099_失地奪還戦
ザッテモールについてご感想を多くいただいています。
ネタバレ感想は止めてくれーーー( ;∀;)
すぐに分かるストーリーが……作者に想像力がないと言うのか!?
うぅ……なにも反論できない。 _| ̄|○
宴会が終わり、誰もが寝静まった真夜中のゲッテモールス城の一室で、ロウソクの炎を頼りに顔を寄せ合う者たちがいた。
「奴らは寝たか?」
「ぐっすり寝ています。お屋形様」
ペティグリュウ・ザッテモールと家令である。
このペティグリュウ・ザッテモールは、今さら王国に帰順しても帝国へ内通していた過去が消えるわけではないと考えた。もし、自分が帝国に内通していたことを責められたら、すぐに帝国に寝返ったことを責められたらと思うと夜もおちおち寝ていられないのである。
実際のところ、王国内でもペティグリュウ・ザッテモールのことは問題視されていて、最低でも降爵と移封という声が多い。あくまでも最低でもである。
そういった声が出るのは当然なので、ペティグリュウ・ザッテモールは帝国南部方面軍総司令官のサンダー・カルコスの提案に乗ることにしたのだ。
「兵らにもたっぷりと酒を飲ませたな?」
「もちろんでございます。起きているものは1人もおりません」
毒を見分ける魔術があるこの世界では、毒殺はなかなか難しい。だから酒をたらふく飲ませて寝込むのを待っていた。
「最優先はアレクサンダー・デーゼマンの首だ。デーゼマンの首があれば、ワシは帝国で伯爵の地位を得られる!」
王国軍や貴族諸侯が集まった席で酒をたっぷりと飲ませ、集まった者たちが寝静まった頃に殺すという単純な作戦だが、単純ゆえに警戒心も緩むというものだ。
ペティグリュウ・ザッテモールは気づかれないように兵士をアレクの寝所に向かわせた。
兵士たちには音が鳴らないように金属鎧は脱がせ革鎧を着させている。
念には念を入れ、細心の注意を払ってペティグリュウ・ザッテモールは今回の作戦を決行した。
兵士を率いるのはザッテモール家に代々仕える騎士で、ペティグリュウ・ザッテモールへの忠誠心に関しては疑う余地がない人物だ。
「ここです。ここがアレクサンダー・デーゼマンの寝所です」
兵士が声を殺して、アレクの寝所の前に立つ。
「音が鳴らぬように蝶番には油をさしてあるな?」
「もちろんです」
酒をたらふく飲ませて寝込んでいるアレクたちは簡単には起きないだろう。
だが、ペティグリュウ・ザッテモールと騎士たちは音が鳴らないように、細心の注意を払っている。
今回の暗殺にかける意気込みがそれだけで分かるというものだ。
扉は音もなくスムーズに開いた。
兵士の一人が寝所の中の様子を窺うためにわずかに開いた扉の隙間へ顔を入れる。
寝所の中は当然だが静かである。誰も起きている者はいないのを確認した兵士は扉を頭を引っ込め騎士に頷く。
「いくぞ」
騎士は剣を抜き短く静かに兵士に命じると、兵士たちも剣を抜く。
騎士は足音をたてないように慎重にベッドへ向かい、毛布のふくらみを見てニヤリと笑みをこぼす。
剣をゆっくりと構え、一気に刺す。だが、騎士は剣から伝わってくる手ごたえに違和感を感じ、まさかと思い毛布をガバッとめくる。
「なんだと!?」
思わず大声が出るが、そこにはアレクサンダー・デーゼマンはおらず、毛布を丸めたものがおいてあったのだ。
「デーゼマンがいない! 探せ、探すのだ!」
騎士が兵士に命じるが、そこにはこれまで音をたてないように慎重だった騎士の姿はない。
騎士たちが廊下に出ると、暗闇の中でも光り輝く美しい金髪の可愛らしい少女の姿があった。
「何者だっ!?」
焦っていた騎士は、誰かに聞かれることをまったく考慮していない大声を出して誰何する。
「面倒なことして……私は怒っているの」
その瞬間、少女から眩い青い光が一瞬だけ放たれた。
騎士たちは光の正体が分からなかったが、少女を拘束しようと足を進めようとした瞬間、体中から力が抜け床に倒れ込んだ。
「あがぐが……」
意識はあるが、体の自由が利かない。思ったように声がでない。
いったいこれはどういうことだと、騎士たちは口から涎を垂らしながら起き上がろうとする。だが、一向に体に力が入らない。
「睡眠を邪魔するのは、許さない」
少女はそう吐き捨てるように言うと、暗闇の中に消えていった。
騎士たちは、「え? 放置?」と思ったが、少女が消えていった暗闇の中から少女とは違う別の人物が現れた。
その人物は暗闇の中でも分かる燃えるような赤毛の人物で、やや足を引きずるように歩いている。
「あべぐだんだでじぇばん(アレクサンダー・デーゼマン)……」
騎士はまったく理解できない言葉を発する。
「だじぇ(なぜ)」
「何を言っているのか分かりませんが、拘束させてもらいます」
アレクの後方から現れたカムラたちが騎士たちに縄を打っていく。
「アレクサンダー様、全員に縄を打ちました」
カムラがアレクに報告すると、アレクは頷いて後方を見た。
そこには椅子に座って船をこいでいる先ほどの金髪の少女の姿があった。
「しかし、魔法陣が発生しない魔術なんて、やっぱりマリアはすごいや」
「あの魔術はなんだったのでしょうか? まるで雷のような光が彼らに刺さったように見えましたが……?」
アレクにはただ光ったように見えただけだったが、ラクリスにはどのような光だったかが見えたようだ。
そんなラクリスも大概だと思いながら、アレクは首を振る。
「分からない。でも、マリアだから何をしても驚かないよ」
「たしかにマリア様であれば、私のような者には理解できないことを起こしても納得できます」
アレクとラクリスは椅子に座って船をこいでいるマリアを見つめてほほ笑む。
「今回のこともマリアが教えてくれなければ、僕は今頃殺されていたと思う。マリアには本当に助けられてばかりだ」
今回のアレク暗殺の企みを看破したのは、マリアであった。戦場はアレクの独擅場であるため、戦場でアレクを倒すのは難しいと考えるのは至極当然のことであった。
ならば、アレクを戦場に出さなければいいのであって、その場合考えられるのが暗殺である。そして、暗殺をするのであれば、帝国へ味方しておきながら寝返ってくる者が最も怪しいとマリアは考えたのだ。
そしてこのゲッテモールス城に入ってからは、ペティグリュウ・ザッテモールが家臣と悪だくみしている声をラクリスの耳が聞き、アレク暗殺を確信することになる。
今もラクリスは耳をピコピコ動かしてゲッテモールス城内の音を集めている。
「大奥様のほうも終わったようです」
このゲッテモールス城に入る前に、暗殺の危険性をアレクに語って聞かせたマリアは、リーリアとフリオたちを一般の兵士に紛れ込ませておいた。
そして、ペティグリュウ・ザッテモールが動いたら、リーリアたちがこのゲッテモールス城を掌握する手はずになっていたのだ。
「ペティグリュウ・ザッテモールはどうなったかな?」
「大奥様によってかなり痛めつけられたようですが、生きています」
「了解。僕は母さんと合流するから、オウエン特務大尉とソムンは彼らを頼むね」
「承知しました」
オウエンが代表して了承の意を伝える。
アレクはラクリスにマリアを頼むと、ラクリスは小柄なマリアを抱きかかえる。
面白かったら評価してやってください。
☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★
誤字脱字は誤字報告してくださると、助かります。




