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大賢者@レベル1道  作者: 受験生13
22/36

22 奥の部屋

やったるでー、と意気込んで走っていったハティ。


てっ、てっ、ドンッ!


【強筋】が発動したのだろう。

外見に変化は無いが、2歩で走っていた距離を1歩で跳んでいる。

当然、速さもかなり速くなっている。


目で追えないほどではなかったが、ゴブリンにとってはそうでなかったようだ。

棍棒を振り上げて臨戦態勢を取っていたが、首を傾げてキョロキョロと目を動かす。


確かにいきなり加速したら一瞬見失ったりすることはあるけど……

見失いすぎじゃない?さすがゴブリン、鈍いな。

相手は犬なんだから下を探せ。上を見るな。天井を見るな。

あと俺も見るな。


ハティは諦めたのか、真っ直ぐ俺を見て棍棒を再度振り上げる。

そのまま走ってこようとしたようだが、もうハティが足元にいますよー。



「どこ向いとんねんワレぇ!」

「ゴブ!?」

「おお!?」



ジャンプして体当たり。

体長20数cmの可愛らしい犬が、俺から見れば小さいとはいえ1mを超える身体をもつゴブリンを吹き飛ばす。

すごい光景だ。


ゴブリンは1mほどとばされ壁に激突した。

さすがにワンパンはできなかったか。


犬パンチでトドメをさして、ドロップの魔石を咥えて持ってきた。



「すごいぞハテ、おぐふ!?」

「あっ、すまん!切り忘れとったわ!」



抱き抱えて撫でたかっただけなのに!

【強筋】状態のハティがお腹に飛び込んできて、というか突き刺さって内臓に痺れるような衝撃が浸透した。


すまん!大丈夫か!?今助けを呼んでくるさかい!と走り出そうとしたハティを止めて、何度か深呼吸をする。



「すー、はー、治癒(ヒール)。ハティ……俺はレベル1のモヤシ魔術師なんだよ?」

「はい」

「ガラス細工のように丁寧に扱って?」

「はい」

「あと戦闘中にやむを得ず突き飛ばしたりすることがあったとしてもできる限りソフトにお願いしたい」

「はい」

「特にお腹はね、骨で守られてないんだよ?」

「はい」



はいしか言わなくなった。

可哀想なので怒るのをやめて、少し遅れたが迷宮を出る事にした。



「次から気をつけてね。じゃあ帰ろうか」

「はい」

「ほらおいで、ていうか元気だしな。あ、人前ではなるべく喋らないようにしてね?喋る動物って希少価値が高くて狙われることも多いらしいから。少なくとも俺らが自衛できる力をつけるまでは、ね」

「ワウ……了解や」

「じゃ、戻ろっか。食材と犬用グッズだけ買って帰ろう」

「はーい」

「そういえば、ハティは人間の食べ物を食べれる?」



食べる事が可能か?、ではなく好んで食べるか?という事だ。

昨日【会話】を手に入れてからほぼ24時間。その間職員さんにお世話されていたなら何も食べていないはずがない。



「勿論や。昨日は"らーめん"?いうの食べたで。食べにくかったけど、こってりして美味かったで」

「アイツ、犬に何食べさせてんだ……あんまり健康に良くなくて太っちゃう系食べ物の代名詞じゃねえか」

「まあまあ、オレが美味いもん食べたい言うたのが悪いんやて」

「いやだからって……まぁ、たまに食べる分には美味しいしいいか」



ラーメンOKならなんでもOKだろ。

問題は量だけど、食べるものが同じなんだから問題ないな。


先程は体当たり攻撃によって抱っこ出来なかったから、抱っこして帰る事にする。



「お?なんや?そんなにオレの毛並みが気に入ったんか?」

「いや。首輪して無い犬が歩いてたら不自然だからね。誤魔化すためにやってるだけだからね」



モフモフは正義ということは否定しない。

でもそう言うと調子に乗りそうだから言わない。


協会の建物に入ると八坂さんとラーメンの職員さんがいたので、レベルアップとスキルを手に入れたことだけ言っておく。



「あ、そうだ、換金しなきゃ」

「換金かい?いま列長いからやったげるよ。見せて」

「いいんですか?ありがとうございます」

「ワンッ!」

「いいよいいよ。えーと、だいたい5万円ってとね」



早速職員さんに頼んだことを後悔し始めた時、後ろから女性の声が聞こえてきた。



「あれ、支部長と八坂さん……と、あら。一昨日の子じゃない」

「あ、一昨日のお姉さん」

「涼子、もう上がりかい?」

「ええ支部長、ソレ、査定私がやりますよ」

「私だってそのくらいできるぞ」

「そのくらいできる人はだいたいなんて言いません」



正論だった。

支部長も……支部長!?この人?まじでか。

あまりの正論にぐうの音も出ない支部長は、震える手で俺のリュックを手渡した。



「あれ?もう3層に行かれたんですか?」

「ああ。昨日のキラータイガーもこいつだぜ」

「ああ、なるほど……凄いですね。とりあえず、ここはなにもないので査定しても送金できません。場所を移しましょう」

「あ、はい」



奥の部屋に連れ込まれて……


バタン!

ガチャ。



「ちょ、なぜ鍵閉めたんですか?」

「ふふ、ちょっとお話しましょうか」



受付嬢さんはそんなことを言ったのだった……


助けを求めて2人を見るも、八坂さんはニヤニヤ、ラーメン支部長はウンウンうなづいていて、訳が分からない。

一体なんだって言うんだ……?



「……………………………………話、というのは?」

「何、君にとっても悪い話じゃないさ」




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