26 新宿
「東京行ってきます」
「いきなりだね、今日から?」
「明日も朝から潜りたいので。向こうで1泊して朝イチで迷宮に行こうかなと」
「まぁ、気をつけてね?」
「はーい」
昼前に家に帰り諸々の準備を終えたのが2時。
ホテルを探して電話で予約を入れたのが3時。
遅めのご飯を食べて新幹線の券を買い、家を出たのが4時。
新幹線は新神戸18時5分発だから遅くても9時には東京に着く。
どこかでご飯を買ってタクシーを捕まえて9時半にはチェックインするというのが俺のパーフェクトプラン。
駅まで降りるついでにと協会に寄って挨拶をする。
途中学校の近くを通った時は罪悪感に襲われたが、無事に新神戸に到着。
新幹線では、ハティ入のペットキャリーバックをら抱き抱えてずっと寝ていた。
「ふぁ〜、やっと着いた?」
「ワンッ!」
ハティはずっと言いつけ通りに普通の犬のフリをしてくれている。
早く喋ってもいい場所まで行ってあげたい。
けど関西弁を封印したハティもそれはそれで可愛いのでこのままでもいいかもしれない。
そんなことを考えていると、バックから身を乗り出したハティにパンチされた。顔に出てたかな?
2人分の弁当を買ってタクシーに乗る。
適当に乗ったが運悪く大型車だった様で若干損した気分。
普通の中型車、なんなら小型車でよかったのに。
スマホをかざして運賃を払ってタクシーを降りると、ホテルの人が丁寧に出迎えてくれる。
子供相手にご苦労さまです。
1日10万程度は稼げるようになっているので思い切って1泊2万以上するホテルを選んでしまった。
ホテルの高級料理を食べたいのは山々だが、人前でハティに人間用料理を食べさせるわけにもいかず、俺だけ食べるというのも可哀想だからご飯は全て外で買って部屋で食べることにした。
早く人語解放出来るくらいに強くなりたいなぁ……
『喋る動物』絡みの犯罪はちょっと調べるだけでも沢山出てくる。
オークションに出品されるとか飼い主が殺されるとか。
喋る動物は希少なうえ"本人"からの証言も期待できるので犯人はかなりあっさりと捕まる。
それでも欲しがる人はいる。
大規模な犯罪組織が絡んでたりもするらしい……掲示板の意見だけど。
そういう事だから、今はまだ表立って喋らせてやることも美味しい料理を食べさせてやることも出来ないんだ。ごめんね。
「ハティ、もういいよ」
「もう喋ってもええ?」
「うん。流石に監視カメラやら盗聴器やらが仕掛けられてるってことは無いだろうし」
「ふわぁ〜、退屈やったでまったく。ご飯は?」
「食べよっか」
明日の朝の分までという事で、弁当が4個。
暖かいのが今夜の分でひやしても美味しいのが明日の朝。
夜にお腹がすいた時用のカップ麺が4個。
食べ終わってもまだ10時だったので明日潜る迷宮、『新宿の迷宮』の情報を調べる。
"地名"の〇〇迷宮というようなその迷宮の特徴を捉えた通り名は無く、それはつまり特徴が無い"一般的な"迷宮ということになる。
しかしモンスターは強めで階層も深い為、難易度が高い迷宮として知られており、首都圏にあるため探索者の質は高い。
もちろん周辺の店には質の高い武器、防具、アイテムが揃っている。
新宿迷宮に出現する敵とそれらの主な攻撃、攻略法等々。
調べたものをまとめおえたら寝るまでは遊ぶ時間なのでゲームをしながらiPadでYoutuveを流す。
寝落ちする前にお風呂に入って、寝たのが多分12時前くらい。
「起きろ〜起きろ〜」
「はいはいおはよう、ベッドを傾けないの」
「これが一番すぐ起きるからな」
「じゃあご飯食べたら行こっか。今日こそ魔法系スキル落ちたらいいけど」
「今のままやとレベル低いだけやもんな。スキルの多さでレベルに対抗するんやからはよ取らな」
「分かってるんだけどねぇ……よし、じゃあ今回の旅行の目標は強そうな魔法系スキル最低2つ取るまで帰れませんで行こう」
「学校は?」
「無い」
「いや、あるやろ」
「なかなか熱が下がらなかったことにすれば問題ナッシン」
解熱後2日だからね。仕方ないよね。
「よし、食べ終わったし、行こっか」
装備更新は、お昼かな?
協会のコインロッカーに荷物を預けて、新宿迷宮に入ったのだった。




