25 インフルエンザ・終
公園のベンチに座って……
「治癒」
ふむ。心なしか怠さが和らいだような?
多分思いすごしでは無いと思う。が、効果が微妙過ぎてよくわからない。
「よし、じゃあ次は回復を試すか………あ、その前に」
ネット上の記事は信憑性に欠けるものもあるけど、"病気 光魔術 効果"とかで調べれば信用出来そうな名前の投稿者が見つかるだろう。
ユニークスキルならともかく、【光魔術】で出てこないことは無いだろう。
取り敢えず、検索しよう。
「えーっと……?国立、魔法治療研究センター?めちゃくちゃ信用できそうな名前出たよ……」
"研究センター"の専門家っぽさに"国立"が加わるともう信憑性しかないと言っても過言ではない。
それによると、怪我を治す、つまり肉体を修復する系の魔法はウイルス性だったり細菌性の病気にあまり効果がないものの、体調だけは回復する。
対して解毒や状態異常回復系の魔法は種類によらずウイルスや細菌を駆除する効果があるらしい。
人体に有害な物質をより有害でないものに分解する"解毒"の原義であるが状態異常回復系魔法は人体に有害な微生物という"物質"を分解し、有害でない物質に………………ただし、健康な人体に存在する細菌を死滅させることは無く…………平素は無害な細菌が, 身体の不調に伴って有害となる様な…………しかしいかなる状態においても、その症状に対し十分強力な状態異常回復魔法及び状態異常回復薬は、人体を平素の建康な状態に戻すという…………『状態異常』についての明確な定義…………に従い作用するこの力は…………すなわち魔法の行使によって人体から失われる『魔力』という謎に充ちたエネルギーによって……
なるほど、全て理解した。
使うなら解毒ということか。
「解毒、解毒、解毒」
今10回目くらいだったか。
徐々に体調が良くなっている。
寒気や怠さも消え、頭痛も引き、筋肉痛は治癒のおかげかもしれないけど治った。
熱もないし体も軽い。
念の為にもう1回。
「解毒…………よっし、帰ろう!」
もう薬局に用はない。
先生には申し訳ないが、小児科ももうお役御免かもしれない。
慣れ親しんだ道を歩きながら、とりあえず親に連絡。
あの二人はどこからか俺の学校での事を聞きつけるから何かするなら事前に、何が起こったら直ぐに連絡する必要がある。
『インフルなったけど魔術で治したw』
『小児科行った?』
『罹患証明書書いてもらったから学校休む』
『ええやん』
『7連休』
『この前言ってた学園の新4年制の情報出てたよ』
『マジで?』
『でもあそこって全寮制だろ?家どうすんの?』
『それなんで親が息子に聞くの?』
『じゃあ売るか』
『そうね』
『あっさり過ぎ草。思い出的なナニカは?』
『フッ、本人が目の前に居るのに、他の何が見えるって言うんだい?』
『息子はいないよ』
『それより今彼女作ったらすぐ別れることになるからやめといた方がいいぞ』
『大学入ったら作りなさい』
『今は2人3人と結婚する人も居るし浮気しても浮気じゃないもんな。いいな』
『浮気したいの?殺すわよ』
『落ちますすいませんリアルで話しててください』
いつも通り話が逸れていくので電源を落とす。次見る時は通知が100くらいになっているだろう。
次は家に電話。
『はいもしもし?どちらさん?』
「おーハティ、俺だ俺。インフル治ったから明日から旅行行こうか」
『もう治ったんか?よっぽど優秀な医者やねんな』
「いや、光魔術でパパっと」
『ほーん。そいで旅行いうとったけどどこ行くん?』
「さあ?とりあえず迷宮に行きたいよね」
『ただの武者修行やん』
電話ごしに呆れたようなハティの声。
「迷宮が近くてそこそこサービスが良くてWi-FiがとんでてペットOKなホテルを探さないとね」
『どこの迷宮行くんや』
ふむ。
そろそろ装備を更新したいところだし、ハティの装備を考えればまず間違いなくオーダーメイドになる。
いい店は難しい迷宮の近くにこそある。
だから、どうせ行くなら難しい迷宮。
今の実力では身の丈に合わない場所だが、難しい迷宮とそれに挑むトップレベルの探索者がどんなものか、1度見ておくのも良いだろう。
兵庫には初心者迷宮しかないから鍛冶屋、防具屋、アイテム屋など探索者相手の商売はあまり盛んでは無い。
迷宮があるだけまだましなんだけど、やっぱり初心者御用達感が否めない。
まあ、俺達もまだ初心者の域を出ないけど……
それでもやっぱり、トップレベルの空気を肌で感じたい。
今なら割引がきくから高い装備にも手が出しやすいし。
「決めたぞ……。東京だ」
『りょーかいや』
久しぶりに、両親とも会いたいからな。
東京での戦いや未だ見ぬ新装備に思いを馳せて、思わず笑みがこぼれ落ちた。
寝ながら書いてたら恐ろしく眠い。




