1ー4 3つの枷ですか?
1ー4 3つの枷ですか?
高校生活も落ち着いてきた頃のことだ。
週末に俺は、マスターの家に呼び出されていた。
そろそろマスターのオーダーに取りかかることになったのだ。
「まあ、梓きゅんの願いでもあるし、お前には、いろいろ無理をさせるかもしれんがしっかりやってくれ、薫」
白髪頭のじいさんがしゃがみこんで棒切れで土に何やら図形を描きながら話すのを俺は、立ったままぼんやりと聞いていた。
ここは、このじいさん、つまり俺のマスターである大魔法使い、柴崎 憲一郎の家の裏庭の一角だ。
俺は、目立たないTシャツにジーンズという格好で背に黒いリュックを背負って肩に黒い子猫をのせている。
「大丈夫だ、じじい。なんのためにこの俺がついていると思ってるんだ」
俺の肩にしがみついている子猫がしゃべった。
「この魔王たる俺がサザンクロスを伴っていくのだ。間違いはない」
「そうか」
図形を描き終わったじいさんは、立ち上がると俺に確認するように訊ねる。
「梓キュンとの約束は忘れていないな?薫」
「ああ」
俺は、不承不承頷いた。
「わかっている」
ロリババアは、俺に三つの枷をはめていた。
あの女は、あんな風でいて実は強力な言霊使いなのだ。
俺は、あの女の言葉に縛られている。
その三つの枷というのは。
その1。
決して死なないこと。
その2。
24時間以内に家に帰ること。
その3。
おやつは、バナナを持っていくこと。
なんだよ、これ!
その1とその2は、まあギリ理解できるとしてもその3は?
なんで異世界に行くのにおやつがバナナ?
ぶぅん、と低い振動が起こり、じいさん、もといマスターの描いた魔方陣が稼働する。
「いいか、薫。忘れるな。ちゃんと夕食までには戻るんだぞ!」
「わかっている」
俺は、頷くと魔方陣へと足を踏み出した。
「いいか!薫。ちゃんと夕食までには戻るんだぞ!」
魔方陣に吸い込まれていく俺に向かってじいさんが叫んだ。
「今日は、梓キュンが得意なカレーの日なんだからな!」
何が、得意料理だ!
カレーなんて子供でも造れるだろうが!