表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/32

姿見の聖女(4)

 シャラン シャラン


 凛と静まる空気の中、右手を引かれレッドカーペットの上を俯きがちに歩いて来る、白いベールを被った女性に釘付けになる。白地に豪奢な金糸の刺繍が施され優美かつ洗練されている。

 壇上まで近づいていくと、お付の者の手からシリアス王子の手へと変わり、中央の位置まで誘導されていく。


 彼女が此方に向き直る。


「はてまる神よ、妾姿見の聖女を通じ、啓示の儀式

 に参列する者に、神の子らに職を、輝ける未来へと、迷わず進めるように、祝福を!」


 その瞬間会場は虹色の光に包まれる。

 落ち着きのある女性の声、ありがたいと同時に胸が締め付けられる。これが聖女の力かとよく分からない俺でも感動した。


 啓示の儀式終わったのか?

 随分アッサリとしてて拍子抜けしたのは言うまでもない。


 壇上では、シリアス王子と啓示の聖女が何やら始めていた。


「偽聖女ミュラーよ!貴様との婚約者を破棄する!」


 まだ、それやるの?

 げんなりとした表情で事の成り行きを見守る。


 偽聖女と呼ばれた彼女の反応が気になったからだ。

 ベールで隠されて表情は伺い知る事は出来ないが、深く傷ついているのだろう。僅かに震えているように見えた。


「シリアス様、何をもって、()聖女と仰るのか、その理由を教えていただけますか?」


 ゆっくりと落ち着いた声音。こんな状況でも彼女の声は澄んでいる。


「先の嘘くさい文言もそうだが、虹色の光だって妖しげな魔法を使っているのだろう!陰気に顔隠してるのはさぞや醜女なのだろう?そんな貴様が聖女で有るはずがなかろう!」


 彼女を指さしながら王子は言い切った!

 やはりと言うか、三文芝居である。静かに王子の()()に耳を傾ける聖女と、民衆に気を良くした王子は更に言いつのる。


「何年も何年も啓示の儀式を執り行っても、陳腐な職業しか見出す事しかできてないのも立派な証拠だ!」


 それには黙って聞いていた聴衆も我慢できなかったのか、次第に会場はざわめき始める。


「陳腐な職業で悪かったな!」

「その陳腐な職業の人のおかげで生活してんだろ!」


 顔を顰める者、俯く者も多く見受けられる。


「シリアス王子様ぁ!ミルが儀式をしますからぁ。早くその()聖女様を追い出してください!」


 ざわめきを無視し、勝手に壇上に上がって行く。ピンクの髪をふわふわ揺らし…ブリブリのドレスに身を包み。

 意気揚々とシリアス王子にしなだれかかる。


 事の成り行きを傍観していたミュラーの口角が少し上がった気がした。


「ミルフィールよ!よく自分から名乗り出てくれた!この悪辣な女の前に出るのはさぞや怖かっただろう?」

「シリアス様のためですもの!ミルは全然怖くないですぅ。」


 だろうな!


「衛兵!何してる!早く偽聖女ミュラーを追い出せ!ミルフィールが儀式をやり直すのでな!」


 ところが、衛兵は誰も来ない。

 予測の範疇である。

 聴衆も怒りを顕にしている者の数の方が多く、広間から退出しようとする者まであらわれる始末だ。


 俺はと言うと、儀式終わったんだよな?

 魔法使えるかな?職業とかどうやって見るんだろ?とか、壇上の三文芝居にも飽きたので別の事に気をとばしていた。


「衛兵がやらぬなら、俺が追い出してやる!」


 ミュラーに王子が手をかけようとしていた。


 《暴風!》


 心の中で台風の時の風をイメージしてみる。

 ダメかぁ…。

 ならば、風の()も一緒にイメージする。

 ビュービューとか、ゴォーゴォーといった感じのやつだ。

 同時に、何処からともなくソヨソヨと風が吹き始め、次第に暴風へと変わっていった。


 その暴風で聖女ミュラーのベールが吹き飛んでいった…。


 風に舞う白銀の髪に、桃色の唇。何より印象深いのは虹色の大きな瞳だった。絶世の美女と言うのは彼女のためにある言葉だと確信した。


 運命の出会いを演出するかのような音色が心の中で流れてきた。

 妙な高揚感と衝動で、壇上を目指し気が付いたら、彼女の手をとり走り出していた。


 暴風と共に何故か色とりどりの花弁が舞っていた。


 壇上には呆然と取り残される、王子とミルフィール、その傍には一応王子を護ろうとした宰相の姿があった。



「「「早く!出口へ!急いで!」」」


 俺を呼ぶのは、儀式の前に会った、ライ兄弟、ガンディ、ティアスイーツだった。


 彼等に誘導されながら、城の出口へと、聖女ミュラーを連れて走り抜けて行く。

 もっと衛兵に邪魔されるかと思って居たのだが、何故か彼等は持ち場も離れず、警備を続けているのが異様な光景として目に映ったのだった。


 結果としてみれば、すんなりお城から出る事ができたのだ。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ