その繋がりは糸のようで
久々の千文字未満短編です。
夫婦ものですが、今回はシリアスです。
ここらで
あまあまは
いいかげんに
しろってとこを
みせてやりたい
何かのフラグが立った気もしますが、気にせずご覧ください。
「離婚、しましょう」
思ったより冷静に言えた。涙が出ないように握りしめた手は、夫からは見えないテーブルの下で小刻みに震えている。
「な……! 何を言っているんだ……? 離婚? 馬鹿な冗談はやめてくれ!」
予想に反して抵抗の意思を見せる夫。どうしてだろう。私なんていない方がいいはずなのに。
「冗談なんかじゃないわ。終わりにしたいの。あなたにとっても喜ばしい事のはずよ」
「そんな訳ないじゃないか! 何故そんな事を言うんだ! 僕に不満があるなら言ってくれ! 必ず改善してみせる!」
そういう事じゃない。分かっていないはずはないのに。
「改善なんて無理よ。あなたは今の仕事を捨てる気?」
「……! 仕事が原因、なのか……?」
そうとも言えるしそうでないとも言える。
夫は世界的なアーティスト。世界中を飛び回って仕事をしている。
デビュー前から共にいた私からしたら、その成功は喜ばしい限りだ。でも……。
「先週はニューヨークの仕事。昨日まではワシントンでの仕事。そして明後日からはまたニューヨークの仕事……」
「……す、すまない。寂しい思いをさせているのは分かっているんだが……!」
「違うの……!」
寂しくないと言えば嘘になるけど、大事なのはそこじゃない!
「その合間合間に何で帰ってくるの……? その間現地に居れば身体を休めたり次の仕事の準備ができるのに……!」
私が負担を強いている事が、辛くて苦しい……!
「あなたと一緒に世界を回れない妻なんて、足手まといでしかないでしょ……? お願い……、あなたの邪魔になりたくないの……!」
「違う!」
夫の激しい言葉に、私は顔を上げた。夫は怒りとも悲しみともつかない顔をして、私を見ていた。
「僕が仕事の合間を縫って帰って来るのは、ここが僕の帰る場所だからだ! ここに帰れると思うから、僕は世界のどこにでも行けるんだ! 君を失ったら僕は糸の切れた凧のように落ちるだろう! 君がいてくれないと駄目なんだ……!」
夫の涙に、私の頬も濡れていく。
私から伸びた糸が、夫を縛っているのだと思っていた。
でも夫は帰る場所だと言ってくれた。
嬉しい。でも言葉にならない。立ち上がって夫の元に駆け寄り、想いのままに抱きつく。
「僕を離さないでね」
「私の台詞よ……!」
小指に繋がるその糸は、縒れて絡んで解けない……。
読了ありがとうございます。
やあ (´・ω・`)
ようこそ、後書きへ。
このマックスコーヒーはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。
うん、「また」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
でも、この前書きを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい、そう思って、この物語を投稿したんだ。
じゃあ、感想を聞こうか。
毎度毎度甘々ですみません。
お楽しみ頂けましたら幸いです。