと言うと、アニソンパワーのおかげか、水流に逆らい岸へとあがった。
「また、派手にやったわね?」
先に戻っていると思っていたはずの、ミュラーがそこで笑っていた。
ラブリーハーツ城への帰り道、メダ川中流付近から溢れ出る水に満足したのは言うまでもない。
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