プレイヤー
「プレイヤーって事になると…誰かが貴方を操作し、名前を付け職業を選択したって事…よね?」
俄には信じられないが、可能性としてはあるかも知れない。
俺は確かにサービス開始と共に、このゲームにログインしプレイしようとしていたのは覚えている。
だが、キャラメイクもせず…。
「そうだ…。俺はゲームにログインしたまま、白い部屋に連れて行かれたんだ。何故か転生門もなく。そこに50年ぐらい居た感覚だった。」
「はぁ?50年も?」
おおよそ、可憐なミュラーから発せられたとは思えないぐらい裏返って素っ頓狂な声を出した。
「俺にも信じられないし…まぁ、感覚が麻痺してたから50年は言い過ぎかもしれないけど。」
うーん…って唸り声が聞こえて来そうなぐらい2人は頭を抱えたのだった。
「問題は、誰が何のためにって所でもあるけど、楽器も、演奏できないし…俺…歌も下手なんだよね…。」
顔を真っ赤にして俯く俺。手はモジモジとして、男らしくない事この上ない。本来の俺の姿だ。
「それは…何と言うか、大変ね?あぁ、でも自己評価で歌が下手だと思い込んでいる場合もあるじゃない?」
「いやいや、自己評価じゃないよ…。マジでヤバいレベルの音痴なんだ…。」
ますます凹む俺。
パチン!手を鳴らして、閃いたとばかりにミュラーが口を開く。
「だったら、妾の前で歌ってみてよ?それから上手いか下手か判断しても遅くないわよ!」
ニコニコと期待に満ち溢れた目で俺を見つめる。
「今?ここで?」
戸惑う俺。当たり前の如く拒否したい。
ミュラーの優しい気持ちを踏みにじりたくないのもあるが…。俺の歌は人に聞かせて良いものではないと自負している。
断れ、断るんだ、俺!!
心の中で自分を叱咤するも…。
「ワカッタヨ…。」
ミュラーの瞳に完敗したのだった。
絶対に笑わない約束だけ取り付けて…。
この世界に来るきっかけと言っても良い、あのアニソンをなんの羞恥か、アカペラで披露する事になるとは、夢にも思わなかった。
―――――――
「絶対♪〜〜絶好調♪〜〜革命的に~♪」
「♪Hatena~アンテナ〜♪なんでも~♪できる〜♪」
「心の♪〜音色で♪〜〜〜!イチコロさぁあああ!♪〜」
―――――――
羞恥プレイだった。
固まってるミュラーにかける声もなく…。
ただ虚しく、星空だけは綺麗に輝いている…。
どどドドドド!!!
ものすごい足音がして…家の中に居るはずの仲間が1人の漏れもなくにでてきた。
「「「何の騒ぎだ!!!」」」
開口一番にそう言われたのは…無言で固まるミュラーを見ているのと同じぐらい…身に答えた。
「皆、良い所に出てきたな?星が凄く綺麗だぞ?」
やるせない気持ちを隠して、明るく皆に話しかけるのだった。
「ほんと綺麗ね。」
「ゆっくり星をるのは初めてじゃな…。地下に住んどる、ワシの仲間にも見せてやりたいわい。」
口々に呟きながら皆一様に空を見上げる。
俺はと言うと、二度と人前では歌うまい…そう固く心に決めるのだった。
服の裾をツンと引っ張る気配に其方を向くと。ミュラーが申し訳無さげに見上げてきていた。
「貴方の歌は、とても個性的で素敵だったわ、驚きすぎて反応が遅れてしまったの…ごめんなさいね。」
そう言われるも…無理な慰めにしか俺には思えなかった。優しさが辛い。
「ありがとう。」
結局、それだけしか答えることが出来なかった。
其の夜はもう遅かった事もあってか、そのまま各自好きな場所で眠りについたのだった。
しばらく俺は、羞恥と、悲しみと、疑問も含めて目が冴えていた俺は中々寝付く事は出来なかった。
それでも、色々な事があったせいかいつの間にか爆睡して、目が覚めたのは、朝ご飯のガロン芋がこんがり焼ける匂いで目を覚ましたのだった。




