俺の名前は?
「「「「「とりあえず出逢いに乾杯!」」」」」
ここは、城下にある商業区にある酒場、着の身着のまま亭。
客層は冒険者風の人や、商人を中心に様々な職業の人から構成されている。
追われてる身じゃ無いのか?そういう疑問もあると思うが、何故か城から追っ手が来る気配も無ければ、街中で訝しげに見てくる人すら居ない。
警戒はしつつも、とりあえず落ち着ける場所で、今後について話し合う事になったのだった。
あらためて、店内を見回してみるが、木造に小さなカウンターと10組ぐらいのテーブル席が有り活気に満ちている。
肉料理が中心だが、サラダやサンドウィッチの様な軽食まで幅広く置かれていた。
何品かの肉料理とサラダと店主おすすめのサンドウィッチを注文し、この後を考えるとアルコールで酔っ払う訳にはいかないので、ハニーソーダで乾杯したところである。
「あらためて、私はエルフのティアスイーツよ、ティアって呼んでくれたら嬉しいわ!職業は精霊魔法士だったわ。」
笑顔のティアは、白金のロングヘアーで、深緑と蒼い目の少しつり目のオッドアイでやはり美人だった。
「ワシはガンディ、ドワーフだ好きに呼んでくれ。鍛冶師の修行しとったのに、戦士だったわい」
少し目尻を下げたガンディ。彼は漆黒の髪に紫紺の目、本人曰くドワーフ1の美丈夫らしい。髭が伸びて1人前と言われることから、髭が生えてない事をとても気にしていた。
俺からしたら、美丈夫なら生えなくても良いのでは無いかと思うが。
「ライだ、見たら分かると思うが、フェンリル獣人!職業はアーチャーだ…昔から狩りは得意だったから天職だな!」
ライ達フェンリル兄弟は5つ子らしく、白目が薄青く黒目が金色、切れ長の男前である。真っ白な髪に日焼けした肌が健康的だ。
リイは裁縫師になったようで、戦闘職じゃなかったのが不満なのかあまり会話に参加していない。5人の中で1番ムキムキな所を見れば…そういう事なんだろう。
ルイも錠前師なので戦闘職では無いのだが、こちらは嬉しそうにしていた。他の4人に比べて少し線の細い彼は戦い好きの兄弟達を野蛮だと冷めた目で見ている。
レイは右の目の下に黒子があった。双剣マスターと言う稀に見る高位の職業らしい。
ロイは、シーフ…盗賊らしい。1番不満そうで、裁縫師でウジウジしていたリイを小突いていた。
「妾は、姿見の聖女ミュラー。精霊族と言われていたけど本当は…魔族なのよね。」
「「「魔族?」」」
シーっ!
ミュラーは人差し指を唇に押し当てる。
声をあげた皆もその仕草に見とれ、沈黙する。
「そう、他の仲間はもう居ないのよ。」
そう言って寂しげに睫毛を布施たのだった。
ミュラーが言うには、彼女が幼い頃に住んでいた魔族のお城に人間が攻め入り、怒った魔族と人間の戦争が始まり、終わりなく何年も争って荒廃していった景色に、魔族の王が一族を引き連れ去る事になったらしい。その時
仲間と逃げる予定だった彼女だが、姿見の聖女の称号があるが故、殺さないと言う約束の元、人間の王子と婚約する事になったと言う。
ローエン爺から学んだ歴史には、そんな事どころか魔族の事さえ出てこなかったのに違和感を覚えたのは言うまでもない。
人間に都合よく、書き換えられた歴史という事か…。
思考の海に耽ってると、皆からの視線が俺に集まっている事に気がついた。
「ヌシの番じゃろ?」
ガンディに促されはしたものの…なんと答えて良いか…。
「それがさ…どうやって確認するの?」
「「「「「そっからかよ!」」」」」
フェンリル兄弟の息ぴったりの総ツッコミが入る。
「貴方は特別なのね…」
そう言ったのは聖女ミュラーだった。
「私の目を見て?」
手を握られる。他意はないと解っては居るが、暴走するレベルで意識している彼女にそんな事されて、平常心では居られない残念な俺。
顔が真っ赤になるのが自分でも分かるが、どうにも出来ない。
暫し逡巡したが…目を合わせてみる事にした。
虹色の彼女の目はやはり美しい。
真っ赤になりながら彼女の目を見つめる。
繋いだ手と、合わせた目からじんわりと何かが流れ込んでくる感じがする。
しばらくすると、脳裏にステータスと書かれたボタンがうかんできた。
ステータスボタンを押すイメージをしてみる。
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名前 |シャイン
種族 プレイヤー
職業 吟遊詩人
Lv 非表示
転生 非表示
体力 9999 + 魔力 9999 + 俊敏 9999 + 運 9999+
称号 【ハテマル神の加護】【同帰者】【非表示】【姿見の聖女の祝福】
その他
ソードマスター・空想魔法師・アニソン・音・派遣ウグイス
お供聖獣 クロト(仮)
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流れて来た情報に戸惑う俺。
白い部屋にてチートは無いって聞いていたが…ステータス的にはチートだと思いたい。
ミュラーから握られる手に力がこもる。
それによりステータスから彼女へと意識が戻った。
(ステータス確認できたようね。後で話がるの。時間作ってね。)
心に直接響く声に無意識に頷いた。
「なぁ、名前分かったのか?」
ライが気遣うように話しかけてくる。
「ああ!」
俺は深く頷いた。
「俺の名前は、シャイン!吟遊詩人だった!」




