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防御魂

「俺の名前はシャイン!吟遊詩人だった!」


「「「おお!改めて乾杯!ヨロシク!」」」


 再び乾杯し、盛り上がる面々。

 今日、初めて会ったのに前から知ってるような妙な既視感を覚えた。これからずっと一緒に居る仲間だと。

 心の中で何かが告げているような気さえしている。


「コレからなんだけど、どうしよう?」


 そう、明確な目的は今の所ない。


「城から追っ手が来るなら逃げるとか、そういう事も必要になってくるだろう。先程のミュラーの話だけを考えると、殺さない約束が有るから大丈夫とは思いたいが…。

 シリアス王子とミルフィールを思い出すと、のんびりしているのも危険な気がするよな。」


 ふと、店に衛兵らしき人が数名入って来た。

 カウンターへ行き、店の者に話を聞く衛兵。その後ろから来た、彼らのリーダーと思われる、偉そうな男がこちらに目を向けてきた。


 嫌な予感がする。


「合図したら店から一斉に出て街の外を目指そう。」


 俺は小さな声で囁く。


「南通りを抜けるのが早いと思うわ。」


 ティアの提案に無言で頷き。偉そうな男の動向を探る。

 さっきのステータスを思い出すと戦えそうではあるが…。

 前世もだか転生してからも戦闘は皆無、クロトと出会った時だって俺だけ役立たずだった事を思い出していた。


 城での暴風も…。偶然なだけで俺がやった魔法では無いかもしれない。


 こういう時、俺は弱いんだと思う。

 現世でもそうだった。頭の中で、あーだこーだ考えて、出来ないと決めつけ行動しない。だから何時もボッチで、妄想とアニソン、ゲームやアニメが友達の暗いやつだった。転生しても根本は変わらないのかもしれない。

 思えば、クロトの時もローエン爺や村人が戦ってて、何も変わってない自分に苛立っての行動だったんだと思う。ミュラーを連れて逃げた時も結局周りの仲間頼みで、衛兵が追って来なかったと言う幸運。結局俺は何もできてない…。


 合図をして…店から出ても…その先は?

 考え無しの自分の発言に嫌気がする。

 捕まるのは怖い、逃げるのも行動を起こすのも怖い。


 答えのない自問自答…。猶予もないと言うのに…。


 不意に手を握られた。


「大丈夫。上手く行くわ。自分を信じて!」


 ミュラーの言葉だった。


 その言葉に根拠は無いが自信が湧いてきた。

 3度頷く俺。次の瞬間。


 リーダー格の衛兵がこちらに歩き出した。


「よーいドン!」


 声の限りに叫んだ。にしても、よーいドン!は無かったと思う。


 俺の合図で走り出した仲間たち、煉瓦で舗装された道、童話に出てくるような可愛らしい街並み不釣り合いな、衛兵がどこからとも無く湧いてくる。数に押されながらも、南通りをただ街の出口目指して走る。


 もう少し早く走れたら良いのに。

 馬のように!と馬を思い出し疾走する馬を思い浮かべ、その馬が奏でる蹄の音を心で感じる。その瞬間、魔法でもかかったかのように、スピードが上がる。


 スピードが上がった事で心に余裕が生まれた俺は、他の仲間の事が気になり振り返った。その心配も杞憂に終わった。フェンリル兄弟は言わずもがな、ティアは精霊の力をかり、ガンディはその体からは似合わぬスピードで走っていた。1番驚いたのは、ミュラーで彼女は空を飛んでいた。


 矢のごときスピードで走り抜け街の出口まで辿り着いた俺たちを待っていたのは、虹色の採光を放つ防御魂だった。


 背後に迫り来る衛兵。前方には防御魂、防御魂は空をも覆っているので上からの脱出も無理。


 背後に迫る衛兵に対し各々戦闘態勢に入る。


「やっぱり、戦うしか無いのか?」


 戦う他策は無いのかと天を仰いだその時、不敵に笑うミュラーと目が合った。


「防御魂を、破壊するわ。」


 落ち着いた抑揚の無い声で彼女は言った。


 それから、防御魂に近づいて、手を拳に握り…虹色のソレ目掛けて渾身のパンチが放たれた!


 バリバリバリバリバリ!!!


 音と共に崩壊する、防御魂。


 俺はその光景をあんぐりと口を開け眺めた。

 他の仲間もソレに習った。

 俺たちに迫る衛兵も同じ。もちろん街ゆく人々も。


 パンパンと手を払いながら振り向いたミュラーは、嬉しそうに一言。


「あー、スッキリしたわね?」


「そ…そうだな。」


 暫し逡巡した後そう答えたのだった。

 ミュラーを怒らせては絶対にダメだと、心に誓ったのである。


 防御魂崩壊を目にした衛兵達は、我々の事に構っている暇が無くなったと言わんばかりに、踵を返したかと思うと、それこそ先程の俺たちみたいに矢のごときスピードでお城を目指したのであった。


 追っ手も無くなったので、ゆっくりと街を後にしたのだった。


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