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再会を約束して

 ガロン芋の朝食をとり、皆で村の見回りをする。


 村と言っても廃村なので、崩壊具合の確認と使えそうな家等の調査だ。

 キャロが住んでるとはいえ、たった1人必要最低限の場所のみしか行動していなかったと聞いている。


 石造りの家の裏手には、小さな池がありそこは絶えず湧き水が湧いていて、キャロの生活を助けていたようだ。

 フェンリル兄弟達が住んでいた頃には、大浴場や、小さな商店街もあったという。


 昨夜のミュラーの話から察するに、フェンリル兄弟達は、ラブリーハーツ城に向かったのは儀式当日の早朝だった。


 防御魂のせいだと仮定しても、ミュラーの話だと人生の繰り返しな訳だろ?

 だとしたら、儀式当日の早朝って変だと思うんだよな…。


 あの城から、この村まで悪鬼蜂の襲来があったにせよ…半日ちょっとで辿り着いている。


 キャロが住んでたダンジョンも気になるし、メダ川周辺にも行ってみたい。


 ◆


 一通り村の見回りを終えたのは昼を少し過ぎた頃だった。


 その結果、住んでいた住人だけが忽然と姿を消し、倒壊しかけの家と、古く埃を被った家財道具がボロボロになりながらも残っていた。


 使えそうな家と、使えそうな物を修理するチームに、リイとルイが村に残る事に。

 カンディとティアはこの村の現状を見て、自分の故郷を1度確認してから戻って来ると言っていた。そこに、2人だけでは心配だとライも一緒について行くことになった。


 それから、俺とミュラー、レイにロイはキャロを連れてダンジョン【初心者の試練】の調査に向かう事に。

 魔獣が大量発生している事が気がかりな事に加え、不謹慎ではあるが、ダンジョンに入ってみたいという…好奇心も含まれていたと思う。


 調査を終えたら、この村に帰って来ると再会を約束して、それぞれ旅立ったのだった。


 俺たちは、村を出て、北のラブリーハーツ城へと向かう。【初心者の試練】と言うだけあって、魔獣はそれ程強くないだろうという予想ではあるが、念の為幾つか装備の調達をしてからって事になった。


 急がば回れって言うしね。


 村を出たのが昼過ぎなので、お城に着くのは夜。そこで1泊してからダンジョンへ…これはミュラーの提案である。


 久しぶりに村の外に出たからか、キャロは周りに魔獣が居るかも?と、かなり警戒していたがレイやロイと話す間に、徐々に普段通りになって、出発して1時間ぐらい経過した今は、「逃げて来る時には見られなかった!」と言って、荒廃した大地に点在する自然を堪能しているようだ。


「そういや、昨日の今日でラブリーハーツ城に入っても大丈夫なのか?」


 三文芝居に逃走劇を繰り広げたのは、かなり前のように感じるが昨日だよな?


「それに関しては問題ないわ。」


 ミュラーは自信タップリに微笑んだ。


「シリアス様やミルフィール様にも会っておきたいしね。防御魂の無くなった後も知りたいし。」


 掴める情報は早い内が良いのだと。

 元々、協力者であった彼等とは今後も良い関係であった方が良いに決まってる。


 だけど、…()だが、婚約者だった人に会っても何も思わないのか?と、少しモヤモヤしてしまった。


「空を見ろ!」


 黒い点の襲来?否、悪鬼蜂だ!

 不気味な羽音を響かせながら近づいてきた。

 すぐに戦闘態勢をとろうと身構えるも、


「待って!」


 そう言って前方を指さす。

 指された指の先には…。ゴブリンとオークの群れが()き、怒号を放ち攻めてくる。


 《身体強化》《魔族の微笑み》《防御》


 と、様々な魔法を重ねがけしていくミュラー。

 レイは双剣を構え流れるように群れの中に飛び込んで行く。その動きに迷いはない。剣先が外を向くようにしてクルクル回転する。すると、レイに襲いかかっていたゴブリンが綺麗にスライスされていく。


 ロイは短剣を構え、スピードを活かしオークを右へ左へと翻弄する。巨体のせいか大振りになりがちな攻撃はロイには当たらない。次第に疲れを見せ始めたオーク。


「ミュラー!」

 ドゴーンッ!!!


 ロイの叫びと同時に、オーク目掛けて振り下ろされたミュラーの拳がオークの腹を抉っていた。


 キャロは本能のままに、オークに飛びかかり剥き出しになった鋭い爪で、引っ掻いている。それでも、ほかの仲間に比べると押され気味である。


 俺は、地上中心のゴブリンやオークを仲間に任せ、昨日も相手にした悪鬼蜂の群れと対峙していた。


 魔法は想像力、魔法は想像力、魔法は想像力…。


 呪文のようにブツブツと自己暗示をかける。


 今まで使えたのは、風、炎では水は?

 そこで思い出したのは、水洗トイレである。

 最終的に流れて消えるイメージを頭に描く。


 魔法は想像力なんだろう?


 しかし、魔力が手に集まっているような感覚はあるものの、発動しないのである。


 何が足りない?何の想像が…()か!


 ソコに思い至った俺はすぐ様思い浮かべる。


 流すボタンをポチッとジャーッと流れる水、ゴボゴボと螺旋の渦を描きながら音をたてゴゴゴゴッと吸い込まれる。


 《水洗トイレ(水流派)


 固まったイメージと音声から魔法が構築され、俺の手の先から水が渦を巻き流れ出悪鬼蜂達を呑み込んでいく。ゴボゴボと音を放ち水流に巻き込まれた悪鬼蜂は藻掻くも逃れ出る事はできない。そうして、いつの間にか水流の下に現れた穴へと吸い込まれて行った。

 流れ出ていた水が止まると、穴も消えていた。


 悪鬼蜂の群れを退治した俺は、すぐ様ゴブリンとオークの群れへと援護するべく振り向いた。


「終わりましてよ?」


 そう言って死屍累々の中でニッコリと微笑むミュラーは、美しかった。




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