姿見の聖女(2)
金髪碧眼の見目麗しいいかにも何処かの王子と言った風貌の男に手を引かれ、ピンクゴールドのゆるふわパーマに零れ落ちそうなほど大きなトパーズ色の瞳の儚げな女。
噴水に近づいて、男が女を抱き寄せる。
「聖女ミルフィールよ…愛してるよ…。」
「シリアス様ぁ…ダメなんですよぉ?」
そう言いながら離れる気配はない。
「ミルフィールは、俺の事を愛していないのか?」
「ミルもシリアス様の事、大大大好きですけどぉ」
「ならば、良いではないか?」
「でもぉ…シリアス様のぉ、婚約者の方にぃ…また、意地悪されてしまうからぁ…」
そう言うと、女は嘘くさい泣き真似を始めた。
目を見開いた男は抱きしめる手にいっそう力を込める。
「嗚呼…可哀想な、ミルフィール」
「シリアス様ぁ、ミルはずっとシリアス様と一緒に居たいですぅ」
「ミルフィールの気持ちは理解した。今宵、姿見の偽聖女のミュラーとの婚約者を破棄するつもりだ!」
「そんな事したらぁ、婚約者様がお可哀想ですぅ」
「ミルフィールはミュラーに過度な嫌がらせをされているのだろう?」
「ですけどぉ…。婚約破棄なんてしたらぁ、ミルは殺されちゃうかもしれないですぅ」
「そうだったね…あの悪辣な女はミルフィールを階段から突き飛ばしたんだったね…あの時は心配でどうにかなるかと思ったよ。」
「シリアス様ぁ…ミルはこわいですぅ」
………。
俺は何を見せられてるんだ?
「今宵の啓示の儀式で、偽聖女ミュラーを断罪し、婚約も破棄し…ミルフィールを真の聖女に正しく導いてみせるよ。そうしたら、俺と結婚してくれるかい?」
「嬉しいですぅ。シリアス様!大好きです!ちゅ」
………。
何だろう?コレは浮気密会現場で、合ってる?
偽聖女ミュラーか…気になるな…。
真の聖女とか言ってるけど頭の中は花畑もしくは無さそうだな。シリアスはあの演技にだまされてるのか?
どちらが本物か俺には分からないが…。
大事なのは、今夜の啓示の儀式コレだな…。
潜り込むしかない!
それにしても…ないな…アレはない。
謎の密会現場を目撃した俺は、更にお城の中を散策した。もちろんコソコソ隠れながらだがな!
お城の中はかなり広かった。あわよくばもう1人の偽聖女と呼ばれる女性も探し出したかったのだが…さすがにそこまで都合よくはいかなかった。
お?お城の正面玄関?らしき所に若者たちが集まっている。あそこなら人混みに紛れる事ができるな。
そこには着飾ってる者。普段着のままの者。俺のようにボロボロの者も居る。
人だけではなく、超絶美男美女のエルフだったり…とても強そうなドワーフだったり。可愛いケモ耳獣人も居る。
「防御魂って…普通に通過できるもんなのか?」
「シッー!」
隣に居た獣人に口を塞がれる。思わず口に出てたらしい。
「そんな事声に出したらダメ!良くて牢屋、悪かったら処刑だよ?」
「そうなのか?」
うんうん。と、頷く獣人。
ローエン爺はそんな事言って…違うか。俺が不真面目だったから聞いてなかっただけかもしれないな…座学の大切さを改めて痛感した。
「君も、啓示の儀式を受けに来たんでしょ?」
人懐っこい笑顔を向けてくる獣人。
「ああ。そんな所だ」
「僕達もなんだ!楽しみだよね?どんな職業になるか!」
「僕達?」
「そうそう!兄弟5人で来たんだよ」
「5人?それじゃ、啓示の儀式終わるまで名前無いって不便じゃ無かった?」
「「「え?」」」
「名前は親がつけてるけるよ?僕達兄弟は、俺がでライ、他がリイ、ルイ、レイ、ロイ因みにフェンリルの兄弟さ。ヨロシクね?」
「名前が無いとか初めて聞いたぞい?」
「えぇ、私達エルフも名前は族長様がつけてくださいますもの。」
俺たちの会話を聞いていた、ドワーフとエルフが怪訝そうに言う。
「そうなのか?」
「「「そうだよ(わ)!」」」
口を揃えて言われると…確かに名前が無いのは変だよな。自分だけが無いとは思ってないし、それが普通だと思っていた。
「私は、エルフのティアスイーツよ!ヨロシクね?」
「ワシはドワーフのカンディ!ヨロシク頼むぞい。」
「あ…ああ。俺はまだ名前無いけどヨロシク…。」
知り合いの輪が増えるのは嬉しいが…だんだんと気持ちが沈んできた。
そんな感じで?ワイワイガヤガヤしながら。
成り行きではあるけど、啓示の儀式を受ける事ができそうではあった。
侵入者として捕えられる可能性もあった事を考えると…結果だけはまずまずだと思う。
変な恋愛劇は見たけどな?




