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山田太郎の異世界戦記  作者: 来遊塚 帝
一章 始まり
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1話 プロローグ

 太陽が高く昇っている晴天のある日。


 山田太郎は撮影を予定している場所の下見をしに山道を歩く。

 傾斜は緩やかだが草木が青々と茂っていて歩きづらく、道なき道をひとり黙々と歩いていた。

 ここはもう何年も人の出入りがなさそうで道が雑草で塞がれている。


「もうそろそろのはず……」


 太郎はスマホに表示されるナビをみて、このあたりにあるはずの目的地を確認する。

 車から降り20分程歩いただろうか目的地がすぐ近くにあるはずだとあたりを見回す。

 すると木々の間から建物らしき影が見えた。


 その目的地とは廃旅館だ。


「距離はそれほどでもないけど、道が悪いから時間が掛かったなぁ」


 当時、この旅館はマイナスイオンでヒーリング効果が期待できるあって、それなりに賑わいを見せていた。

 ある事件を境にその賑わいも衰えることになる。その事件とは、客として訪れていた若い夫婦が無理心中したというものだ。

 事件があった後は、廃れていく一方で、そして旅館経営者が失踪した。

 そういう曰く付きの廃旅館であるにも関わらず、噂になっていないのか不思議だった。


 太郎はあまり怖がらないので下見をしに行かされることが多なり、いつの間にか、下見は太郎の役目になっていた。



 ――廃墟に近づき全貌を見る。


 背の高い木々が光を遮るせいで、晴天の昼間でも薄暗く、旅館はそれなりの雰囲気だった。

 ツタが旅館半分を覆っているのがより一層、なんとも言えぬ雰囲気を強調している。


(ここは、夜にここにきたら雰囲気だけでも画になるな……)


 こういった場所でも太郎は、撮影現場としてみているだけだった。

 おそらく普通の人が見ると、昼間でも近寄りたくないというだろう。


 早速、手持ちのスマホからカメラ起動して写真を撮り始める。

 全体の風貌を数枚撮ったところでビデオに切り替え、撮影しながら中に入っていく。

 正面のドアは、引き戸タイプのドアで、なく鍵もかかっていないようだった。


 太郎は、ドアを開けた。

 館内は真っ暗で中がよく見えない。


「――暗っ!」


 カメラのライトが自動でオンになり、あたりを照らす。


「って、なんだ!? 壁で行き止まり? 」


 ライトで中の様子がではっきりと見えたが、そこには壁しかなかった。

 玄関に侵入する太郎。


「おそらく、正面玄関と思われる……場所から入ったけど、ドアは鍵もかかってなかったし封鎖もしてないのになんでここで行き止まりな感じで壁があるんだ?」


 玄関のはずが、壁で封鎖されて先に進めない。

 そう壁にはドアがないのだ。


「旅館といえば、出迎え玄関は突き抜けているものだろう。普通、封鎖するんだったら、玄関ドアを封鎖するよな?」


 思っていることは小さいことでも率先して、収録の中に入れるようにする。


「他に入れそうな場所を探すか…………」



『――ドンっ!』



 その瞬間、後ろから大きい音がなる。


「――――!!」


 ビクッと、驚きながら絶句する太郎が、カメラと共に音のあった方を振り返ってみたが、半分以上開いていたドアが閉じていた。

 音の正体はドアが閉まる音だった。


「えっ?! 今、勝手にドアが閉まったぞ?」


 今までスポットはいくつもめぐってきたけど、物が勝手に動いたりするのは今回が初めての体験だった。

 引き戸なんて風とかで勝手に締まるものでもない。

 さすがに太郎もこの状況には焦り、今の状況を飲み込むのに時間がかかった。


 硬直から解放した太郎は、とりあえずドアを開けようとするが、鍵がかかっているのか開かない。

 鍵の方にカメラのライトで照らすが、そこには鍵穴しか無かった。


「鍵穴? なんで内側に鍵穴が? ――っえ? 内側になんで鍵穴になってる? ………………一度、撮影を止めて、外側のも確認してみよう」


 太郎は録画を止め、今まで取った分の映像を確認する。確認すると外側の扉もしっかり鍵穴になっていた。


(勝手に正面玄関のカギを閉めないような作りなのかな? その前に俺、閉じ込められたのか?! どうすっかな……)


 と、考える太郎であった。


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