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滅ぼしの醸成  作者: 藤野彩月
第一部
4/62

心地よい火傷

ここだけの話、実は私、ファミレスと言う所にはあまり行った事がなくてドリンクバーと言うシステムもよく知らなかったのです。社外で会合があった時でさえ、昼食にファミレスやその他のチェーン型の飲食店へ行くのは避けています。だって外観が子どもっぽいし、それにああいう店の人間は接客マナーのなってないのがいますから。何を食べさせられるのか分かったものでなし。

そんなわけで、ドリンクバーでは少し戸惑ってしまいました。何せ混雑していたので。たかだか飲み物を頂くくらいでなぜ皆あんなにせかせかするのか不思議でした。ちょっとでもオドオドして手が止まると後ろの人から目線や貧乏ゆすりなどで殺気だったオーラを放つもので…いいえ、これは逸れていませんよ。これがそもそものきっかけですよ。あなたが期待するハプニングのね。

紅茶を入れようと茶葉を探したものの簡単に見つからず、やっとティーバッグをカップに入れてお湯のボタンを押すと誤って多量に入れてしまったんです。けれども後ろからどんどん人が来るし、コースターを探しあてる間もなく溢れんばかりのカップを運ぼうと五歩ほど歩いたら

『………キャッ!!』

そうです。こぼしてしまったんです。カップの中のもの全部ぶちまけたので床はもちろんのこと、その日履いていたフレアスカートにまで熱湯がびっしょり。けれどそれより驚いたのは店員より先にAさんが飛び出してきたことです。

『大丈夫ですか!?』

Aさんは咄嗟に自分のハンドタオルで私の濡れた部分を拭いてくれました。周りの客はと言うと、ただ迷惑そうな顔でこちらを見るばかり。おまけに遅れて出てきた店員は私の皮膚の色が変わらない程度の火傷だと知るや、さっさと厨房へ引っ込んで応急処置の救急品ではなくモップを持って来て床を磨く事に専念するという有様。その時の私は平静を装っていましたが頭の中はカーッとなっていました。席へ戻り、お冷を飲み干しました。Aさんには悪いけど、酷い店と客層でした。彼の前でこんな恥をかかされて消えてしまいたくもありました。

その時、後ろからついてきたAさんにトントンと肩を軽く叩かれました。彼の方へ振り向くと…えぇ、間違いなく彼の方から言いました。

『すぐ近くに僕の家がありますので。』と。

…店からクリーニング代?…えぇ、知ってますよ。問い合わせました。でも、何と言われたと思います?

『こちらの機械の不具合等でお客様がお怪我をなさったのではありませんので、申し訳ないですが当店としましては責任を負いかねます。』ですって!実際こんな丁寧な言い方だったかは覚えてませんけど。

私はさっさと店を出て行きました。後からAさんが荷物を下げて出てきました。テイクアウトのメニューを購入したのです。『すぐ近くに…家がある』と聞いたものの、私には少し遠く感じました。きっと出てきたファミレスの建つ大通りから人気のない小路に外れてガラリと雰囲気が変わったのと、案の定私達は無言のままだったからではないかと思います。

Aさんの住むアパートは外観がレンガ造りの洒落た建物で、二階建てでした。彼はその1階に部屋を借りていたのです。

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