第四話
新歓がやってくる。新入生歓迎球技大会のことだ。
毎年毎年、このイベントには頭を抱えさせられてきた。
~中学1年生~
「ええ、すっご!君、名前なんて言うの?」
「ねね、次の試合みに行こうよ」
「ねえ、ここ熱くない?」
「わ、可愛いね。名前は?」
~2年次~
「めっちゃかっこいい先輩いるじゃん!!」
「ほんとだ!何て名前??」
「「「トウヤ先輩、がんばれぇぇがんばれぇぇ!!」」」
「すごいねトウヤ君。応援独り占めじゃん。目立つの嫌いでしょ?こっちいこ」
「あ、トウヤ君汗拭いたげる。動かないで」
~3年次~
「「「きゃ~~~!!!!」」」
「今年も一番人気だね!!すごいじゃん!!」
「お昼一緒にたべよ!!」
「わあ、あれがトウヤ先輩……!!」
「あ、トウヤ先輩、ちょっと飲み物かいに行きませんか?」
「トウヤさん、次も頑張ってください!!」
このとき、俺の汗を拭いたタオルが時価5000円になって校舎裏に売られていた。
あと100人くらいが俺の汗を交換交換で拭いていくので俺はまったく自分の汗を拭くことができなかった。腕が縛られてたからな。
お弁当も誰のか知らない唾液にまみれてたし。俺のタオル無くなってたし。
カバンの中にしまってたラインに通知300くらい来てたし。知らない人が追加されてたし。
思い返すときりがないが、この高校生活はこうならないだろう。
なぜなら、俺が活躍することはないからである。
「タロー、そっち行ったぞ!!」
「まかせい!!」
うちの新歓はバレーボール。
バスケ部やバレー部、高身長が活躍する。
俺は175とそこまで大きいわけじゃない。出番も少ないし他のメンバーが強いから大丈夫だろう。
ただ、やけにこのチームだけ部活生が多いな。
他のチームも複数あるというのに、メンバーが固まって……。
「お、Aチームやってんねえ」
「さすがうちの主力。メンツ固めておいてよかったな」
「これなら優勝までいけんじゃね??」
ここで気付いた。俺はどうやら『主力』として組み込まれたようだ。
確かに駒中から急に「他のメンツ決まっててあとはお前だけだから組もうぜ」という謎の理由を言われているが。
くそう、あいつ、勝手に決めやがったな。
「くらえ駒中」
「ぶべっ! いてえよ」
報復にスパイク決めてやったぜ。痛かろう痛かろう。
「すご、かっこいい」
「ね、スパイクめっちゃきれいだった」
「トウヤ君あんまりしゃべらないけど、クールな感じでよくない?」
「はあ、私先に目付けてたんですけど」
「抜け駆けはだめじゃね?」
ああ、痛いね。痛かったね。俺に対する視線がトラウマを呼び起こして痛いよ。
「すまん、痛かったな」
「ああ。いいよ。しゃーないさ」
「事故でもちゃんと謝るの好きだわ」
「イケメンじゃん」
「私、トウヤ君のボールにぶつかってこようかな」
昼休み、普段は駒中と沢尻との3人で固まって食べる。きまって食堂だ。
俺と駒中は基本的に学食で済ませる。沢尻が自炊できるからといっても、自分の昼めしくらいは自分で用意する。
「わー、あの子可愛くない?どっちの彼女かな?」
「あ、あれ男ってよ。ほら、ズボンはいてるじゃん?」
沢尻は基本的に性別を間違えられる。身長と顔のせいだろう。
今も女子に間違えられていたが、彼にとっては慣れっこらしい。普通に手を振り返していた。
駒中は面白がっていつもこのことをいじり倒しているのだが、彼らをカップリングさせている団体がいることに気づいているのかいないのか。
かわいそうな駒中と沢尻。南無。
「川瀬、あとで殺す」
OH MY GOD.




