29 休暇
さて、ここで少し、今の日本について少しお話しよう。
少子高齢化による人口減少が進む日本を襲った大氾濫。
それにより人口は半減し、様々な政策により出生率は回復しつつあるが、今も尚日本人口は緩やかに減少している。
では、人口が半分になった日本はどうなるか。
都市は、街は、かつてのまでの形でいられるだろうか。
無理だ。
都市を維持する全ては、人口減少によって崩壊し、あるいはあまりに非効率的なものになってしまった。
大氾濫から3ヶ月。
日本政府は居住区と非居住区を制定し、『居住区』には国民を住まわせ、『非居住区』の大方のライフラインを停止。
『非居住区』で原子力発電所等の建設が行われなかった街は廃棄。
点在する居住区の中で最大のものがここ、近畿、中部、関東地方にまたがる1区である。
この地方が大規模に居住区と認定されたのは、国の中枢であり迷宮が数多く存在したかららしい。
ここからが本題。
同じ居住区でも、様々な差がある。
その1つが、遊園地や動物園、水族館などの娯楽施設。
今日本で1番迷宮が多く、活気的で、そして娯楽に富む街。
それが東京である。
遊園地なんかではアトラクションに乗る時ハティを置いていくことになるので除外。
という事で今、水族館に来ている。
「あのカニ美味しそうだね」
「ワウゥ」
「今ならあのジンベエザメ倒せそうだな」
「ワオウッ……」
「イワシの群れに雷槍撃ったら全滅するかな?」
「|ワンワンワン《必要以上に殺したあかん》!」
ここの水族館、面白いことに低レベルで危険性の低いものに限ってだが、水棲モンスターの飼育や展示を行っているらしい。
今見ているのが巨大ピラニアの群れ。
水から飛び出して噛み付いてくるモンスターらしい。
所々に沈んでいる歯や魚の切り身はドロップ品か。
飼育員もピラニアが怖くて回収できないに違いない。
どっかの水槽でスキルスクロール落ちてたりしないかな?
色々見て見たけど、スキルスクロールは落ちてなかった。
久しぶりに見るイルカショーも楽しんで、実は【人語】持ちなんじゃないかなんて考えながら屋台飯を食べ、昼過ぎに水族館を出た。
今日の予定は一応両親に会うこと。迷宮以外の東京を満喫することの優先度はあまり高くない。
『今から行く』
『いまから大気の子見るとこなんだが』
いつも通りの即レスだが、内容は有り得ない。
『今日行くって言ったよねバカなの?』
『違うんだ、覚えていなかった訳じゃないんだ。ただちょっと、忘れていただけなんだ』
『タヒね』
『タピってるなう』
『(゜Д゜)<氏ね』
『まあまあチケット3枚買ったからね』
『大気の子もう見たよどこの劇場だよ』
『大田区の線路の近く』
『東京の端っこ行っちゃったよ』
『今日はそっちの支部に用があったのよ』
『昨日言えや!』
『スマソ』
東京地下鉄は複雑すぎて分からないので、仕方なく位置情報を送って貰ってタクシーで向かった。
「久しぶりだな。ちょっと大きくなったか?」
「正月ぶりだね。とりあえず入ろっか。大気の子はね、最後『天気なんて狂ったままでいいんだ!』って言って下界に」
「ストぉぉぉップ!」
「そんでもって逮捕されて東京水没みたいな」
「あら、来てたの?早かったね」
「おー、母さんも久しぶり」
「迷宮はどう?私達は研究職だから現場はあんまり知らないからねぇ」
心配そうに眉をひそめて母さんが言う。
この2人もある程度レベル上げをしているので、もしかすると俺より強いかもしれない。
ハティはバックに封印して、チャックを少し開け中から見てもらった。
最後の方泣いててうるさかった。
その後ごちゃごちゃした研究室とよく分からないもの達を見せられ、夕方頃に明日も迷宮に行くからとホテルへ帰った。
久しぶりの家族の時間。
大したことはしなかったが、こういうのもいいなぁ。
何時もの誰もいない(ハティ以外)自由な家も良いけど。
明日はまた新宿の1層か。
新装備のおかげで俺1人ならオーク2体でも余裕、レベルが上がってきたハティも一体ならスムーズに倒せるようになった。
2層もきっと、そんなに遠くはないだろう。




