6話 太郎と刀
武器屋はいろいろ取り揃えていた。
太郎は中二病の血が騒ぐとはしゃぎ、武器を物色する。
武器屋に向かう途中、やっぱり武器は刀の一択だよなと心に決めていた。
ゲームによく出てくるような武器が、目移りさせる。
・モーニングスター
柄から先は鎖となっていて、その鎖の先には鉄球がついている。鉄球にとげがついている物が多い。
・バスターソード
腕自慢の人が使う大剣。太郎には重すぎて、持ち上げるだけで精一杯。
クランでも重すぎて構えるのが精一杯。
・クロスボウ
弓を引いた状態で留め金で止めておく、狙いを定めてトリガーを引くと矢が放たれる武器。
・弓
説明は割愛。
・ヌンチャク
鉄の棒と鉄の棒を鎖でつながれた武器。振り回して勢いをつけて、たたく武器。
モーニングスターの方が破壊力は高いか。
・短刀
包丁サイズのナイフ
・ショートソード
短刀よりも長いが、ロングソードよりも短い。使い勝手が良い武器。
・ロングソード
やっぱりみんなが愛用するメイン武器。
デザインや素材にこだわりがあり、色々なロングソードがある。
・槍
長い棒の先に短刀くらいの刃がついている。
刃の形によって槍の呼び方が変わる。
戦争などで一番使われる武器。
・刀
日本の刀と同じもの。
もしかしたら、昔の転生者・転移者が流行らせたものなのかもしれない。
物が良いのは理解されているが、異世界では、あまり好まれない。
・斧
扇型の刃がついている武器
(さすがにマイナーなのかトンファーや、ナックル系の武器は無いのか。ここにないだけかもしれない)
見ているとやっぱりロングソードはかっこいいが、太郎の職業はサムライにしているので、当然刀を探す。
いろいろ、物色してぶつぶついう太郎の話を店主が聞いていた。
「お、にーちゃん! 見る目があるじゃねーか?」
腕を組んで仁王立ちしている店主が太郎に向けていう。
がたいもよく、これぞThe 武器屋のオヤジだ。
「武器はそれなりに詳しいので」
(単なる元廃ゲーマーなだけなんですけどね)
太郎は、学生の一時だが、引きこもりになり廃ゲーマーでいろいろなゲームのランカーになった経験もあった。
ランカーとはプレイランキングに名前が表示されるプレイヤーをいう。
人気がないのか、職業が少ないのか、刀は店の片隅に立てかけてある真っ黒色の1振りのみである。
そして、太郎は、本日のメインである刀に手を伸ばし、手にしてみるとすごく軽かった。
どう表現してよいのかわからないけど、刀の切っ先にまで神経があるような感覚なのだが、長時間同じ姿勢でもつかれなさそうな軽さ。なんか体まで軽くなった感じもする。
そう、プラスチック製のおもちゃの刀くらいに軽いのだ。
「それを軽々と!? にーちゃん、相当の手練れだな? その刀の素材は、ヘビータイトていう金属でできてるんだ。作成者はそれを『ネタ武器』だと言ってたけどな。もしその刀を自由に振り回せるようなら、勇者をも凌ぐと言い伝えもあるんだぜ? 見る限りそれがよさそうだな」
(きっと名刀なのだろう。この軽さに仕上げてくれたんだな)
太郎はこれに決めたとクランに伝える。
クランは支払いを進める。タグカードで証をつけて支払い完了。
(タグカードって、クレジットカードに似たようなもんなんだな。便利だな)
刀が手になじむような感覚を覚えて、太郎もこの刀、気に入ったと喜ぶ。
「まいどー、床が抜けないように気をつけなー」
武器屋の主人が太郎たちを見送る。
「タロー、僕にも握らせてくれないか?」
クランはどうしても、武器店主の「勇者をも凌ぐという言い伝えがあるんだぜ」が、気になる所。
太郎は、刀を片手持ち、手渡す。クランも片手で持とうとした瞬間、クランの体が刀を支えきれず、刀と共に倒れてしまった。
「タロー! これ、すごく重いよ!! 刀持ち上げてくれないか」
そういわれて、急いで刀を持ちあげる。と、すごい力で握っていたクランまでひょいと持ち上げてしまった。
「――?!」
太郎は一体何が起こったのかわからなかった。
「そうかこれが、限界突破(改)のスキルなのかもしれない」
クランが太郎のスキルだろうと、分析する。
試しに、刀を置き、クランだけを持ち上げようとするが、全くびくともしなかった。
今度は、刀を装備し刀を持ち上げ、クランに刀にぶら下がってもらった。
クランがぬいぐるみかのように軽かった。
どうも、刀を装備すると、スキルが自動的に発動するようだった。
サムライのように腰にぶら下げようとすると、ズボンが破けてしまいそうになるため、
刀を鎖でつないでたすき掛けで装備する。
スキルの性能がすごいようだったので、太郎は大きな希望と自信が持てた。