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頭の片隅に

 悪鬼蜂を魔法で倒し、仲間達によってゴブリンとオークも倒され、再びラブリーハーツ城を目指し歩き始めたのだった。


「魔法、使いこなせるようになったのね?」

「発動条件というか、コツ?が掴めたような気がしたんだ。」

「そうなの?良かったわね!」

「ああ!ありがとう!」


 ミュラーにそう言われると、他の人から言われるより嬉し気がする。やはり聖女である彼女の言葉は特別なのだろう。


「お城に着いたら、()()()()()にお願いして少し練習するのも良いかもしれないわね。」


「あぁ。」


 せっかくのミュラーの提案だったが、()()()()王子の名前が出てくるのは面白くない。


 何時もより無愛想に返事をすると、先を急ぐことにした。


 ◆


 ラブリーハーツ城まで辿り着いたのは、辺りを闇が包む夜遅くになってからだった。

 空腹だった俺達は、昨日も訪れ多大な迷惑をかけた着の身着のまま亭へ身を寄せた。


 逃走劇を繰り広げたのは夢だったのか?


 と、勘違いしてしまうぐらいアッサリと街の中に入る事もできたのには驚きを隠せなかった。


 着の身着のまま亭に着いて、昨日の事を店主に謝罪するが、


「多少の騒ぎぐらい日常茶飯事だ!騒ぎもない酒場など廃れたも同然!!」


 と胸を張られた。

 飲食代については、騒ぎの後に城から派遣された騎士に、俺達が頼んだよりはるかに多く渡されたらしい。


「当然ね!」


 全てを見透かしていたかのように口角をあげていたミュラーには脱帽する。


 今日は、昨日からの疲れもあってか静かな食事となった。


 キャロは城に到着してから、今の今までずっとはしゃぎすぎて、もう眠そうだった。


 今夜は着の身着のまま亭に併設されている、寝るのは朝まで!と言う宿に泊まることになった。


 部屋の数が空いてなかったのか、女性陣だけ個室で、俺達野郎は、蜂の巣状になった、カプセルホテルを連想させる所で寝る事に。


 蜂の巣状の寝床に潜り込むと、催眠術にかかったかのごとく、泥に沈むように眠った。


 あれこれ考えたかったのに…。


 気がついたら朝だった。


 驚くほど疲れがとれていた。


 他の皆も同じだったらしく、妙に顔の色艶が良かった。


 そのまま、着の身着のまま亭で店主自慢の朝食を摂って、その後お城に向かう事になった。


 やはり、店主おすすめサンドウィッチは絶品だった。


 城門に近づいた辺りで、門番と思われる兵士が此方へ寄って来た。


 ミュラーが1歩前に歩み出て、美しいお辞儀をした後。

 兵士へ何かを告げると、慌てて城の中へと通された。


 やはり、コレで良いのか?と言う疑問が頭の片隅に陣取ってしまうのだった。


 そう、ずっとコレで良いのか?と、全てに疑問を持ってしまいそうな程に。

 ご都合主義のなせる技なのか、【()()()】ゆえなのか…。


 兵士の案内に続いて行くと、お城の横の可愛らしい離宮へと案内された。ピンクを基調とした可愛らしい建物。頭に浮かんでくるのは、ミルフィール様の髪の毛である。


 離宮の一室に通された。そこには既にシリアス王子とミルフィール様が着席していた。

 此方にも着席を促されたのだが、少し不安だった俺はミュラーに目を向ける。コチラの視線に気がついたミュラーが口角をあげ、「失礼しますわ。」と座る。他の仲間もミュラーに習い、萎縮しながらも席についた。


「此度はご苦労であった。」


 シリアス王子がそう言い、手で合図を送った。すると、周りに控えていた衛兵や、メイド達が部屋から退室して行った。


 またも出てくるコレで良いのか?王子様なんだろ?

 と、不安にならずにはいられなかった。


「ミュラー!君ならやってくれると信じていたよ!」


 三文芝居ではなく心からの賛辞が、王子の口から発せられる。


「ミュラー様ぁ、ミルの演技はどうでしたか?」


 不安を隠そうともせず表情豊かに質問するミルフィール様は、愛らしい。


「ミルフィール様の演技は完璧ですわ!はなまるです!」


 返事をするミュラーの目も何時もとは違いかなり優しいものだった。


「そうそう、着の身着のまま亭のお支払いの、御礼もしませんとね?」


「いや、アレはミュラーのこれ迄の対価だと思えば安いもんだ。それに防御魂も破壊してくれたんだろう?」


 砕けた口調のシリアス王子は、昨日の三文芝居の時より親しみ安く、地の底まで落ちていた俺からの評価は、爆発的に浮上していくのである。


「ならば、有難く受け取るわ。」


 そう言うと、クシャりと顔を歪めて屈託のない笑顔を見せたミュラー。俺の見たことの無い笑顔だった。


 ミュラーの返事に満足した王子は続いて、俺達へと目を向ける。


「彼が例の?」


 大きく頷いたミュラーが、昨日からこれ迄の事に、俺たちの紹介を添えて掻い摘んで説明していく。


「オリジナルの 【()()()】で、【()()()()()】とは…。」


 それっきり口を噤んだ。


 そして1拍の間があった後再び、此方に目を向けると、上から下まで俺の事を見極めるように眺めている。

 そうして、ベルを鳴らすと、先程のメイド達より高貴オーラを纏った恰幅の良い女性が現れた。


 王子から何やら指示を貰った女性は、おもむろに俺に近づくと、


「此方へおいで下さいませ。」


 と、部屋の外へと誘われた。

 不安になりながらも、彼女の後に続いたのだった。

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