4話 太郎とステータス
歩いた!相当歩いた!そして、壁が見えてきた。
太郎は自分が異世界に転移したと分かれば、順応は早かった。
高さ4メートルくらいの石製の壁だ。正面には門があり、今は閉じている。
あたりはもう真っ暗で出入りもほとんどないため、門を閉めているのだろう。
「ぅわぁ。ずいぶん高い塀だな。なぁ、クラン。ここって城下町か?」
「いや城はない。商業や冒険ギルドの活動が多い町だね」
「城下町でもないのに、ずいぶん立派な壁だなぁ」
「いやいや、町だからこれでも壁も低めなんだよ。城壁だとこの倍以上の壁だよ。魔障壁職人が作るから、壁は結構自在だね」
太郎がいた国では、果てしなく続くアスファルトの道がある。
こっちの世界は道よりも壁が重要で、壁を作る魔法職人がいるのである。
魔物は夜行性で、夜になると狂暴化するらしい。
夜は夜のマナが流れていて、そのマナが魔物に影響を与えるのだろうと考えられている。
それらから身を護ってくれるのが壁だと、クランはいう。
勇者が常備しているランタンであたりを照らす。
勇者のランタンは魔道具らしく、魔力で光らせているらしい。蛍光灯の倍くらいの明るさを放つ。
「門が締まってるなぁ」
太郎はつぶやく。
「タロー、ここは僕に任せて!」
勇者のクラン・ブルーが首から下げていたタグカードのようなものを掲げ、門の前に立つ。
大きさは、太郎が使っているような会員カードを一回り大きくした感じ。
「我、勇者クラン・ブルーなり! 緊急の要にて、この町に帰還したい!」
クランはカードに魔力を流し、カードの淵が虹色に輝く。
(PCのパーツのLEDみたい。きっと、光り方が勇者の証になるんだろうなぁ)
『勇者を確認! 開門!』と、門の内側から声が聞こえる。
ゴゴゴゴという音共に門が開く。
「わぁ、すげぇ。こういうの映画とかでしかみたことないなぁ」
門の大きさもおよそ3、4メートルはありそうな結構な大きさである太郎は、その迫力に呆気にとられていた。
クランも開門の理由に緊急という言葉を使っているところを見ると、開門はそうそう出来る事ではないのかな?と太郎は勇者の存在を少し実感するのであった。
顔パス感覚で、門をくぐる
(勇者様様だな)
「タロー。言っておかないといけないことがある」
心でも読まれたかっ?と太郎はドキッとする。
真剣な表情で真っすぐ太郎を見つめている。
「実は、本来転移者は、召喚術者が、異国や異世界の者を強いステータスを付与させて召喚させるというものなんだ」
クランがいうには、太郎も転移者なんだからきっとチートスキルがあるだろうっていう話だった。
「そこで、タローには、ステータス開示の儀を執り行ってもらう」
「えっ? そんなことが出来るのか?…………もしかして、勇者の権限?」
太郎の言葉に、クランがうなずく。
「でも、まずは、ギルドが先だね」
ギルドでは、勇者と同じ部屋であれば無料ってことで、ひとまず勇者と同じ部屋に泊まることにした。
料理は食べ放題で、酒も飲み放題。ビッフェ形式で、作りおきしたものが多かった。
米が無かったのでひとまず肉とスープ主体の食べ物で済ませた。
二人ともお腹が空いていたので、いい食いっぷりだった。
手続きは明日の朝以降とのことで、とりあえず、教会には急ぎで申し訳ないがステータス開示の儀を執り行ってほしいとギルドマスター経由で伝えてもらった。
今日は色々ありすぎて、太郎の気持ちの整理が追いつかない。
(異世界漫画の主人公って、適応能力すげぇ! 俺には無理だ)
疲れているのもあって太郎は、そのまま眠りについた。
太郎の腕時計は20:32を表示していた。
「――――起きろタロー!」声と共にタローは起きる。
太郎の置きっぷりは『ヤベ、遅刻する!』だった。
(そっか、昨日のアレは夢じゃなかった……)
「さて、今日はそのままステータス開示の儀を行ってもらう。これは、勇者権限でタローへの命令でもある」
(自分がステータス開示されるのか? どんな風になるのか楽しみ)
「命令であれば仕方ない」
わくわくし過ぎを表に出すのが恥ずかしいので、太郎は出来る限り平静を装う。
勇者の権限は色々すごかった。すべてが円滑に事が運ぶ。
協会につくと、すぐにステータス開示の儀が執り行われる。
議事録係が水晶を通してステータスの内容を記入していく。
経験値やHP、MP、STR(力)、AGI(敏捷)、VIT(持久力)みたいな表記が数値として出るのかとワクワクしていた。
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ヤマダ・タロー
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レベル : 1
スキル : 限界突破(改)、召喚
適正 : サムライ、召喚師、村人
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内容を見た太郎は、がっかりした。
提示されたのはレベルとスキルと適正の3種だけだった。