30 新宿・2層
「ワウゥッ!ァオンッ!」
「おー!ナイスだハティ!明日から……いや、夕方からかな?2層だ!」
視界の先では、ハティがオークを倒し終えた所だった。ブラッドパイソンと同時エンカウントした2体を1人で倒せたんだから条件達成だ。
次からは2層。
それにしても、ハティの弱点はやはり素の身体能力の低さだな。
小型犬の身体能力が高くないのは当然だが、それを異常なレベル上昇速度でカバーしているのが現状。
今のハティのレベルは24。
24まで上げるには通常であれば、数ヶ月はかかる。
なぜこんなにもレベルが上がるのが早い?
単純にレベルアップの才能があるのか、それとも犬と人間という種族差なのか。
考えても仕方ないことかもしれないけど、いくつもの仮説が浮かんでは消えていく。
さて、お昼ご飯を買って1度ホテルに戻ろうか。
今回も良さげなスキルスクロールは落ちなかった。残念だが、こればかりは運ゲーだからしょうがない。
弁当ばかりだと楽しくないから、今日はレストランでハンバーグをテイクアウト。
見た目は弁当っぽくても中身が何かを知っているので、これはもはや弁当ではない。
「いただきまーす」
「まっす」
「あと3日か。そろそろ新しいスキルが欲しいなぁ。ハティはどんなのとる予定?」
「オレはなぁ……やっぱ、攻撃系能力入り前衛向けスキルやな。今のところは身体能力で押しとるだけやからな。【強筋】もレベル3やけど身体強化以外の能力はあらへんし。まあでも、武器と鎧アリなら身体強化系だけで揃えるゆうんもありかもな」
「俺は魔力を使って攻撃する系のスキルなら結構なんでもいいかなって思ってる。でも枠が余ってるからサポート系のも1つくらいあってもいいかもね」
サッとシャワーを浴びてベッドに転がりながら2層の情報をおさらいする。
大体の敵の情報を覚えたので、ホテルを出る。
「さぁ!2層……行こうか!」
まずは1対1でどの程度戦えるのか、どの敵にどんな攻撃が効きどんな攻撃が効かないのかを調べる。
光弾、光矢、雷槍、障壁と順に試し、次にハティが1人で。
最後に二人がかりの連携の確認をして、ひとまず準備完了。
2層のモンスターは、俺もハティも1人だと手こずる相手ばかり。
2層は1層よりも自然に近く、いくつかの空間が通路で繋がった形状の1層に対して、2層は視認できる高さに天井は無く空のようなものが広がり、層全体が一つの空間になっている。
迷宮というものは、階段を降りる高さより天井の方が遥かに高かったり低かったり、まるで層ごとが別の空間かと錯覚する様な作りになっている。
それでいて、超音波とかで外側から調べると高さも広さも同じ空間が真っ直ぐ下に続いているように見えるという。
この謎もいつか解き明かされるのか──個人的には空間魔法的な力だと思う──は分からないが、そんなこと今は関係ないし将来的にも関係ない。
グリズリーの腕を避け、ハティが頭の上から爪を振り下ろすが、体格差故か爪の長さが足りないのか、全く聞いていない。
頭を振るうグリズリーの動きにサッと頭から飛び降りるが、避けようのない空中で狙われることになってしまう。
「発光、障壁、雷槍」
発光と障壁は、無詠唱でもかなりの精度で発動できるようになってはいるが、ハティの俺の連携のレベルが低い為声に出して伝えている。
昔はハティが振り向いた瞬間に発光を撃ったりハティを守る為の障壁に頭をぶつけて目を回したりしていたんだから、少しずつだがなれてきてると思う。
「雷槍!」
ハティは前衛として攻撃が通らなくても敵を引き付けたり注意を逸らす役割を果たしている。
それだけでかなりやりやすくなっているからハティには感謝。
ただ最近ラーメンの味にハマったようで、ことある事にラーメンを要求してくる。
建康に悪いから毎日は無理だけど週一か週二くらいなら良いだろう。
ラーメンは手軽に作れるから炊事係の俺の苦労も減るし。
「おお、スクロール落ちたで!」
視界の先では、ハティがしっぽを振りながら輝く巻物の周りを走り回っていた。
急に熱が出て脳みそがじわじわする……
あと鼻水が黄色かったり血が混じってオレンジだったりとカラフルw
これわリアルインフルエンザの予感……!解毒ッ!解毒ッ!
なぜ効かん




