第五話
感想に書かれてあったことをいくつか訂正しました。
拙くて申し訳ありません。
他にも訂正すべき点があればどうぞよろしくお願いいたします。
愚作ですがお楽しみいただければ幸いです。
ある日の練習終わりだった。
紫雲の隙間から夕日が木々の葉を照らし、黄金色に染め上げる。
そんな幻想的な景色を見て帰る中。
「ばあっ! びっくりした? 久しぶりだね、トウヤ」
ロングの黒髪がきれいに風になびきながら天童美樹は突然俺の前に現れた。
彼女は俺の幼馴染であり、家族ぐるみの付き合いだ。
幼馴染と聞いて、羨ましいと言われたことは一度や二度ではない。
ただ、彼女には致命的な欠点がある。
彼女は、極度のヤンデレである。
幼馴染、この関係性はただ一緒に過ごしてきた、という話ではない。
幼馴染であるがゆえに、ともに鍋をつついたし、ジュースの一口交換などざらであったのだ。
ゆえに。
彼女は、美樹は俺の知る女性の中で最も俺に依存している。
過去、彼女には何度か監禁されたことがあり、その際に見せた情報操作力は警察を凌駕した。
おかげで2週間は彼女の言いなりだった。
幸いにして、彼女は俺を第一に行動してくれるので、文化祭の準備とかがしたい、という俺の意見を取り入れて学校には通わせてくれた。
そのせいで親もただの家出だと思い込んでいたらしい。
「トウヤ、めっちゃ驚いてるね。そんなにびっくりした?」
「ああ、めっちゃ驚いた」
別のことに、だがな。
「なんでここがわかったのか、って思ってるでしょ?」
ニコっとはにかみながら彼女は言う。
きっと彼女の中では、俺にとって彼女は欠かせない存在なのだろう。
だが残念、俺の中では『なぜ』なんてどうでもいい。
ここで重要なのは『どうすべきか』なのである。
「いや、それは別におどろいてないな」
「!!……////えへ、えへへへ」
(そっか、トウヤにとって私はいるのが普通なんだね! うれしい!)
何やらニヤニヤしている。上機嫌なのはありがたい。荒縄で縛られたり包丁で刺されずに済む。
「ねえ、トウヤ。なんで県を跨いでまで違う高校にいったの?」
「それは、こっちの方が授業のレベルが高いからだ」
「でも私立だよ?」
「俺は無料なんだ。特待生だから」
「えええ!! トウヤすごいじゃんーー」
美樹のいいところは、ここで『私のトウヤ』などと言わないことだ。
美樹はヤンデレだが、それでも幼馴染であるが故か、愛が暴走しがちッてだけでちゃんと俺のことを考えて行動する。意外と融通が効いたり、普通の人間だったりする。
だからまだ、一応関係性を残している。
「ーー私といっしょだね!!」
……え?
聞くところによると、たまたま美樹もこの高校を滑り止めで受験し、こっちの方が設備が良かったこと、特待生がゆえに無償であることからこちらに決めたそうな。
今まで来ていなかったのはどうやら骨折による入院とか。
そういえば確かに俺が病院に行ったのも見舞いがきっかけだったり。
「トウヤ、一緒のクラスかな」
「先生からまだ聞いてないのか」
「私のクラスは知ってるよ、でもトウヤのはどこか知らない」
「俺は2組だ」
「あ、何で言うの! クタスに入ってから確認しようと思ったのに」
はたから見ればただのカップルにしか見えない会話を続けて家に帰る。
ふと気づく。
「美樹、お前家は?」
「え? もちろんトウヤの隣だよ? ほら、合鍵も」
住所は伝えていないんだがな。おかしいな。
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