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後夜祭

学園祭も無事終了し、今は後片付けと後夜祭を行っていた。

 後片付けは今日一日ではないから、ほとんどの生徒は記念撮影しに行ったり、グラウンドで行われるダンスイベントへ出掛けてしまっていた。


 様々な飾りつけで別世界のようだった教室も、それらを剥がしていくと同時に魔法が解けていくように日常な戻ってくる。


「なんか寂しいですね」


 看板を外しながら香月さんが呟く。


「俺も思った。でも文化祭は終わってもこの思い出はきっと一生残ってると思う」

「そうですね。絶対忘れないと思います」


 がらんとした教室はまさに夢の跡を感じさせる。


「それにしても相楽くんが清家先輩と知り合いだなんてビックリしました」

「知り合いって言っても数回話しただけだよ」

「むしろ数回であんなに親しくなるってことがすごいです。さすが相楽くんです」

「大袈裟だなぁ」

「ううん。そんなことないですよ。清家先輩はあんまり男子と仲良くならないタイプなんで」

「そうなんだ?」


 すぐにうちとけてきたし、そうは見えなかったから意外だ。


「先輩可愛いでしょ? だから男子から人気があったんです。それが本人には重荷だったみたいでして、モテないようにキャラを作ったんです」

「キャラを作る?」

「はい。自分のことをボクって言い出したのもその一つです」

「あー、それでなんだ」

「あと中二病っていうんですか? なんか不思議なことを口走るキャラを演じてました。『左手に宿る千年狼の魂が』とか『第三の眼で見るんだ!』とか。そんなことを言い始めたら本当に言い寄ってくる男子が減ってました」

「なるほど……」


 その痛々しい中二病発言を聞いたことがないというのは、なんとなく言いそびれてしまった。


「そんな先輩なら認められたんですから、さすがは相楽くんです」

「香月さんの先輩と仲良くなれて俺も嬉しいよ」



 適当なところで片付けをやめ、俺達もダンスイベントへと向かう。

 昔は文化祭の後夜祭ではキャンプファイヤーを行っていたと聞く。

 さすがに今のご時世的に出来なくなったのでみんなで集まり歌ったり踊ったりする行事に変わったらしい。



 校舎を出てグラウンドに向かっていると、少し離れたベンチに清家先輩が座っているのが見えた。

 一人きりで、なにやら悲しげな表情を浮かべて遠くを眺めていた。


「先輩、どうしました?」

「おおー、相楽くんと悠華」


 振り返った瞬間、先輩はいつもどおりの賑やかなほどの笑顔に変わる。


「どうしたんですか、こんなところで」

「一日立ちっぱなしで疲れちゃってね。ダンスもしたいんだけど脚が痛くて」

「大丈夫ですか?」


 香月さんは心配そうな顔になる。


「心配ない。実は情けないことに体育祭のとき怪我をして、それからずっと脚は痛いんだよ。もちろん怪我は治ってるけどね」

「それはよくないですよ! あ、そうだ。相楽くんにマッサージしてもらうといいですよ。すごく上手ですから」

「そうですね。心配なんで一度見させてください」


 思い出せばはじめてごみ捨て場で出会ったときもよたよた歩いていた。

 あれも脚が痛かったせいなのかもしれない。


「いや、大丈夫だって」

「私も怪我をしちゃって、そのとき相楽くんにマッサージをしてもらってよくなったんです」

「いや、まあ、プロじゃないんでそんなにすごいうまい訳じゃないんですけどね」

「へぇ、それはすごいね。じゃあ今度お願いするよ」

「今しますよ?」

「君も疲れているだろ? 今日は遠慮しておこう」

「じゃあ明日休みだから明日にしましょう」


 先輩思いの香月さんは清家先輩に断られる前に日程を決めてしまった。

 せっかくなので俺の家ですることにした。


 それならば施行後に三人でそのまま話すことも出来るし、オイルなどもあるのでしっかり出来る。


 ぐいぐい迫られるので清家先輩は不承不承といった感じでオッケーしてくれた。




 翌日。香月さんに連れられて清家先輩がうちにやってきた。

 ダボッとしたスウェットにスキニージーンズというコーディネートがなんだかはまりすぎている。


「おじゃまします。高校生で一人暮らしなんてすごいね」

「そんなにしっかりとした生活は送ってないですよ」

「さ、先輩。これに着替えてくださいね」


 香月さんにスパッツとタンクトップを渡され、先輩は顔を赤くする。


「悠華の着れる分けないだろ! ボクは、その、悠華みたいにおっぱい大きくないんだから……」

「大丈夫です。これ、私が中学のときに使ってたやつですから」

「ちゅ、中学生でこれ!?」


 どうやら二番でダメージを受けてしまったらしい。


「ボクもちゃんと持ってきたから大丈夫」


 そう言って脱衣場へ着替えに向かった。

 その間に俺はマッサージマットを敷いてアロマオイルを焚いておく。


「お、お待たせ……」


 タンクトップとショートパンツに着替えた清家さんが戻ってくる。

 肌色部分が多くて、なんだかちょっと気まずい。



 

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― 新着の感想 ―
[一言] 妹にすら嫉妬してしまったのに、先輩には許すかあ。 先輩を信用しているからか、彼と信頼関係ができていると思っているからか。
[一言] 第三の眼で見るんだ・・・手塚治虫の三つ目が通るの三つ目族か とツッコミをいれそうな私(笑)
[気になる点] 清家先輩のタンクトップとショートパンツか… いや、別につばを飲み込んだりはしてないですよ? (゜A゜;)ゴクリ…あっ
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