5話 太郎と冒険ギルド
ステータスに記された文字は日本語…………ではなかった。
記号に近いような形をした文字だった。
漢字に近い特性を持っている。
そしてなぜか、昔から知っているかのように文字を読める。
文字を理解する感覚は、顔文字に近い。
もしかしたら、太郎も書けるかもしれないが、今は深く追求はしない。
顔文字なんて授業で習ったり、教えられたわけじゃないけど、見ただけで言いたいことがわかる。
書かれた文字を理解する感覚はそれに近いが、これは何か特別な加護があるからかもしれない。
クランと太郎は日本語で普通に通じるてるけど、通じるのは加護かなにかで、もしかしたら、お互い理解不能な言語で話しているのかもしれない。と、太郎は考える。
「勇者クラン・ブルーよ、では、ここに証を」
おもむろに首からタグカードをとりだし、契約書に押し当てる。
開示しましたよー的なことが書いてある契約書には、勇者の証の紋章が写しこまれている。
「確かに……」
そういって、ステータス開示してくれた教会の人は、教会の奥に去っていった。
「それじゃ、タロー、これをもって、ギルドに登録しにいこうか」
「あ、うん」
太郎はステータスみても無反応だから、良いのか悪いのかわからん!と、内心思っていた。
「クラン、それで俺のステータスって普通だったのか?」
「いや、悪い! 赤子だってセンスある子のレベルは10以上ある事だって多い! なのにレベル1なんて見たことない! どうやったらそんなに弱くなるのさ?と思った」
クランの言葉に太郎は本気で方を落とす。
「レベルは簡単にあがるのか?」
「努力すれば上がる。死線を超えれた物だけがレベルを上げることが出来る!」
どうやらレベルアップですら難しいようだ。
「ただ、タローには職業にサムライ。スキルと精霊召喚があるから見込みがある! そこで、ギルドに登録してレベルアップを期待してみようという事だ」
書いてあったのは召喚で精霊召喚ではないような気もする太郎だった。
(この世界では、俺の行く当てはない。もう、なるようにするしかないか)
覚悟は足りないかもしれないが、少し決心はしたようだ。
「スキルの限界突破(改)ってどうなの?」
「それ、僕も初めて見るスキルで、スキル発動してみない事にはわからない。文字通りなら実力以上の力を発揮できそうなスキルではありそうだ」
二人はギルドのカウンター前に居た。
「では、これでギルドの登録は完了です。冒険者のお勤め頑張ってください」
カウンターにいる受付嬢のおねーさんは、太郎に励ましの言葉をかけ、ギルドの控え分の書類を丁寧に書類をまとめる。
そのおねーさんが太郎に小声でいう。来月までの討伐ノルマはゴブリンの右耳1つとのこと。
レベルに見合った数量のため、あまり大きい声でいうと周りの人たちに絡まれるということで、小声で教えてくれる。
本来、太郎のレベルではギルドの登録は不可能。
勇者の推薦がなければ門前払いを食らうだけだ。
太郎は適正にあったサムライになった。
なったといっても、書類に職業を書いて、それ専用のタグカードを作ってもらっただけだ。
魔法的な何かで能力が変わるとかいうことはない。
このタグカードは、身分を証明するものなので肌身離さず、盗まれないようにするのが常識だそう。
(俺の想い描いてた異世界とイメージ違う……)
太郎は異世界に行ったら神様にチートスキルもらって『俺Tsueeeeee』が常識と思っていた。
全くもってそんな事はなかった。いや……損な事しかなかった。
(勇者におんぶに抱っこだなんて、地球人代表として恥ずかしい限りだ)
「タロー、次は装備だ」
「待ってくれ。俺は金も持ち合わせてないし、返す宛てもない。ましてや装備まで……そこまで甘えられない」
クランは困った顔をする。
「でも、今の俺には、クランに頼るしかない。俺、頑張るから先行投資ってことでいいか?」
クランは太郎の言葉に笑顔でうなずく。クランもそれを望んでいるみたいだ。
2人は武器屋に向かった。