1ー7 瞬殺されました！
１ー７ 瞬殺されました！
「ああ、ありがたくって涙がでるぜ」
俺がそう言った時、遠くでなにやら悲鳴のようなものが聞こえたようなきがした。
俺は、ポケットから黒淵のなんということもないださいメガネを取り出すと装着した。
遠くにこちらに走ってくる人影が見えた。
メガネがその姿をズームする。
それは、どうやら人間の女のようだった。
その女は、何者かに追われているようだった。
うん。
５～６人の犬の頭部を持つ魔物に追われているようだ。
「さて、と。街は、あっちの方向かな」
俺は、女に背を向けると反対方向へと歩き出す。
いや。
異世界に来ていきなり揉め事に巻き込まれるなんてごめんだしな。
すると、肩で黒江ががるっと吠えた。
「何、見て見ぬふりをしてるんだよ！」
「失礼な。俺は、見て見ぬふりなんてしてないぞ。見たけど何も気がつかなかっただけだ」
俺が答えると、黒江は、ため息をつく。
猫にため息をつかれた！
俺が、ちょっと衝撃を受けていると、黒江が呟く。
「ホントに屑だな、お前は。あの子を助ける気なしかよ」
「なんで俺が助けなくてはいけな」
「助けてください！」
いつの間にか俺の方へと駆け寄ってきていた女が俺に声をかけてきやがった。
「お願い！助けてください！」
「ああ？」
俺がきっぱりとお断りをしようとしたとき、犬の頭部をした魔物たちがにたりと笑って俺たちを取り囲んだ。
「ほう、こんなところにエルフのお仲間がいやがるとはな。ちょうどいい。お前も奴隷にしてやる」
「はい？」
俺は、頭の悪そうな犬の魔物どもを睨み付けた。
「誰に向かって言っているんだ？」
「よし！やってやれ、薫！」
黒江がけしかける。
「こんな連中、けちょんけちょんにやってやれ！」
「おう！任せろ！」
俺は、にっと笑った。
「この俺に敵対したことを地獄で後悔するがいい！」
そして。
俺は、犬どもに瞬殺された。
ズタボロにやられた俺の姿を見て女が言葉を失って立ち尽くす。
「安心しろ。命まではとりはせん。お前たちは、大事な金蔓だからな」
犬どもがにたりと嫌らしく笑った。
俺は、地面に突っ伏して動けない。
いや。
仕方のないことだ。
何しろ、俺のパワーは、１ボル。
つまり、ふつうの平均的な人間並みだ。
たいしてこの犬もどきどもは、５０ボル。
つまり、俺の５０倍の強さだった。
