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大賢者@レベル1道  作者: 受験生13
24/36

24 インフルエンザ

それからは時間があれば迷宮に潜り、たまに休んで家でゴロゴロする毎日だった。

ハティのレベルは驚くほどのスピードで上がり、それに伴ってどんどん強くなっていった。



月曜日。



「おーい!起きろ!」

「あと5分……」

「起きへんならしゃあないな。【強筋】の出番やで」

「うぉ、何!?」



突然の浮遊感に驚いて飛び起きると、ハティがベッドを傾けていた。

こんな小さな犬が人が乗ったままのベッドを、だ。改めて凄いと思う。



「どしたん?」

「散歩行こーや、散歩。今日は4層行ける気がすんねんな」

「まだ朝6時ですけど……あと今は物凄くしんどいから無理。それより体温計持ってきて」

「なんや、熱かいな」



難儀なことやなー、とボヤきながら体温計のケースを咥えてやってきたハティ。

驚くべき事に、咥えていたはずなのに唾液が全く付着していない。


体温を測ると、39.1度。

体中の筋肉と関節がじわじわ痛むし頭痛もする。



「インフルエンザかな。の喜べハティ、今週は学校休めるかもしれないぞ」

「いや、カズがインフルで苦しんどんのに休みになるからって喜んどったら鬼畜やろ」

「いいや、喜べハティ。これを見るんだ……インフルエンザは第2種の学校感染症に定められている。出席停止期間は発症後5日、解熱後2日の両方を満たすまで。しかもインフルなら公欠扱いになるんだぞ?発症後5日なら今週は無理だ。遅くても明後日には治るだろうから、4連休だな」

「土曜は塾有るんやろ?」

「休む」

「ええんか?」

「まあインフルなら仕方ないよね」



ベッドから起き上がり、重い体を引きずって本棚まで歩く。

学校の書類はここにまとめてあるからインフルエンザ罹患証明書もあるはず。


インフルエンザが治るまでは迷宮行けないなぁ……



「よし、取り敢えず病院行ってくるから留守番よろしく」

「一人で行けんのか?朝メシは?」

「徒歩10分くらいだから大丈夫。今は食欲無いから食べない」

「ほーん、そいじゃーな」

「ん」



発症後5日、解熱後2日。10年前と変わらない数字だ。



しかし人類は10年前のそれでは無い。

レベルの上昇とともに高まる身体能力。


魔力の存在、筋力や耐久力の上昇のメカニズムについては全く研究が進んでいないが、高レベル所持者の身体を調べる研究は絶えず行われてきた。


その結果。

レベル上昇や身体能力上昇に伴って、年齢と共に衰えていく免疫力、抵抗力や骨密度等の改善、上昇など、様々な驚くべき──10年前の常識からすればだが──データが出た。


つまり、インフルエンザ5日休みの法則が未だに続いているのは奇跡と言っていい。

薬品投与量の決定法についても従来のものからレベルや持ちスキルについても考慮したものに移り変わりつつある今日この頃、若年層はインフルエンザ休み短縮の脅威や学級/学年閉鎖の頻度低下に怯え暮らしている。


頻繁に移り変わる個々人のレベルを5000万人分把握する、というのも実際出来ない世の中ではないだろう。

が、5000万の常に更新され続けるパーソナルデータを把握し全ての医療機関と連携して各人に最適な薬量を計算する、というのはやはり膨大な手間がかかる。



最終的にどうなるかは全く予想できないが、全国民にレベル上げを強制したりはしないで欲しい。

全国民に下に見られる気がするから。




「インフルエンザだねー。じゃあ証明書書いちゃうから。因みに和貴くんは今レベル幾つ?」

「1ですね」

「へぇー、迷宮とかはあんまり興味ないんだ?」

「ま、まぁそうですね、そんな感じですね」

「まぁアレを経験したらねぇ……あの時と同じバケモノがいる所って考えると怖いもんねぇ」

「は、はぃ……」

「先生も昔レベル上げしようと思ったんだけどね、どうしも足がすくんで……ゴブリンに見つかって命からがら、失禁寸前で慌てて逃げたよww」



迷宮のモンスターに怯えている(と思っている)俺を元気づけようとしているのか、それとも同類を見つけたら自虐合戦になるタイプなのか、17年間かかりつけだった小児科医のあらたな一面を知ってしまった。

申し訳ない。


そういえばもう17だけど、小児科って何時まで行けるんだろうか。



「でも、レベル上げって健康にもいいみたいですね」

「そうなんだよねぇー。この前の学会もね、もう迷宮産食料の人体への影響とかレベル上げによる医学的な変化とか治療用魔法と医学の相違点とそれぞれの限界、魔法治療と医学の併用とかばっかりでね。これからの医学はそういう事も入ってくるんだーって改めて思ったよ」

「先生ー?お待ちの方が大勢いるのでお話はそろそろ……和貴くんもね」

「はーい。すいませんでした」

「はい、お大事に」

「有難う御座いました〜」



処方箋を受け取り診察料を払って、クリニックを出る。



「なるほど……"治療用魔法"か」



それ、俺も持ってます。

薬局行く前にちょっと、【光魔法】を試していこう。


もし上手く行けば、4連休が6連休になるかもしれない。





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