1ー8 主従関係ですか?
1ー8 主従関係ですか?
血反吐を吐き地面に横たえている俺に黒江は駆け寄ると俺の背のリュックから何かを取り出し俺の口許へと差し出す。
ありがたい。
ポーションか、何かだろう。
そう思った俺の期待は、見事に裏切られた。
うん。
バナナだ。
俺は、霞んでいく目でそれを見た。
なんで、こんなときにバナナ?
「食え!薫!」
黒江はそう叫ぶと問答無用で俺の口中にバナナを無理やり皮ごと押し込みやがった。
「んぐっ!」
俺は、もぐもぐと粗食しながら思っていた。
せめて皮ぐらい剥いてくれよ!
俺は、噛み砕いたバナナをごくんと飲み込んだ。
すると。
メガネの角に写し出されていた俺の能力値がぐんぐんと上昇していく。
あっという間に1万ボルにまで上昇した。
俺のボロボロになった体は、すべて癒され体力も回復していた。
「よくもやってくれたな、この犬コロどもが!」
俺は、ゆらりと立ち上がるとへらへら笑ってやがる犬もどきどもに向かってただのパンチを繰り出した。
ぶん、と腕を振ったその衝撃波で犬もどきどもが吹き飛ばされる。
「な、なんだ?こいつ」
「肉体強化魔法か!?」
いや、そんなんじゃねえし。
ただのグーパンで俺は、こいつらを全員沈めてやった。
俺は、最後の一人が倒れたのを見ると女の方を振り向いた。
こいつのせいで俺が痛い目にあったのかと思うと一言文句を言わずにはおれなかった。
だが、そこに女の姿はなかった。
その女はというと手にした鋭いナイフでのびている犬もどきどもに止めをさしながらその胸をえぐり体内から金色の玉を取り出していった。
俺は、目の前で繰り広げられるエグい光景に宇宙の彼方までひいていた。
「ふぅ」
女は、そんな俺の反応に気づかない様子で、まるでいい汗かいたとでもいうように額を手の甲で拭うと満面の笑みを浮かべて俺を見る。
「こいつらだけで6個も宝珠がでに入りましたよ、ご主人様!」
はい?
俺は、耳を疑った。
誰がご主人様だって?
「さあ、日が暮れる前に街へと向かいましょう、ご主人様。この宝珠も換金しなくちゃいけないし」
「ちょっと待て」
おれは、女に声をかけた。
「いつから俺とお前が主従関係になったんだ?」
「ついさっきからです、ご主人様」
俺は、ため息をついて女を見た。
女は、まだ幼いといってもいいぐらいだったが、金髪に青い瞳のなかなかの美少女だ。
俺は、少し考えた。
そうだな。
困ったときにも役に立ちそうだしな。
いろんな意味で。
「いくぞ!」
おれは、女の指し示した方へと歩き出した。