1ー10 盗賊ですか?
1ー10 盗賊ですか?
訳がわからない俺に犬のおっさんが悪い顔でにたりと笑った。
「安心しろよ。ただの痺れ薬だ。一日もすればもとに戻る。まあ、その頃には、もうどこかの金持ちのもんになってるだろうけどな」
なんですと!?
俺たちは、騙されたのか?
俺は、なんとか振り向いて黒江と女を見た。
黒江は、やれやれというように頭を振っているし、女は、うつむいている。
どうやら俺とおなじように身動きがとれないようだ。
ヤバイんじゃね?
俺たち、ヤバイんじゃね?
そのとき、だ。
油断して背を向けていた御者台の犬のおっさんの背後に女がすばやく襲いかかりナイフで首に切りつけた。
ええっ!?
マジで?
女は、動かなくなった犬のおっさんの体を御者台から蹴り落とすとその後を追って姿を消した。
俺は、どきどきしていた。
なんだ?
あの女は!
ヤバイんじゃねぇの?
殺人気かなんかか?
女は、しばらくして戻ってくるとにこにこ笑って俺に告げた。
「やりましたね、ご主人様。馬と荷車と宝珠がもう1つ手に入りましたよ」
はい?
俺は、正直ショックを受けていた。
宝珠の数、増えてるやないかい!
こいつ、あの犬のおっさんからも宝珠を奪ってきたの?
こわっ!
この女は、ヤバい!
とか俺が軽くパニクっていると女は、にやりと笑った。
「さすがご主人様です。わざと敵の罠にはまったふりをしてくださったおかげで簡単に仕留められました」
そうなの?
俺は、また黒江にリュックからバナナを出されてそれを女に口に押し込まれた。
いや!
だから、皮ぐらい剥いてくれよ!
「ふぅ。あぶないところだったぜ」
俺がバナナで回復するのを見て女は、興味深げに訊ねてきた。
「それは、何ですか?すごい力を持っていますね。ポーションかエリクサーかなんかみたいですね」
「これか?」
俺は、興味津々な女にリュックからバナナを1本取り出すと見せてやる。
「バナナだ。甘くてうまい」
「へぇ。初めて見ます」
女が手を伸ばしてくるので俺は、バナナをそっとリュックに戻した。
いや。
意地悪とかじゃねぇし。
もう、バナナが1本しか残ってなかったんだよ。




