1ー12 最低だ!
1ー12 最低だ!
結局俺たちは、門を通るために通行料に銀貨1枚支払って無事に街へと入ることができた。
門の中は、馬や人が行き交う賑やかな街だった。
なんというか、中世のヨーロッパというか、ハウステ◯ボスみたいな感じか。
「この街は、クロイツェル。東部を代表する街の1つです」
女が馬車を操りながら説明してくれた。
「このリドリー王国の中でも大きな街ですからなんでもだいたいのものは揃います」
女は、ついでに自己紹介もしてくれた。
「私は、エルフのルゥといいます。ご主人様のお名前もきかせていただいてもよろしいでしょうか?」
「俺の名は、柴崎、シバザキ カオルだ」
俺は、黒江を持ち上げて見せながら答えた。
「で、こいつは、クロエ、だ」
黒江がにゃあ、と鳴いた。
こうして名乗りあってから俺たちは、商業ギルドやら冒険者ギルドやらを回って宿屋へと入った。
宿屋の娘に2階にあるけっこう大きな二人部屋に通された。
「いや、1人部屋でいいんだけど」
俺が言うと宿屋の娘が頬を赤らめて、別の部屋へと案内してくれた。
うん。
けっこう普通のホテルのような部屋だな。
俺は、ベッドに腰かけるとほっと吐息をついた。
「あの親父、けっこう溜め込んでましたね」
ルゥは、どこぞの盗賊のようなことをぬかした。
「金貨が3枚に銀貨が5枚、それに銅貨が50枚。なかなかのものです」
「そうか」
俺は、今は亡き犬のおっさんのことを思って気分がちょっと沈むのを感じていた。
あの犬のおっさん、真面目にがんばって行商してたんだな。
俺たちを売り飛ばしてその金で娼館でパーティーなんて考えさえしなければよかったのに。
「それに宝珠が7つで金貨1枚と銀貨が60枚と銅貨が80枚です。しばらくは、遊んで暮らせますよ」
「そうなんだ」
俺は、ちらっと腕時計を見ていた。
そろそろ夕方の6時になる。
こっちの世界じゃまだ日が高いがぼちぼちもとの世界に帰る時間だ。
俺は、ルゥに伝える。
「事情があって俺は、もう少ししたらもとの世界に帰る。また一週間ほどしたら戻ってくるから、その金と馬車は預かっていてくれ」
「はい?」
ルゥがぽかんとした表情をしたとき、俺の目の前が暗くなった。
気がつくと元いたマスターの家の裏庭に俺は立っていた。
黒江も一緒だ。
「無事に戻ったな、薫」
マスターが待っていて俺に訊ねた。
「初めての異世界は、どうだったね?」
そのマスターの言葉に俺は、にっこりと微笑んだ。
「最低だ!」




